ハッピーエンドを目指して   作:上条@そぉい!

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相変わらず戦闘描写が難しすぎる。


事態収束、前途多難

 陽の光を浴びてうたた寝に入りそうになっていた猫宮又奈は、ラジオから流れるニュースを聞いて一気に目が覚める。

 

──ヴィジョンが急遽予定を早めホロウ爆破計画を実行すると発表しました。

 

 無機質なキャスターの言葉がどこか遠くに聞こえる。爆破すると決まった場所は、猫又が育った故郷だ。普段なら悲しいが仕方ないと割り切れただろう。しかし今は違う。

 

「あそこにはまだ人がいるんだぞ!?」

 

 だからこそ企業は人々の避難を含めた計画を立てていた中で、この前倒しである。早過ぎる。避難は済んでいるのか?あの人たちは何処へ?疑問が次々と浮かんでくる。

 赤牙組は一体何をしているのか。こんな事態こそ動かなきゃならない筈だ。赤牙組は何よりも人情、仁義を貫かねばならないのに、この事態に何もしていないのか!?

 

「ボス!ニュースは聞いた!?」

「あぁ?それどころじゃねぇよ!」

 

 急ぎ足で赤牙組の事務所へと行けばボスのシルバーヘッドとその手下達がいた。誰も彼もが焦燥に駆られた表情だ。

 

「鼠どもに金庫を奪われた……!あれさえありゃ俺達はまだやれるんだ!探せ!」

 

 苛立ちを周りの部下にぶつけながら暴れるシルバーヘッド。金庫は突如として発生したホロウの中に落ちた事は確認している。だがホロウは耐性のない人間が入れば即化け物になってしまう。だからシルバーヘッドは獲物を前に手をこまねくしかなかったのだ。

 

「おう、そうだ猫又。てめぇ確かホロウ耐性あったよなぁ!?今から行ってこい!」

「な、何言ってるのさボス……今、ニュースで私の故──縄張りが爆破されそうになってるんだよ!?あそこにはまだ人が!」

「テメェ拾ってもらった恩を忘れたのか!?それに、俺たちがいりゃ幾らでも縄張りなんてどうとでもなる!今は金庫を──」

 

 愕然とした。前からジワジワと募っていた不信感がここに来て頂点に達したと思った。私を助けてくれた赤牙組とは、何よりも仁義を大切にする組ではなかったのか。あの故郷で建てた誓いは何処へ行ったのか。

 そんな言葉が喉元まで溢れて詰まり、言葉にならない嗚咽を漏らしながら私は勢いのまま走り出す。

 

「──ッ!」

 

 遠くで怒鳴り声が聞こえる。けどもういい。既に赤牙組とは疎遠だったんだ。恩もあったけど、その縁もここまで。誰も頼れないなら私だけでもなんとかするんだ。急いでホロウに残された人達の所へ行けば、まだ沢山の人達が残されていた。しかも、捕まえた傭兵の首をガクガク振り回して吐かせたらもう既に爆弾を積んだ列車は発進した後だと言う。

 

──どうする?どうすればいい!?

 

 もう長く生きたのだから、良いと諦めてそう呟く老婆を前に、私は何も言えなかった。兎に角どうにかしなくてならないともはや何も思いつかないまま動く。動いて動いて、気がついたらホロウの主、デットエンドプッチャーと対峙していた。やけっぱちだった。八方手塞がりで希望なんて見えなかった。でもせめて、誰もが見向きしないのであれば自分だけでも向き合うべきだと思った。

 その巨体に見合う丸太よりも太い巨腕から繰り出される叩きつけをなんとか避けてもその衝撃で吹き飛ばされる。土塊が勢いよく全身に当たる。視界がボヤける。

 

──もう、ダメなのか

 

 深い絶望の中で、体を投げ出し目を瞑る。もう直ぐにでも地面のシミになるだろう。でも、もう良いんだ。

 だけど、いつまで経っても来るはずの痛みが来る事はなかった。恐る恐る目を開けて見る。そこには、誰かの背中があった。ツンツン頭の後頭部をこちらに見せ、片手でデットエンドプッチャーの放つビームを抑えつける少年がいた。

 

「──え」

「立て!まだ終わってねぇぞ!」

 

 ジリジリと押されて地面を靴で削っていく。抑えながらこちらを覗く目には諦めなんて一つもなくて。

 

「何がなんだか知らねぇけど、助けたいんじゃないのかよ!?」

 

 こっちの事情も知らない少年は、こちらを見てそう言うのだ。何も知らないで、そんなことを言う彼に私は怒りやら呆れやら、ごちゃ混ぜで叫んだ。

 

「私だって皆を助けたいよ!無理だったんだ!どうにかしようと必死にやったよ!でもダメ、ダメだったんだ……」

 

 その怒りも長くは続かず、言葉は尻窄みになる。雫が地面をポタポタと濡らす。

 

「まだ終わってねぇ!いや、始まってすらいねぇだろ!」

 

 少し長いくらいのプロローグだ。このくらいなんて事はない筈だと俯く私に彼は言うのだ。

 

「だから前を向け!目を逸らすな!立ち上がれ!まだ希望は残ってるだろ!」

「そんなの、あるわけ──」

「ある!」

 

 ビームの奔流に押し流されそうになる体を強引に抑えつける。右手から嫌な音が聞こえても無視して、そのまま抑えつけた手でビームの端を掴み上に跳ね上げると、ビームは軌道をずらし自分たちの背後へと逸れていく。

 

「アンタは……」

「お節介な一般人。ちょっとオマケがついてるだけの」

 

 ホロウの主はまだ生きている。私の手を掴んで立たせると、再び構える少年。

 

「いいか、俺たちでアイツを誘導する」

「誘導?」

「なんかよくわかんねぇ連中が爆弾をどうにかしようとしてる。その鍵はあの化け物だ」

 

 その言葉に、私は目を見開く。どうにか出来るというのか。

 

「で、でもアイツはこのホロウの主だぞ!?私だって太刀打ちできないんだぞ!?」

「今度は1人じゃないだろ?世界だって違って見えるさ」

 

 そう言って拳を握る彼の目は至って真面目だ。私は、迷いながらその言葉を信じて見ることにした。だって、今のままだったら何も出来ない。だったら少しでも何かできる方に賭けたいと思ったから。

 


 

 

「はいはーい!これに乗ってねー!順番だよー!」

 

 魑魅魍魎蠢くホロウには似つかわしくない声が聞こえる。戦えない老若男女がその声の主へと視線を向ける。そこに居たのは服装を組み合わせてメイド服のような見た目へと改造された服を纏う女性だ。ぴょこぴょこと動く機械の兎耳をつけニコニコと笑っている。

 

「あ、あんた誰なんだい?」

 

 誰もが思った疑問に、女性はえー!?と愕然とした顔になったのち、ふふんと胸を張って言うのだ。

 

「もうちょっと知られてると思ったんだけどなー。私は篠ノ之束さんだよー!あ、ホロウレイダーとかじゃなくてちゃんとした企業勤めだよ?ほら、あるでしょえーっと……そうそう、アナハイムって企業の技術主任!」

 

 一方的に捲し立てる彼女に二の句が告げない。しかもその後ろに鎮座する機械について彼女は聞いても居ないのに説明し始めた。

 

「これはねー、白式の機能再現をしようとした過程で生まれた副産物なんだけど、突貫でエーテル侵食耐性機能をつけた箱だ──」

 

 あーだこーだと説明を続ける彼女の言葉は途中で機械の後ろから現れた男によって遮られた

 

「1人で突っ走るなって言っただろ」

 

 ポカリ、と頭を小突かれ蹈鞴を踏んだ彼女は頭を摩りながら口を尖らせる。

 

「むー、せっかく説明できる機会ができたのに。そんなだからモテないんだぞスットコくん」

「ピザ屋の警備員はやった覚えがないぞ。俺はお前のお目付け役として社長から頼まれてるんだ、余計な事はするなよ」

 

 一方的に文句をつける彼女を馬耳東風といった感じに受け流している彼は、こちらに身分証を見せながらその場にいる人たちに説明した。

 

「すまない、突然で驚いただろうが、俺たちは貴方達を助けに来た者だ。こう見えて市長直属で動いてるエージェントだ。信用してくれて良い」

 

 この問題児が動くと聞いて、態々理由を市長にでっち上げてこの場に急行したレオンは来て良かったと安堵した。絶対1人でここに来させてたら新たな問題起こしてる所だっただろう。電話越しで自分に頼む安室社長の声が酷く疲れたものだったのも納得だ。

 

「私たちは……助かるのかい?」

 

 おずおずと尋ねる老人達に、2人は顔を見合わせ、微笑む。

 

「私がやるんだから当然でしょ」

「安心してくれ、その為に来たんだ」

 

 その笑みには、必ず出来ると思わせるような自信があった。自負があった。その言葉に安心して、皆が箱と称した乗り物へと入っていく。

 

「……ねぇ、周りの傭兵は?」

「残ってたのは俺がやった。残りは別働隊……あの人がやってくれたよ」

 

 雇われの傭兵から情報を探ったところで出てくるものなど多寡が知れている。仲良く捕まえて然るべきところへと行ってもらう。市長なら良い使い道を思いつく筈だ。

 

「あとは……本人達の頑張りだな」

「ま、大丈夫じゃない?多分いけるでしょー」

 

 各々にできる事は限られている。だからこそ出来ることはキッチリこなす。そうすれば必ず結果が出ると信じて2人はホロウを民間人達と脱出した。

 

 


 

 

 劈く金属の擦れる悲鳴のようにけたたましい強烈な嫌な音がホロウに響き渡る。ガタンゴトンと列車の車体が大きく揺れ、中にいるスネークの体が左右に振り回される。

 

「おい!本当に安全なルートなんだろうな!?」

『安心安全!間違いなく安全ですよ!ただ全体的に危険な事に違いはないんでプラシーボ程度には安全です!』

 

 ホロウ内は荒れている。レールを走る列車は荒地を走ることを想定し頑丈にはなっていたが、中にいる人まで考慮には入っていない。そんな中でスネークがやっていたのは、列車の最前、運転席にエーテル爆薬を運んでいたのだ。

 

「残り3分……間に合うか……!」

『っていうか何してるんです!?脱出しなくていいんですか!?』

「脱出は後回しでいい、今は少しでも成功率を上げる事を考える!」

 

 列車ごとぶつけるのなら、最前である運転席に集めるのが一番良い筈だと運んでいたのだ。そうして運び終えたあと、次は何をするのかとエネが見る中、スネークの行動は、列車の窓から外に這い出て屋根へと登り出す。そうして取り出すのは事前に列車に積まれていた傭兵の装備から拝借したエーテルホールランチャーだ。

 

「あまり好みじゃないが、選り好みはできない」

 

 ジャキっと、肩に砲身を乗せて構える。タイミングは一度だけ。ホロウの主に列車が衝突する寸前で飛び降り、ランチャーで爆破する。その時を待ち、深い呼吸をする。

 

「カウントダウンを頼む、エネ」

『了解です!』

 


 

「んにゃ゛……ッ!?」

「くそッ!」

 

 無様な鳴き声を上げながら後方へ吹き飛ばされる猫又。そのカバーに走る上条。しかし、このホロウの主は馬鹿ではない。その名に相応しい知能を有している。最初の激突から本能か、それとも知能か。決して上条を近くに近寄らせまいとしている。

 

『guuuuuu!!!』

 

 風を伴う雄叫びが全身を叩く。巨腕に握られた何かの残骸を棍棒のように振り回してこちらに迫る。横薙ぎにくるそれを走りながらスライディングで避けて距離を詰めようとする。

 

「野郎……!」

 

 その動きに機敏に反応した主は、残った腕で地面をひっくり返すようにガリガリと削って土砂をこちらに投げつけてくるのだ。まるで巨人の投石。子供のじゃれ合いのように見えるそれは人間にはそれでさえ致命的になり得る凶器。

 咄嗟に頭や顔を両腕でガードするも土砂に混じって飛んでくる岩の破片が雨のように全身を叩く。上条の体が数メートルは吹き飛び、地面を不規則にバウンドしていく。

 それだけで体のあちこちが酷く痛む。じわりと頭から血が頬を伝って地面へと落ちる。また距離を離された……!

 

「大丈夫か……!?」

 

 吹き飛んだ猫又が復帰してこちらに来る。手の甲で血を拭って立ち上がり再び2人で構える。

 

「本当にどうにかなるのか!?まるで勝てる気がしないぞ!?」

「勝つ必要はないんだ。俺たちはここに奴を食い止めるだけでいい」

 

 脳裏で掲示板を通して会話しながら、冷静に相手の出方を伺う。

 

 

──あとどれくらいだ!?

 

──1分!あと1分あればいい!

 

 

「だったら私に任せろ!得意だ!」

 

 そう言いながら突撃していく猫又は、シリオンとしての身体能力の高さを活かして相手の攻撃をひらひらと回避しながらちょこまかと細かく両手に持ったナイフで切り刻んでいく。

 

「だったら俺は……!」

 

 距離を保ちながら敵の周りを走る。このホロウの主の視界の外へと。例えこの距離では何もできないとしても、彼の右手幻想殺しは異能を殺す。触れられたらアウトのそれを果たして見逃すだろうか?

 だから無理矢理でもホロウの主はこちらを向く。多少の手傷を無視してこちらを狙おうとする。そこを更に猫又が攻撃していく。即席のコンビネーションは思いのほか息が合った。言葉なく、それぞれの行動の意図に気づいてお互いが思惑の擦り合わせをしていく。

 

──もう到着する!

 

 脳裏でそんな連絡が届くと同時に、ガタンゴトンと揺れる音と、周りの瓦礫をガリガリ削りながらこちらに向かう列車の音が聞こえてくる。

 

「こっちだ!」

 

──3!

 

 まだ猫又は主の懐に居る。呼びかければ一目散にこちらへと走ってくる。それをデットエンドプッチャーもまた追いかけてくる。そう、背後から飛び込んでくる列車に気が付かないまま。

 

──2!

 

ギリギリで猫又の手を掴み、そのまま自分の体を盾にするように抱きしめて後ろへと飛び込む。

 

──1!

 

 ゴグシャァ!!!と凡そ聞く機会のない破壊音で、高速で飛来する質量の塊が化け物へ衝突した。その衝撃だけで猫又を抱き抱えた上条の体が浮き上がり、ゴロゴロと地面を転がる。土煙が立ち込め、何も見えない。痛む体を無理矢理動かして上条は近くにあった瓦礫の裏へ体を隠す。

 

 列車が降ってきた崖には、バンダナを巻いた目の鋭い男が1人。その肩にはランチャーが担がれており、その銃口は既に対象へと向けられている。化け物は何が起きたのか理解できないまま、列車の下敷きになったまま暴れている。

 

『折角ですし、ビシッと決めてくださいよ!』

「必要か?……まぁ、友人の言葉を借りるなら──大当たり、だな」

 

 引き金を弾く。連続して大地を揺らして響く爆発音はまるで化け物の最後の怨嗟のよう。こうして、ヴィジョンが仕組んだホロウ爆破事件は一端の幕を閉じた。

 

 

 


 

 

 悠々自適に煙草を吹かしていたヴィジョン社長パールマンは、部下からの連絡を受けてフカフカのソファから立ち上がった。

 

「馬鹿な!?計画が失敗だと!?しかも生存者も残ったまま!?」

 

 クソが、と悪態を吐きながら受話器を叩きつけ、ドカッとソファに座り直す。ガリガリと親指の爪を齧りこれからの事をブツブツと考え始める。

 

「くそ、こうなればスキャンダルとしてすっぱ抜かれて私は終わりだ。」

 

 だから私は言ったのだ。本来の予定通り計画を進めればこんな事にはなっていなかった筈だ!サラがそうしろと言うから──

 

「そうとも!私は悪くない!悪くないんだ!」

 

 これを達成できれば念願のTOPS企業の仲間入りができた筈なんだ。

 

「事、ここに至ってもなお開き直りですか。大したものです」

「誰だ!?」

 

 自分しかいないはずの社長室に、いないはずの声が聞こえる。声の主を見れば、今まさに音もなく扉を閉じ、こちらに身を晒す男がいた。

 

「貴様は──!」

 

 パールマンは知っている。その顔をよく知っている。防衛軍に装備の3割を一社で供給し続けている会社の社長。その身一つで立ち上げ目覚ましい発展を成し遂げた怪物。

 

「安室透……!何故貴様がここに!」

「何故なのか、今それを聞いたところで貴方には関係ないでしょう。貴方には然るべき場所に行ってもらう必要がある」

 

 パールマンは貴重な讃頌会の情報を持つ人間だ。計画が失敗した今、口封じに殺される前に確保しておきたかったのだ。

 

「貴様……!!」

 

 ガッと、パールマンが机に置かれたガラス製の灰皿を掴み、その中の吸い殻の灰を安室に投げつけた。怯む安室に、パールマンはそのままズカズカと走って掴んだ灰皿で殴り掛かる。しかし

 

「うぐッ!?」

「この程度、想定してましたよ」

 

 パールマンの腹に捩じ込まれる拳。体をくの字に曲げて、膝をつくパールマン。そこへ、スーツの懐から出した注射器をパールマンの首元へ刺す。途端に混濁していく意識と共に体から力が抜け、倒れた。

 

「ふー……ここからが正念場かな。ステルス迷彩を横流ししてくれたイゾルデ大佐には感謝しなくては」

 

 ここまでバレずに侵入するのは大変だったし、何故社長の自分がこんな事を。と悲しくなるも、結局のところ人手不足というのは悩ましいものだと安室は肩を落とすのだった。




【ルール】
・自分の転生キャラになりきること(解釈違いを恐れるなかれ!)
・キャラ達の原作でやらない行動はできるだけ避けること!


転生者その9
改めて作品はインフィニット・ストラトスより篠ノ之束。倫理観がぶっ飛んだやべーやつその1。原作よりはマイルドになっているが自分の発明第一なのは変わらない。
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