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「なんでジム巡りしないのシバリさんジム巡りしてよシバリさんやだやだやだやだやだぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
ヒカリが涙目になりながら俺の肩をぐわんぐわん揺らして懇願してくる。
「……あの、シロナさん。これどうにかなりません?」
「う〜ん……ならないんじゃないかしら……」
「えぇ……」
苦笑いしながら答えたシロナさんを見て、一筋縄ではいかないことを確信する。
ど、どうしたもんかなぁ、これ……。
「揺らすな揺らすな。そもそもなんでヒカリは俺にジム巡りしてほしいんだ? ポケモンバトルしたいのなら別にまた会ったときにでもやれば良いんじゃ……」
「……じゃあ、月1で」
「へ? まあそのくらいなら……」
「やっぱ足りない。週1」
「ん?」
「いや、3日に1回」
「おい」
「……毎日」
「流石に無理あるからなそれ」
それもうジム巡りよりバトル三昧じゃん。
ていうか涙目でじっと見つめて視線で訴えてくるのやめてくれませんかね。謎の罪悪感がある。
「……シバリくん。ちょっと聞いても良いかしら?」
「え? あ、はい」
「ジム巡りするわけじゃないってことは、シンオウ地方には何をしに来たのかしら?」
「観光です」
「シンオウ地方なんて何もないしそれよりポケモンバトルしようよシバリさん」
「なんてこと言うんだ」
なんてこと言うんだ(大事なことなので2回)
シンオウ地方にも何かあるだろ。ほら、例えば……もりのようかんとか(圧倒的知識不足)。
「勿体ないわね……。ポケモンバトルは楽しくない?」
「や、楽しいですよ? 楽しいですけど、その……今までやりすぎたんで、ちょっと休憩したいなぁと」
「……やりすぎた? 他の地方でジム巡りをたくさんしたってことかしら?」
「ああ、いや、そうではなく……」
うーん……。なんか人に言うのも恥ずかしいけど、納得してもらうためにも話すしかないか。
「実は──」
俺は今までのことを二人に話した。幼馴染のことが好きで、振り向いてもらうために血のにじむような努力をしたこと。そして、結局彼女には勝てずに振られてしまったこと。
話し終わる頃には、ヒカリが頭を抱えて床をゴロゴロ転がっていた。
「あ、あ"ぁ"……! う"、う"ら"や"ま"し"い"……っ! どれだけ負けても特訓して挑み直してくるなんて……! 私がそのポジションなら、絶対ッ……!」
「ヒ、ヒカリ……?」
「……そうだ。シバリさん、今からでも私の幼馴染にならない?」
「無理があるだろ」
「あ"ぁあ"ぁぁぁ"ぁ"ぁぁ!!!!!」
またゴロゴロ転がって唸りだした。マジでどうしたんだヒカリ。
「……自分の求めているものを過剰供給している人間がいた事実に耐えられなかったのよ」
「は、はぁ……」
「それより、どう? もう日も暮れてきたし、今日はこの施設に泊まることにしない? 広くはないけど人数分の宿泊部屋はあるのよ」
「えっ」
いかん。このまま泊まったらズルズルと一緒に居る流れになって逃げられなくなりそうだ。
ここはどうにか、離脱しなくては──。
「! そうだよシバリさん! 今日はもうここに泊まろ?」
「いや、えっと……俺、用事があるので……」
「あら? 自由にゆっくり旅してるって言ってなかったかしら?」
「ゔ」
しまった。さっき赤裸々に近況を話してしまったせいで、この程度の言い訳じゃ効かないか……!
「用事って何? お店を予約してるとかなら私とシロナさんなら予約日を変えるとかキャンセル料を立て替えるとか
「ヒェ」
マジでこの二人何者なんだ。なんか偉い人の関係者だったりするのか……?
って、いかんいかん。今はそんなこと考えてる場合じゃない。
「そ、そういうのじゃなくてさ。ほら、ちょっとどうしても今日のうちに行かなきゃいけないとこがあって……」
「参考までに聞かせてくれる? さっきも言った通り、私たちなら大抵のことはどうにかできるわ。もしかしたら協力できるかもしれない」
「あっあっあっ……」
一見優しい提案のように思えるが、そこはかとなく『逃がさんぞお前』みたいな雰囲気が見え隠れしている。
考えろ俺、シンオウ地方で人の権力ではどうしようもならないようなスポットを──!
「──も」
「「も?」」
「もりのようかんです」
すごい顔された。
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結局秒で嘘だとバレて逃げられなかった。もっと下調べしとくんだったな……。
とはいえ部屋は別々だし、風呂トイレは勿論テレビも部屋の中に併設されているので、ポケモンセンターに泊まるよりも快適ではある。
うーん。明日からどうすっかなぁ。どうにかあの2人を納得させて離脱したいところではあるが……。
「……ま、明日のことは明日の俺がなんとかするか」
どうせあてもない旅だ。もし離脱出来なければそれはそれってことで。
考えがまとまったのでテレビでも点けようとしたところ、部屋の扉がノックされた。
「シバリくん。ちょっと良いかしら?」
「シロナさん? はい、カギは開いてるのでどうぞ」
俺がそう言うと、シロナさんが部屋に入ってきた。あれ? ヒカリは一緒じゃないのか。
「ごめんなさいね、突然」
「いえ。どうせやることもなくてテレビでも見ようとしてただけなんで。あの、ヒカリも一緒なんじゃ……?」
「ヒカリちゃんなら部屋でくつろいでるわ。今からする話は、ちょっとあの子の居ないところでしておきたくて」
「?」
ヒカリに聞かれたくない話なのか? 一体どんな話だろう。
「……その、無理矢理連れてくるような真似をしてごめんなさい。良い大人なのに、子供にこんなことをするのは自分でもどうかと思っているわ」
「子供って……俺一応15歳──」
「子供じゃない」
「子供ですね」
子供だった。
「でもね、久しぶりにヒカリちゃんが楽しんでる姿を見られたの。貴方のおかげで」
「俺……ですか?」
「ええ。あの子はその……色々事情があって、ひとりぼっちだったの」
「えっ? でもシロナさんが一緒に居るんじゃ……?」
「一緒に居るだけなら誰でも出来るわ。でも、真にあの子に寄り添うことは私には出来ない。我ながらみっともない話だけどね」
「真に、寄り添う……?」
「ふふっ、あまり深く考えなくても良いわ。ただ私が貴方に一方的に感謝しているだけだから」
「は、はぁ……」
よ、よくわからんが、シロナさんが言うならそういうことにしておくか。
「……で、ここからが本題なのだけれど」
「はい」
「私達の正体……とまでは言わずとも、有名人ぽいってのは何となくアタリが付いてるのよね?」
「……そうですね。はい」
「それは正解。そして、実際に明日からのスケジュールも本来はパンパン。正直今日ここで泊まると明日の朝は早く出ないといけないくらいにはスケジュールが詰まっているわ」
「そ、そりゃまた大変ですね……」
「ええ、だから──」
「──明日から1週間分、私とヒカリちゃんの全予定をキャンセルしたわ」
「……はい?」
キャンセル? 予定を? 1週間分? マジで?
あまり有名人の界隈には詳しくないが、それが凄まじいことだというのは俺にでもわかる。
でも、なんでキャンセルなんか──。
「だからお願いシバリくん。明日から1週間、貴方の時間を私たちにくれないかしら?」
「はい!? どういう風の吹き回しですか!?」
「シンオウ地方の観光に来ているんでしょう? なら、明日からの1週間で私とヒカリちゃんで色々案内するわ。……この地方のこと、あまり詳しくないんでしょう?」
「ゔっ……! それは、そうですが……」
確かにシンオウ地方については詳しくないし、案内してくれるというのであればありがたいかもしれない。でも──。
「それだけのために、1週間も……?」
「それだけのことをする価値はあるわ。ヒカリちゃんの──子供の笑顔を守るために、大人は居るんですもの」
なにそれカッコいい。シロナさんちょっとイケメンすぎない?
「……でも、それで言うと一応俺も子供なんですけど……」
「あら? 男の子なら甲斐性を養った方が将来モテるわよ? 例えば女性の無理を聞いてあげる……とかね?」
「……俺が断ったらどうするつもりなんです?」
「
「……わかりましたよ。明日から、よろしくお願いします」
「優しいのね。そういうところ、貴方の良いところだと思うわ」
ゔっ……シロナさんには勝てる気がしない。これが大人の女性ってやつなんだろうか。
「じゃあヒカリちゃんにも伝えておくから、明日からよろしくね?」
「はい。わかりま──あっ」
「?」
部屋から出ていこうとしたシロナさんを見て、俺はあることに気がついた。
「その脇に抱えてる本、ミオ図書館で読んだ──「シンオウ神話に興味があるの!?」食いつきすごっ!?」
え、待って。さっきまでの凛々しい大人の女性どこいった?
考古学者スイッチ押しちゃったァ……