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これからも本をつくって生きていく。社会人15年目の所信表明

すぐそこに春の気配を感じる時期になると、ひんやりと冷たいパンツスーツを着て出勤していた新入社員の頃を思い出します。数えてみたら、もうすぐあれから15年。丸15年も社会人をやっているのか……と、月日の速さに驚きます。

今は編集者を名乗っていますが、新卒で入ったのはPR会社。そこをやめてアルバイトで食い繋いだり、突然異業種に転職してみたり、フリーランスで仕事をしたり、また就職してみたり。職種も働き方もなかなか軸足が定まらず、ふらふらした時期が長かったなあと思います。

「編集者」でやっていこうと決めたのは、30歳を過ぎてから。Webメディアの運営会社で基礎を叩き込まれたのち、フリーランスの時期を経て、2025年の1月からhayaoki books(運営元:株式会社hayaoki)という出版レーベルに事業責任者として入社しました。

現在hayaoki booksの社員は私ひとりで、RPGでいえば仲間も武器もゼロの初期設定。

飽きやすく腹をくくるのが苦手な私が覚悟を決めるためにも、この先一緒にレーベルを育てていける人に出会うためにも、これまでを振り返りつつちゃんと所信表明をしておこうと思い、今これを書いています。

私の編集者のキャリアはWebメディアでスタートしたので、長らくWeb記事の企画・編集の仕事がメインでした。

本をつくってみたい気持ちはずっとあったけれど、出版社で働いたこともないためきっかけをつかめずに、できることといえば「書籍もやってみたいなあ」と身近な人に言うくらい。

そんな中、尊敬する友人でもあり、Webメディアでよく執筆をお願いしていた仕事仲間でもあるエッセイストの中前結花さんから「hayaoki booksという出版レーベルからエッセイ集を出すことになったから、編集をお願いできないか」と連絡をもらいました。2022年の春のことです。

本づくりに携われることよりも、「中前さんからの依頼である」ということが、いっそう私を嬉しくさせました。というのも、そもそも「編集の仕事に就こう」と思ったきっかけが彼女だったからです。

中前さんと出会ったのは、そこから遡ること4年前。なかなか進路を決めきれず「書く仕事もいいな」と考えて参加した、とある文章塾でした。同い年の彼女が書くものを初めて読んだときの衝撃は、今でもよく覚えています。構成や言葉づかい、どれをとっても「才能」のかたまりのようであまりにもまばゆく、私はすっかり魅了されてしまったのです。

自分が何かを書くよりも、こんな素敵な文章を書く人のサポートができるほうが、ずっとずっとおもしろいんじゃないか。そう感じたことが、編集者の道を選ぶ決定打になりました。


そんなわけで、二つ返事で中前さんのデビュー作に伴走することになったのですが、校正記号(赤字)の入れ方も知らない私と、初めて本を書く著者と。もちろんスムーズには進まず、「こんなときはどうするんだろう?」と二人揃って悩むことばかりでした。

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迷走に迷走を重ねたタイトル決めの記録

立ち上がったばかりのhayaoki booksには専任の担当者はおらず、本づくりの基本的なことは教わったものの、あとは社長から「まあ、やってみればできるよ」で一任されるストロングスタイル。素人にそこまで任せてもらえることの楽しさと恐ろしさを存分に味わいました。

タイトルはぎりぎりまで決まらず、装画も直前で差し替えに。デザイナーさん、印刷会社さん、イラストレーターさん、いろんな人に全力で頼りながら、約10ヶ月をかけて本が完成しました。

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中前結花さんのデビューエッセイ集『好きよ、トウモロコシ。』

売り方もわからないので、見よう見まねで書店用資料をつくったり、他の出版社さんに営業の仕方を聞きに行ったり、書店さんを訪ね「置いてくれませんか」と直談判したり、トークイベントを企画したり、毎日毎日SNSでタイトルをエゴサしてリポストしたり……。

地道な活動が実を結び、発売から一年を経て念願の重版が決まったときの嬉しさは格別でした。

もちろん反省点も数えきれないほどありますが、何もかも手探りだったからこそ、長い時間著者と膝を突き合わせて一冊の本をつくることの充実感は忘れがたいものになりました。

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Instagramでもたくさんの方が紹介してくださっています。うれしい

hayaoki booksとの関わりはそんなふうに始まり、2023年には『好きよ、トウモロコシ。』のほかに2冊を刊行。2024年には「ぜひこの人に書いてほしい」と思う著者の企画を立て、さらに2冊のエッセイ集を世に出すことができました。

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2024年夏に刊行した、ササキアイさんの『花火と残響』
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2024年秋に刊行した、斉藤ナミさんの『褒めてくれてもいいんですよ?』

取り扱い書店は徐々に広がり、読者の方からうれしい感想をいただく機会も増えてきました。

また、本を出すことによって著者の人生が変わっていくさまも間近で見ることになりました。同時に、「本をつくる」ことに対する私自身のスタンスも徐々に変化していきました。

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青山ブックセンターで『褒めてくれてもいいんですよ?』の刊行イベントを開催。とっても盛り上がりました!

私はこれまで、どちらかというと「小さいこと」に美学を感じるたちでした。小さくものづくりをして、手の届く範囲に手渡しで広げていくような仕事の仕方を美しいと思い、身の丈に合う経済圏をいかに確立するかを考えて生きてきたふしがあります。

もちろんそれもひとつの在り方ですが、今はそれを目指す時期ではないのだとはっきり自覚したのは、ある著者の方から「私はこれからも頑張って書き続けていきたい」という覚悟の言葉を聞いたときです。

いま目指したいのは、「書き続けたい」と願う人に書き続ける環境を用意することで、そのためには事業として持続性を持たせなければいけない。それを自分ごととして捉えたときに初めて、hayaoki booksをちゃんと大きくしたいと思いました。ストレートに言えば「もっとたくさん本をつくり、しっかり売る」に本腰を入れて挑戦したい、ということです。

「売れればなんでもいい」ではないけれど、売れなければどうにもならない。書いてみて「なにを今さら」と自分でも驚いてしまいますが、つまりはようやくそれが腑に落ちたのです。


「書籍編集の仕事は、つくりたい本がなくなってからが本番」という言葉を聞いたことがあります。それなら私は、まだスタートラインにすら立っていないのだと思います。本をめぐる状況のきびしさはいろんな方が語っている通りで、その中で新参者に何ができるのかもまだわかりません。知識も経験も、足りないことばかりです。

それでも来年度はつくる本もぐっと増える予定で、協力してくれる人の輪も広がりつつあり、レーベルとしても変化の大きい一年になりそうです。

向かう先の荒波の気配にどきどきしつつ、全体重を乗せて頑張った先にどんな景色が見えるのか、わくわくしている今日この頃なのです。


▼エッセイ以外のジャンルにも挑戦したいし、たくさんの書店さんに足を運びたいし、SNSでの発信も頑張りたいけれど手も足も足りない!ので、一緒にお仕事する方を募集中です。ぜひ気軽にお話しましょう☕️


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Chihiro Bekkuya あしたもいい日になりますように!

コメント

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ginnao
ginnao

こちらでは、はじめましてですが、文学フリマ広島で『「好きよ、トウモロコシ。」栞が欲しくて、販売元にネット注文しました!』と話しかけさせてもらった者です。「ありがとうございます!私が編集者です」と言っていただけたかと思います。「花火と残響」は、燃え殻さんのラジオで知って、昨年購入済でした。note、フォローさせていただきます。

Chihiro Bekkuya
Chihiro Bekkuya

ginnaoさん
わーー、広島ではお立ち寄りくださりありがとうございます!!🌽『花火と残響』も購入してくださったとのこと、とてもうれしいです。またどこかでお会いできますように😌

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