【独占】ノーベル賞受賞者・大隅氏が嘆く、地方大学で「禁句」となった基礎科学の惨状
「役に立つなんて下世話なことは考えない」
ビジネスでは、いかに社会に貢献するか、利益を出すかが最優先事項だ。人々の役に立つ製品やサービスを市場に提供し、それによって利益を生み出すことができれば、ビジネスとしては大成功と言える。しかしこの枠組みそのものが、ビジネスパーソンの思考や発想を縛ってしまうのも事実だろう。 一方、大隅氏は「人間は役に立つためだけに生きているわけではありません」と述べる。 「役に立つという基準しかないのは奇妙なことです。音楽や芸術が何かの役に立つわけではありません。誰でも、月の裏側が見えてうれしかったり、深海の魚の生態が分かって『こんな世界があるのだ』と感動したりするでしょう。分からなかったことが分かるようになること自体が楽しい、うれしいという経験は誰にでもあるはずです」(大隅氏) さらに、大隅氏は次のように続ける。 「恐ろしいのは、若い人が『役に立つ』ことを前提に考えてしまうことです。それが当たり前の環境で育つと、そうなってしまう。我々の時代は『役に立つなんて下世話なことは考えない』と主張できました。ちなみに、大隅財団の助成申請書には、役に立つことを書く欄は用意されていません」(大隅氏) 繰り返しになるが、日本の基礎科学を取り巻く環境は厳しい。上では論じていないが、日本の国際競争における課題もある。東大の基金残高は120億円(政府の大学基金支援前)、ハーバードやスタンフォードは5兆円、7兆円を超える。これらは寄付によって支えられている。基礎科学の研究は大学の役割だが、自由に使える資金にこれだけの差があると、努力や信念だけで対応できるはずがない。米国の寄付総額は日本の数十倍である。日本にも基礎科学を寄付で支える文化が必要だ。 大隅財団の取り組みだけでは、この状況を好転させるにはまったく足りない。だからこそ、こうした現状を1人でも多くの個人、1社でも多くの企業に知ってもらいたい。また同財団では個人・法人を問わずに寄付を募っており、そうした金銭的な支援も必要だろう。 ぜひアカデミアと企業の新しい関係性や基礎科学の支援について、真剣に考えていただければと思う。 大隅財団寄付ページ:https://www.ofsf.or.jp/SBC/2310.html
協力:公益財団法人 大隅基礎科学創成財団