四十六話 レアリティとは、コモン・アンコモン・レア・神格レアの4種類である
「ふんふん~ふふ~~ん」
平和な土曜日の朝。
カランカランとベルが鳴った。
「いらっしゃ……!」
その日、扉を開けて現れた彼女は見たこともない姿だった。
「サレンちゃん?!」
傷だらけだった。
そして。
「ちょっと拘束するからロープとかガムテとか貸して欲しい」
「え」
右手には完全に失神している男の襟首をひきずっていた。
「あと通報よろ」
「ぇえ」
とりあえず警察に通報した。
クルクルと包帯を巻き付ける。
赤く腫れた部分に塗るタイプの湿布薬を塗りつけて、首にも湿布を貼る。
「消毒はしなくていいの?」
「ん。この程度ならきちんと洗って包帯巻けばいい、そのほうが早く治る」
「そうなんだ」
臨時休業の看板に取り替えたMeeKingの店内で、ボクはため息を付いた。
怪我をしているというのに平然とした態度のサレンちゃんに。
なによりも大きな傷じゃないとはいえ、顔に怪我までしてるのに気にしていない態度に嘆きたくなる。
「サレンちゃんも、女の子なんだからあまり無茶しないで」
「大丈夫。銃で撃たれたわけじゃないからこれぐらいちゃんと治る」
「そういう規模の話してた??」
ため息を付く。
ああもううちのバイトちゃんはみんなバイオレンス過ぎるよ。どうしてこんなことになったのか。
「セト、助かった。暴漢を通報するにしてもあまり事情聴取とか、顔を出したくなかった。さすが元
「あくまでも昔の話だし、前の一件で伝手が出来た刑事さんがいただけだよ」
ビッとサムズアップされても困る。
ああ、もぉ昔の話だというのに。
今のボクはただのどこにでもいるカードショップの店長なんだけどなあ。
世間もみんな忘れてたのに、この間の一件で照会されちゃったんだよね。
闇のカード使いだったあのプロフェッサーも、ボクが倒したことになちゃってるし、うぅ。普夫くんめ。
「それでなにがあったの? 一応刑事さんにはこちらから事情を聞くってことで約束しちゃったんだけど」
「なんか闇ファイターに襲われた」
「えっ」
「出勤中にいきなり襲われたんだけど、これは労災下りる?」
「タイムカード押してない時間帯に労災言われても困るんだけど、襲われたって……闇ファイターに!?」
サレンちゃんは美少女だから、暴漢に襲われたって言われても理解が出来る。
いや全然よくないし、このあたりそんな治安悪かったっけ? なんて思うけど、理由はわかる。
けど、それが闇ファイター――
「うん。待ち伏せされて、問答無用でファイト仕掛けられた。こっちはオフの時だったから無駄な怪我した、やれやれ」
「いや、闇のファイターに襲われたってそんな軽いもんじゃ」
「わかってる。あいつらはろくでもない」
いつもの無表情に、少しだけ眉をひそめる。
サレンちゃんなりに緊張はしてたんだろう。
「
「……うん。でも本当に大丈夫? サレンちゃん、なにか怪我以外にされたんじゃ」
「大丈夫。リアルダメージ与えたぐらいで怯むなんて思い込んでた雑魚だった、まだ闇カード手に入れてまもない雑魚だったし、アンティも【自分の命令でも何でも聞くおもちゃになれ】なんて命令だったから、洗いざらい素直に警察に言うように命令しておいた」
「それはいいけど……ずっと警察さんのお世話になるんじゃないかな、その命令」
「大丈夫。大したパワーじゃなかったし、闇カードも処分してあるからそう長続きしない……はず?」
「はずだと困るんだけど」
ボクは頭を抱えた。
厄介なことになってきた。
うぅ、どうしょう。助けて普夫くーん。
「そういえば今日はモブいないんだっけ?」
「うん、土曜日は夕方から入ってくれるんだけど今日は用事があるって」
「それならしょうがない、ん?」
いきなりサレンちゃんがドアに振り返る。
なんだろうと思ったら、カランカランとベルが鳴った。
「すみませーん! 店長いますかーってあれ? サレンさんもいる」
「ユウキ?」
「ユウキちゃん? どうしたの?」
休業の看板が見えなかったんだろうか。
「二人共いるのはちょうどよかったです」
「どういうこと?」
「ちょっと闇のカード使いに襲われてぶっ飛ばしたんですけど、こういうのってよくあるんですか」
思わず二人で顔を見合わせてしまった。
◆
「サレンさんも襲われたんですか?」
「ん。雑魚だったけど、そっちも?」
「うん。昨日、部活の先輩が使っていて……あまり強くなかったけど」
「弱いに越したことはないよ。でも二人共無事で良かった」
本当ハラハラさせないで欲しい。
「闇のカードなんて関わらないにこしたことはないんだから」
いやまあ思いっきり被害に、というかそれで襲われたボクが言えた義理じゃないんだけど。
いや襲われたから言える? 言うべき?
うーんでも二人共襲われたりして、それで勝ってるんだから筋違い……? どっちだろ。
悩ましい問題だ。
いやこんな気楽に言えるような問題ではないはずなんだけどな、闇のカード。
本当に危険なものだから。
「店長ってもしかして闇のカードとか闇ファイターに詳しいんですか? サレンさんなら知ってそうだと思ってたけど」
「まあ私は経験豊富な傭兵ファイターだから多少は知ってる」
「メガバベルの時に遭遇してたもんね。じゃあちょうどいいや」
ちょうどいい?
首を傾げると、ユウキちゃんはマジマジとボクの顔を見た。
「闇のカードってなんですか?」
「え、そこ?」
「いやだって、私倒したの部活の先輩ぐらいで。あとなんか疑似闇のカードとか、領域とかっていってたロボと戦っただけなんですけど」
「ロボ?」
ロボ?
ロボってなに?!
「ユウキ、一応メガバベルの社長も闇カードは使ってた」
「そうなの?」
「捕まってた人たちから共鳴を奪う触媒だったみたいでファイトではでてなかったけど」
「それじゃあわからないよ!?」
ちょっとまって!
ロボはいいの?!
スルーしていいことなの!?
「そういえばセトと違って、ユウキはプロフェッサーと戦ってないのか」
「……プロフェッサー?」
誰? と首を傾げてるけど、まあユウキちゃんは知らないほうがいいよ。
あのおじいちゃん目がイッてたしね。
ボクのデッキに”あの子”がいなかったとはいえ負けてしまったぐらいに強かった。
ハンデス主体のデッキに加えて、あの知識量。さすがは。
「裏業界では有名な闇のファイター。通称プロフェッサー、億単位の手配首」
「億単位?!」
「
「いれいざー?」
「方舟教会が抱えている名うてのファイター。
「ボクの古巣をあまり誤解されるようなこと言われるのは困るんだけど」
教会の敵を葬るっていっても基本的にテロ、犯罪者だけだ。
世界の中には警察や治安機構が働いていない地区があるし、そこで暴れている犯罪者の拿捕とかに違法のカード。偽造カードとか、正規の手段で手に入れたわけじゃないカード、禁止指定されたはずのカードとかを使うファイターを拿捕、討伐するのに教会が協力しているだけ。
方舟教会は教義からしてLife、それが強く修練を磨いている。
だからプロになっている割合も多いし、教会から出たあとでも職業ファイターとして活躍している人も多い。
そういう話になっている。
「……それで、そのプロフェッサーをセトが倒してる」
「え?! そうなんだ! 店長すごい」
「あはは、まあ運だよ運」
サレンちゃんからの言葉に、笑って誤魔化す。
いやね、茂札くんが倒したなんて言えないからなあ。
世間的にはボクが彼を倒したことになっているし、本人から口止めされてる。
彼がプロフェッサーを倒したデッキ。
エニグマはあまりにも刺激が強すぎる。
現役だった頃のボクが知る限りで理解出来るとしたらあの二人ぐらいだろう。
ボクが知る限りの最強”覇手”や、あのク――”魔王”。
いや、あの二人が同じようなのを作ってきたらお終いか?
いやでもあの頃から変なデッキとか作ってくる人だったからなあ、
”魔王”と呼ばれることになった彼も初めての昇座戦、聖座入りの認定戦だったのに初戦のボクは撥ね殺されたし。
あのあと、他の皆もゴボウ抜きで撥ねられていって、当時の二位……”祓魔紙”までストレート勝ちでなぎ倒したって聞いてドン引きしたし。
あの
ふ、ふふ……あのあと文句なしで入った彼にボコボコにされたんだよな。
ワンミスだけで許されないのか、許されなかったんだよね。いやちょっと心折れそう。
「ふ、ふふ」
「なんか遠く見てます」
「きっとそれだけ激戦だったんだと思う。いいファイトをするとたまにこういう目になる」
「サレンさん、普段どこ見てるのかよくわかんないんですけどそういう理由だったんだ」
「ユウキ……?」
おっといけない。
「ゴホン。話を戻すよ」
咳払い。
気を取り直して、立ち上がる。
「とりあえず少し長い話になるから飲み物用意するね。二人共フリースペースに座ってて、ジュースでいい?」
「ストレート紅茶で」
「サイダーください」
「缶ジュースをナチュラルに言われたなぁ!」
まあいいんだけど。
財布から取り出した硬貨でジュースを、自分用に温かいミルクティー缶を買う。
店内は冷暖房を備えているから、時期によって多少比率は変えてるけど常に温かいものも買えるようにしている。
そういえば茂札くんが、人と話す時は温かい飲み物を用意してる方が印象がよくなるとかっていってたっけ。
そんな雑学を思い出しながら二人に買った飲み物を渡して、ボクも席に座った。
「それじゃ、闇のカードと闇ファイターのことだね」
「はい」
「まずなにから知ってるかな?」
「えっと……闇のファイターは、ファイトすると相手の共鳴率を奪う。あとファイトのダメージがリアル化して、それと変なアンティをつけてくる、であってるます?」
「うん、あってる、ね」
……頭を抱えたくなった。
信じてなかったわけじゃないけど、本当に闇のファイター。
そして、闇のカードに関わってるんだ。
ユウキちゃんが強い子でよかった。
サレンちゃんも負けないような強いファイターで良かったと思う。
「それじゃ……闇のカードのことから説明をしようかな。まず前置きだけど、これは普通の人は知らないし、知らないほうがいい話だからそのつもりで」
「はい」
「まあ当たり前だね」
傭兵ファイターだからって知ってるものでもないと思うんだけどなぁ。
まあサレンちゃんがどんだけの立場なのか、今のボクだとよくわからないんだけど。
「闇のカードは二種類ある。呪われているか、生み出されたものか」
「呪われてるか、生み出されたもの?」
「まず呪われてるカード。これは普通のLifeのカード、その中でも持ち主だった人間が不幸にあったり、未練を残したりして持っていたカードに怨念が残ったりすることがある。いわゆる曰く付きだね、こういうカードが一般的によく見かける呪われたカード、闇のカードって言われてる」
「そんなのあるんですか?」
「うん。カードそのものが邪悪っていうより、それと共鳴してたファイターの未練、力がとかが宿ったりして暴走してることもある。こういうのが遺品整理とかでカードショップに流れたり、誰かが引き継いでしまってトラブルになったりする事件もあるんだ。例えば体調不良になったり、捨てたはずなのに無意識に操作されて再回収してしまって捨てられないとか、カードから共鳴されていって人格が歪んでしまったりとかもある」
「え」
「精霊の中にはそういうものがいるんだ、みたいに思われることもあるね」
≪ユウキ、あたしは違うからね!?≫
「わかってるよ」
「まあそういう認識もされてるって話だから。だからそういう曰く付きのカードとかはお寺さんとか、教会とかできちんと処分してもらえるところもあるよ」
苦笑しながら、ミルクティーを口に運ぶ。
唇を少し湿らせながら。
「でもそんなカードでも長く使われて力を蓄えると他人から共鳴率を奪う、闇のフィールド……領域を用いるようになる。そしてリアルダメージや、アンティも起こし得る」
「成長していくってことですか」
「
「本物……?」
「
「現実を……?」
「闇のカードの力っていうなれば最初は共鳴なんだ。持ち主だけじゃなくて対戦相手の共鳴、その力を支配する。ダメージは最初な幻覚、だけど段々と真に迫って本物のダメージになる。アンティに関しては軽い暗示、例えば負けたらジュースを買いにいけとかいわれたら買いに行ってしまう。負けた負い目につけ込んで言う通りにされてしまう、それがどんどん悪化するの」
ゆっくりと息を吸う。
信じがたい、かつての自分にとっては絵空事だった情報をゆっくりと間違えないように伝える。
「始まりは暗示、言うことに従う。その次は洗脳、思考すらも変えられてしまう。さらに進めば変化、例えば手足をへし折れといわれたら勝手に折れる。カードになれ、椅子になれ、とかいわれたら従ってしまう。力を蓄えれば蓄えるほど出来ることが増えていく、生命を奪うだけならまだマシ。例えば若さを奪われるとか、名前とか記憶まで剥がされたとか、国一つ捧げさせられたなんていうこともある」
「なに、それ……カードに負けるだけであるの?」
あるんだよ。
そんなのがいる、いた。
「
許されるものではない。
「カードの効果を実体化させる力もある。これは高位の闇カードでもなければ出来ないことって習ったけど」
「なにそれ、めちゃくちゃ過ぎる……なんでそんな力が」
「”歪み”っていわれてる」
「歪?」
「神様が生み出した今の世界は未完成であり、それが故に不安定なバグが闇となって現れるんだって」
それは一種の神話だ。
眉唾物の御伽噺。
「人の欲望、闇、不安定な気持ち、マイナスの気持ちが寄り集まって闇のカードになる……なんていう説も聞いたけれど、どちらかといえば
そんな仮説。
そんな習い事。
「だから努力し、人と正しき教えのもとに完成された世界を目指して日々新たに過ごしなさい……とは昔教わったかな」
「方舟教会のお決まり文句」
「まあいい子に過ごしなさいってことだね」
サレンちゃんは興味なさげ。
ボクも一応そこ育ちから信じていることだけど、一般教義ぐらいの信仰だ。
”あの子”を失ってからボクの信仰は色褪せてしまった。
「未完成の世界…………なら」
「なんで神様はちゃんと世界を作らなかったんだろう?」
「途中で飽きたとか?」
「ヒドすぎない!?」
サレンちゃんぇ。
「その最後を完成させるのは人の手だから、とはボクが教わったよ」
「人の手で?」
「うん。だから神様は人を創って、この世界に住まわせてくれたんだってね。日々の生活や、苦難は人が成長するために与えられた試練であり、それを乗り越えていくことによって世界はより輝いて、神の身元に近づき、いずれ辿り着くことが出来る」
なんてグランマの解釈だったかな。
ここらへんは導師によってちょっと解釈が違ってたんだけど、まあ大体意味は同じだ。
人のための世界なのか、世界のための人なのかぐらいだ。
「ふぅん?」
よくわかんないって首を傾げるユウキちゃんに、苦笑する。
「まあいつか考えればいいよ。話を戻すと、そんなカードを使うのが闇のファイターだ」
「闇のカードを使うから闇のファイターで合ってたんだ」
「それ以外に分類しようがないし、クズだし」
「言い方がひどい!」
辛辣な言い方のサレンちゃん。
だけどまあそう言われるのも正しい。
なんせ。
「闇のファイターは一切例外なく危険人物だよ」
「うん、例外はない」
「危ない力を使ってるから?」
「力の有無もあるけど、一番危険なのは精神性」
「精神性?」
サレンちゃんの言葉に、ボクは一つだけ補足する。
「闇ファイターは誰も彼も、闇のカードに力の濫用にネジれてる」
「ねじれて、る?」
「ユウキちゃん、さっき上げた闇のカード。そんな力を他人に使えたらどう思う?」
「……いや、気持ち悪いから使いたくないです」
「うん、まあそれが普通だよね。でもうっかりでも、確信でも一度でも使ったら、そしてなにより
「え?」
腕を組んで、少し考える素振り。
うん、ちゃんと考えているのが偉いよ。
「歯止めが掛からないんだ。なんせ使う条件のファイトには、簡単に勝てるんだから。相手は共鳴率が奪われてるんだから」
「あっ」
「闇のファイトをかけられたファイターは普通には戦えない。引く手札もいつもとは違うバラバラになるし、それを握ってるデッキの冷たさ、出てくるクリーチャーの息遣い、受けるダメージのリアルさ、訓練も覚悟もなしで戦えるものじゃない。だから簡単に負けてしまう、そんな状況でも勝てる普夫くんみたいな例外は多くない」
「デッキを支配する、自分のデッキに戦い方を伝える支配ならライフデッキよろしく惑わされることはないけど」
「まあ普通のファイターには難しいよ」
ファイターの戦いには段階がある。
まず自分と相性のいい適性、共鳴出来るデッキ探し。
そこからいい手札、スムーズな引きやプレイングが出来る流れを常習化出来る共鳴の自覚。
そして、その上で自分のファイトプランニングに導く
Lifeのファイトで戦うのは自分のデッキだ。
カードもそこから引き出すものだけど、選ぶのはデッキじゃない。
選択するのはファイターの意思だ。
デッキが選んで出してくるカードを使っているだけでは勝てない。
――戦う意思はいつだって頭と手に宿る。選択の責任は自分で選んで取るものだよ。
ぼんやりとそれを言語化出来ていなかった当時のボクを叩きのめした”魔王”はそういった。
強すぎて半分もわからなかった”覇手”のファイトの内容を噛み砕きながら言葉にして、そして。
いやそうはならんやろとしか言いようがない上の次元過ぎる領域で、未だに多分きっと6割ぐらいは理解できるようになった頂点で殺し合っている。
”0と100の天秤に眠る
”幾重にも被せられた
”勝利と比例すべき
そんな言葉を理解できればもっと強くなれる。
だったかな。
「だから普通のファイターは勝てない。そもそもボードを持っていないと抵抗も出来ない」
「そうなの?」
「うん。
そうでないと精神を犯してくる力とは真っ向から向き合えない。
勝負のテーブルに座れる。
そういうものだと思っている。
「でもそれでも勝ちやすく、力を乱用する闇のファイターはどんどんエスカレートしていく。咎められず、叱られたことがない子供が大人になったように歪んでいくものだよ。それはどんな聖人でも悪党でもきっと変わらない、暴走していくんだ」
人の心は弱い。
強い人もいるだろうけど、弱いところもある。
だから信用し切れない。
だってボクがそもそも心が強くないんだから信じられるわけがない。
「結果、闇のファイターは怪物になる」
「かいぶつ……」
「完全に力に心を食われている。あるいは自分の欲望に染まっている、そんな危険な存在なんだ。だから本来なら決して関わっちゃいけない存在だよ」
「でも、今回は狙われた。私と、ユウキも。このタイミングは偶然じゃない」
「……そうだね」
それが問題だ。
ただの犯罪者なら警察に任せるか、教会にでも連絡をすればいい。
けれど二人が、いや、あのプロフェッサーのことを考えるとボクもだろうか。
狙われていると考えるべきか。
「最低でも自衛の準備はしたほうがいいとおもう。私はまあ生命狙われるぐらいは心辺りあるけど、ユウキは多分カード狙い」
「カード?」
「ユウキちゃんの勇者王・轟……
「レガシーカードが……」
「相手の闇のカードよりも格が上なカードならその干渉を打ち破れる。
プロになって一定のタイミング。
力があると確認された時に改めて教えられたのだ。
この世には闇のカードとそれに魅入られた存在がいるのだと。
そして。
ボクたち。
「
「リタイアって、店長。もしかして今お店やってるのは」
「うん、負けちゃってね。自分のデッキが使えなくなっちゃったんだ」
正確には”あの子”がいないデッキでは力を引き出せない。
だからプロフェッサーにも負けた。
「よくそれでプロフェッサーに勝てた」
「……ウンガヨカッタヨー」
ああ! サレンちゃんがなんか怪しむような目をしてる!
信じて。
ボクが倒したんだって信じて、ちょっと運がよくてぶん回ったとかで!
……いや、まあ共鳴率なくても運がよければ理論上勝てるけど。
机上の空論だけど。
「あれ? じゃあモブさんってレガシーもってたんだっけ?」
「え」
ユウキちゃんの言葉に思わずビクついた。
「な、なんのことかなぁ?」
「いやメガバベルで黒尽くめの絶対闇ファイターっぽいのにファイトしてたみたいですけど、ピンピンしてましたし」
「え、そんなことしてたの?!」
プロフェッサーだけじゃないの!? 普夫くん!?
なにしてるんだい?!
「モブはあれだ。かなりレベルの違うおかしいやつだから、一緒にしたらだめ」
「えぇ」
「あんだけ共鳴率ないならどうせ奪われても何も変わらないぜーって、ファイトでボコした気がするし」
「えぇ……いや、うん、ありえるなぁ」
茂札くぅーん!
二人から言われもない扱い受けてるよ!
いやでも、確かにエニグマで勝ったらしいけど、メガバベルの後何度かテーブルファイトで負けたけど!
まさか闇のファイトでも? そんなことある?
……いや、彼ならやりかねない。してそう、うん。
「まあメガバベルの事件で狙われてるのか、あるいはレガシー持ちだから狙われてるのか、どっちにしろ自衛はしたほうがいい。今のところは雑魚とはいえ、強いのが出ることもある」
「デッキを持ち歩いてればいいのかな」
「私も仕事着はもってくるけど、ユウキは訓練したほうがいい。特に
「
なんかユウキちゃんの顔が真っ赤に。
……あ。ああ、あれかぁ。
「もしかして、ユウキちゃん。出せるの?
「いや、メガバベルで一回だけ……」
「そっか、ファイターとしてそんなレベルになってるんだ。八十八星座でもカードだけで出せる人は少ないのに」
「出来ればダメージを抑えるためにも人工
「うーん、伝手を当たれば補助具とかぐらいなら手に入ると思うけど、どっちにしろ使いこなす訓練はいるから……あ、そうだ」
セレンちゃんの言葉に、手を打った。
「それならピッタリな人がいる」
「ピッタリな人?」
「うん、元八十八星座でも上位の相談役だった人なんだけど……昔、レガシーカードとか
「教えるって、なにか学校先生なんですか?」
「ううん?」
「ちょっとしたカード道場の師範をやってる人だよ」
暴力は最後の選択肢に置かれているのでもちろん選ぶことが出来る
――<即断解決>