【独占】ノーベル賞受賞者・大隅氏が嘆く、地方大学で「禁句」となった基礎科学の惨状
「このままでは日本人からノーベル賞受賞者は出なくなる」。2016年10月にノーベル生理学・医学賞を受賞した、東京科学大学 栄誉教授の大隅 良典氏はそう語った。この取材は、坂口 志文氏のノーベル生理学・医学賞受賞の前だが、以下に語られた状況は何も変わっていない。日本の基礎科学の危機的状況は、想像以上に深刻である。大隅氏は、国からはすぐに役立つ研究が求められ、地方大学では「基礎科学」はもはや禁句である状況を危惧する。そんな惨状を打破しようと設立したのが、大隅基礎科学創成財団だ。財団設立から約8年が経過し、御年80歳を迎えた大隅氏に、これまでの財団の取り組みと基礎科学の現状を聞いた。 【記事全文はこちら】
日本人からノーベル賞受賞者は出なくなる
大隅 良典氏は、細胞が不要なたんぱく質や細胞小器官を分解し、再利用する仕組み「オートファジー」の研究で、2016年10月にノーベル生理学・医学賞を受賞。そしてその翌年の2017年8月に、これまで得た科学賞から1億円を拠出して大隅基礎科学創成財団を設立した。大隅財団のホームページには、大隅氏自身の次のような言葉が書かれている。 今後も日本人の受賞がこのまま続くかというと、はなはだ心もとない状況にあります。最近、このままでは急速に日本の研究力が低下していくことが客観的にも明らかになってきています。 このままでは、日本人からノーベル賞受賞者が出なくなる。現実に、2000年代初頭には毎年もしくは2年に1人は日本人のノーベル賞受賞者が出ていたが、最近はそのペースが落ちている。 現在の日本の基礎科学が置かれている厳しい状況にある。大隅財団では、この状況を少しでも改善するため、次の3つの目標を掲げている。 ・基礎科学者の助成 基礎科学に関する情報発信 企業とアカデミアとの新しい関係構築 設立から約8年が経過し、いくつかの成果も出てきた。大手企業13社と100人超の研究者が議論を重ねる場として設立された「微生物コンソーシアム」、抗生物質の効かない多剤耐性菌の解明のカギを握る「プラスミド」の国際的なデータベース構築、企業と基礎科学者との「マッチング支援」など、そのユニークな活動と財団の趣旨は、少しずつではあるが企業や社会に認知されつつある。 「基礎科学を大切にするというコンセプトを基本理念として、脆弱な財政基盤ではありましたが、企業や一般の方々の寄付に頼りながら、何とかここまで活動を続けてこられました」(大隅氏) しかし基礎科学を巡る状況は、財団の設立当初より、むしろ悪化している。たとえば大隅氏は「地方大学で『基礎科学』は禁句です」とまで述べる。その意味するところは、後ほど紹介したい。