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翼果

 別れを受け止められないまま、毎日が進むので、未練たらしい三文コントを吐き捨て。縦書きを、横に直してある。そして、この文は重い。
 端的に説明すると、自殺未遂前後の手記、兼感情を吐き出して丸めて棄てた日記のような。
 補足…元夫とは週1会い、凡そ7年同居、計14年と少し。2024年末に入籍、一年待たず離婚。私は完全なる有責であり、元夫に非はない。

−−−−−−−


 貴方を、愛していた。と、言えば、嘘かもしれない。

 超高齢社会の現代を考慮すれば、私なぞ若輩者だ。然し、この年齢で、人生の約半分を共にした、その事実。それだけでも、ただそれだけのことでも、私は幸せでいられる。裏切りの引き金を引いたのは、紛れもない、自分自身である。貴方との全てを、自ら、殺してしまった。
 砂上の城。誰もが憧れるくらいの出来だった。しかし、強固でも、絶対でも、何でもなかった。そう気付いたのは、愛を蹂躙しすぎた、あの夜だった。

 眼を開いたとき、薄明かりに見えたのは、真っ白なシーツ。酸素マスク。肌触りの悪いパジャマ。知らない女性。サチュレーションメーター……外された結婚指輪。
 苦しい。苦しい、苦しい。呻きだったか、驚きだったか。声を発したら、マスクが外れかける。知らない女性は、私を制止した。
「夜ですよ。マスクを押さえて。おやすみしていて下さいね」
 女性は、看護師のようだ。
 これは困った。看護師は、苦手なのだ。坊主憎けりゃ袈裟まで憎い。仕事で、散々泣かされたから。恐怖もあり、言う事を聞いて、もう一度眠りにつく。これは、思っていたよりも薄いんだな。爪で弾けば、カンカンと薄いプラスチックの音が鳴りそうだ。仕事で見たことしかない、透明のマスクを押さえながら、ぼうっと思ったりして。

 外の明るさは分からないが、部屋は明るくなっていた。ローラーが着いている、横幅の狭い、如何にも病院に有るベッド。仰臥位の私。
 どうやら、ここは本当に病院らしい。夜は、窓際のベッドだった。暗い時間帯に、ベッドをガラガラと移動されていた記憶が、朧げに残っている。どこからどこへ動いたのか。この病院、この建物、フロアも、どんな広さなのか。所在地も、どうやって来たのかも、今が何時なのかも、よくわからない。……貴方は。貴方はどこだろうか。どうしているのだろうか。どこまで把握しているのだろうか。

 今は、分からないほうが、幸せな気がしている。いや、確実にそうだ。点滴の雫を眺めたまま、頭の中はしんとしている。ぽた、ぽた……看護師が、点滴のバッグを、ひとつ減らした。ぼんやりと考える。残ったひとつは生理食塩水かな、今までのは何かな、まるで今日の夕食を考える子供のように、何の罪の意識も無く。視線を少し下にして、針の刺された腕を見る。注射も、採血も、もちろん点滴も、大嫌いなのに、所在なく眺める。落ちていく雫に視線を戻し、秒数計算してみたり。
 起床に気付いたのか、看護師がこちらへやってきた。

 お名前を教えてください。誕生日を教えて下さい。今日は、何月何日ですか。ここに運ばれてきたことを、覚えていますか。どうして運ばれてきたか、分かりますか。……

 意識レベルの確認、質疑応答だ。日付以外、概ね答えることが出来た。出来れば、答えたくないくらい恥ずかしいことをした。自己陶酔が過ぎた、我儘だった。いくら発作的とは言え、障害故の衝動性を加味しても、十人中十人全員が、私の行動を愚かだと言うだろう。

 ドラマのようなやり取りを終えると、点滴もあり、排泄欲求が強くなった。トイレに行きたいと申し出ると、おむつをつけているので、そのままでいいと返された。薬が抜けておらず、転倒する可能性が強いと言われたのである。
 これがまた困ったことに、必死で力を入れても、うんともすんとも、全く出ないのである。話には聞いたことがあれど、本当にここまで出ないものだとは、驚愕した。その旨を伝えたところ、車椅子にて個室トイレに運ばれ、無事用を足すことが出来、紙パンツに交換してもらえた。始終、看護師は個室内で一緒だった。この日は、終日車椅子で行き、看護師は個室内で背を向けて待機していた。
 歩行器、点滴棒、フリーハンドといったように、転院までの5日間で段階的に慣らした。歩行器から点滴棒になり、看護師は個室内見守りではなくなり、終了後にナースコールを押す形になった。

 食事が配膳されてきた。壁掛け時計がナースステーションにあり、ベッドから時間が見える。メニュー、食事形態、注意事項が載っている用紙も一緒だ。貴方が伝えてくれたのか、禁ヨードと書いてある。禁魚……禁海藻類……沢山禁食が並ぶ。未だ経過観察なので、実際気を付けるべきは、昆布とひじき程度だ。最後のデートを思い出す。自殺未遂の前日、貴方と一緒に、甲状腺クリニックへ検査結果を聞きに行ったのだ。今、やるべきことは、ほぼ無い。睡眠、シャワー、トイレ、歯磨き、起こされ食事、のみだ。

 禁食の関係で、魚の代わりに、練り物ばかり提供されていた。主菜、副菜、副副菜、全て練り物の日もあり、辟易した。肉は肉で、味付けが謎めいており、ぱさつきも目立ったので、どうしようもなかった。美味しいメニューの記憶は無い。やや味覚が鈍麻になっていたこと、入院前後の出来事で食欲不振なこと、味付けが謎めいていたこと。そんなこんなで、食事は3から5割の摂取量だった。ある日の主菜は、生姜焼きと書いてあるが、1枚の薄い豚ロースに、申し訳程度の玉ねぎがあるのみで、味は全く生姜らしくなかったので、これだけ一等美味しくないメニューとして記憶に残っている。

 夕方あたりに、貴方が面会に来てくれた。どういう表情で、どんな話をすればいいのか、分からなかった。貴方は、もっと分からなかったと思う。それでも、優しくて。聞くことは、聞いたのに、全く責めないんだから。余計に、どうしたらいいのか、分からなくなって。早く帰って、ごはんを作りたい、洗濯とか掃除もしなくちゃ、でも食べてくれるだろうか、吐いたりしないだろうかって。やりたいことは沢山あっても、面会の度に不安だった。貴方が、会話をスマートフォンで録音している時点で、何も気付かないのが馬鹿すぎた。当然のように、家に帰れると思っていた。ずっと、ずっと、最後まで、貴方を傷付けてしまっていた。

  人生の半分近く、一緒にいてくれた。入籍もしたばかり。なのに、それなのに、昔から奔放だった私は、外で羽目を外していた。 ストレスがのしかかると、その行為は激しいものになり、手首を切り刻むように他人に身を委ねてきた。付き纏う罪悪感で、何度も後悔した。十代の頃から、止められなかった。売春、SNS、風俗勤務、彼奴と出会うあの店まで。手段など、厭わなかった。人と話すことが好きだったのに、元々そんな気なんて無かったのに、切れ味の良い剃刀だと気付けば、嬉々として肌に当てている。そして、切って愉しむ。気に入った剃刀があれば、切れ味が鈍るまで、失くすまで、何度も、何度も……そして、後悔する。心の平穏を失ったとき、また剃刀を探すことが、癖になっていた。 

 そんな、自傷行為代わりの性行動を繰り返した挙句、救急病棟にいる私を、最後まで責めなかった。悪くない、病気が悪いんだ、と今まで思っていたけれど、もう限界だ、と最後に母へ溢していた。病気のせいだと思えるように、言い聞かせていたのだろう。

 思い出す貴方は、すべて優しい。料理を作れば必ず美味しいと言い、どこに吸収されるのか分からない、細身な身体で、ぺろりと平らげる。洗濯や掃除、皿洗い、当然の家事すべてを、褒め労ってくれた。浮き沈みの激しい障害特性と、元の性格も起伏が人一倍激しい、そんな面倒な私と、生活を共にしてくれて。本当に起き上がれないときだけ、お皿を洗ってくれたり、洗濯物を一緒に干してくれたりして。短時間しか働けない私の仕事なのに、嬉しくて。そんな所も、大好きだった。遅すぎるけれども、貴方が私のことを責め立て、詰ってくれたほうが、面と向かってぶつかり合ったほうが、良かったのだろうか。
 しかし、伴侶は、それ以上でもそれ以下でもない。医師やカウンセラーではない。矯正が出来るのならば、とうに真人間になっているだろう。鏡に映る自分は、中学生の頃から、ずっと、ぼんやり、曇っていた。貴方が磨くと、私の満面の笑みが映る。また次第に、曇りが目立つ。自分で磨こうと、間に合わせに研磨したつもりが、余計に傷付く。もう、交換するしかない。売り場も、大きさも、具体的な情報が何もないまま、ただ、鏡に笑っていた。気付かないふりをして、やり過ごしていた。自分で付けた傷も増えて、もう限界だったんだ。貴方に、寄りかかりすぎていた。

 転院が決まる頃、貴方の代わりに、両親が面会に来た。離婚届と任意保険の名義変更に名前を書かされて、翌日、母とタクシーに乗り込んだ。転院先では、病室にいる間だけ、スマートフォンが半透明で見えて、必死で文字を打ち込んでいた。途中見えなくなったが、音声入力と読み上げ機能を駆使して、やり過ごしていた。食事の間のみ、ホールに出る。少し齧ったら、やり取りを再開するため、個室へ籠った。

 私は、貴方から復讐を受けている。貴方の友人は無償だが、私の友人を大金で雇い、協力するよう持ち込んでいる。貴方は、直接手を下さない。あくまでも傍観者。主犯格として、指揮を取るのは、あの店で出会った、最後の一滴だった彼奴。満足のいく復讐ならば、報酬として、慰謝料を返還する約束。夕方、暗がりの窓を覗くと、偵察機のドローンたちが光っている。気付けば、瞬間移動したのか見紛うことがある。景色がフェードアウトしていくと、病室の天井を眺めていたり、個室内を歩き回っている。鉄格子の中で、過量服薬をもう一度していたはずが、ベッドに座っている。古い洋館の、黴臭い地下にいたはずで、貴方が別の女性と名前を呼び合い、愛し合う姿を見せつけられたはずが、天井相手に、両手で顔を庇っている。すべて、いつの間に、病室に戻る。
 他の女性をいくつか経験して、一緒にいようと言われたあとで、すべてが終わった。幻覚も幻聴も、五感を駆使される、幻のすべて。嘘に決まってるだろと、もう二度と面を出すなと、電話越しの声まで覚えている。生々しい幻。監視カメラはこれだと、幻のなかで言われた箇所。見つめたり、触ったりした。
 後に、これらは一過性の解離による症状だと、主治医から聞いた。翌日以降は、夢と分別出来るが故に、ほぼ毎晩だろう、貴方の幻に魘されている。

 転院先で、初めて食べた食事。餃子。未だ覚えている。
 何故そこまで印象が強いのか、といえば、添えられたタレをかけても、塩水のような味と、油の風味しか感じられなかったから。肉の味も、調味料も、まだ分からなかった。ただ、口腔内を、もそもそとした固形物が、油と塩水を纏ってやってきた、そんな感覚だった。幸い、お米は美味しくて、解れて一粒一粒になる過程は気分が悪くなったが、何故か風味は分かった。

 幻がぴたりと止み、個室から相部屋になり、寂しさ半分安心半分で放心のなか、ホールに出る気を失くした。眠ると、夢に出てくる。ただ、ただ、ベッドの上でぼうっとしている。部屋に食事を配膳され、少しずつ、少しずつ、摂食していった。
 その3、4日後あたり、ホールに出られるようになった。患者同士で、会話も出来るようになった。作業療法も、絵を描いたり、音楽の日は、何故かふたりで聴いた曲をリクエストしていた。転院してから、浴びなかったシャワーも、毎日浴びるようになった。部屋の窓からは、花火のような、ちかちかと光る偵察機も消えていた。時が経つと、相部屋も二人から六人に移動した。
 凡そ一ヶ月後、再び餃子が出た。味覚が戻り、美味しい。その頃には、大体のメニューを美味しく、適量摂食することが出来た。

 そろそろ、入院前に起きたことを、言える分だけ白状しようと思う。同病者の名誉のため、なるべく誤解の無いよう伝えたいが、語弊があったら申し訳ない。
 早い話が、続いていく出来事で、生きることに嫌気が差したのだ。彼奴から連絡を断とうと伝えられたのが最後の一滴となり、衝動的・発作的に過量服薬をした。貴方という、最愛の存在が在りながら、不貞を働く時点で最低の人間だ。しかも、墓場へ持ち込めず、自分から白状して。大好きな祖母が亡くなり、己の身体にもおかしな点が見つかり、大なり小なり多々積み重なった結果が、これだ。実に、くだらない。
 少し考えれば、私の薬で死ぬには、身長体重を考慮しても、250錠くらいは必要になるはずだ。そんなことも、見失って、自分に酔ったのか。

 夜は家を絶対に空けない、外出したくないと思っていた。ところが、一度出てしまうと、枷が外れた獣のように、出るようになっていた。これも、やめていれば良かった。すべての行動に、後悔している。夜しか出会う機会のないあの店も、行くはずがなかった。もう、すべてが、遅い。
 夏も、矯正のチャンスはあった。大好きな祖母を、亡くした。余命宣告から、あっという間だった。炭水化物と塩分の過食が止まらず、かと言い体重は増えず。この時点で、医師でも、友人でも、親でも、助けてと言えば良かった。自己管理など、もはや不可能であることに、早く気付くべきだった。もう、すべてが、遅い。

 面会が可能となると、両親は弟と伴にやってきた。
 私は、驚いた。それもそうだろう。あんなにも、罵詈雑言を浴びせてきた、私を殴って去っていった弟が、やってきた。絶縁したはずの、両親が、やってきた。書いたはずの離婚届を持って…… そう、それらはすべて、夢か妄想か現実か、すべて一緒くたになっていた頃の記憶。任意保険の手続きも、勿論、していなかった。
 何度か面会があった。その都度、不穏になり、頓服を服用していた。

 医療保護入院から、任意入院に変わり、外出許可が下りた。近所の、広い公園を気に入り、よく散歩した。公園傍のコンビニで、アイスカフェラテを片手に、すっかり秋の景色になった落葉。芝生に座り、直射日光を全身で味わった。
 医療保護入院では、院の敷地内散歩のみだった。当時は、看護師同伴で、ほんの少し散歩が出来た。半袖で丁度良く、階段で膝が痛くなることも、陽射しに眩むこともあった。
 そんな、窮屈な散歩の許可が下りた時、咲きかけだった金木犀たち。公園に行ける頃には、一輪残らずアスファルトに落ちた。肌寒くなった空の下、敷地内では、薄い桃色の薔薇が、金木犀からバトンを繋ぎ、直立して咲いた。よく見掛けた猫も、目立ちやすい陽の下で伸びをしている。

 近付いてくる退院。外の自由と、貴方が居ない空虚に怯え、眠りが次第に浅くなる。急な摂食衝動で、消灯後、空腹もなく、カップ麺や煎餅の小袋を空ける。食べると、妙な安心感が、心地よさが、ゆったりと私を包み込む。
 閉鎖病棟で過ごす、最後の夜は、両親の元に帰ることが怖くて、眠れずにいた。一ヶ月半程の入院生活で、追加の睡眠薬を飲んだ夜は、三度だけだった。一度目は、解離が止まった日。二度目は、同じフロアでAEDが使われていた日。三度目は、退院前日の零時前……

 翌朝、父親の車で走る環七は、貴方と居た街がもう懐かしかった。頓服を飲んでいたのに、嫌な汗が滲んで、軽い動悸がした。涙は、出なかった。
 最初の面会の際に、母から渡された、黒いノート。誰でも知ってる、使ったことがあるメーカーの、横書きのリングタイプだ。そこに、説明を書けと。貴方は何と言って渡したのか、分からない。私達の別れは、協議離婚にレ点が入ってはいるが、実際は何も話していない。離婚の「り」の字ひとつも、会話に出ていない。互いに、まともに話せる状態ではなかった。
 あの日は、貴方の苗字で名前を記入した。その機会は、もう無い。離婚届に書く住所を、母に尋ねた。家に戻れるとは、思わない。脳内では、絶縁したはず。そして、よく分からないまま書き終えた、二枚目の離婚届。黒いノートには、次の面会まで、手が痺れる程書き殴った、三十頁にも渡る……彼奴や経緯の説明もあるが、大量の未練、反省、後悔、懺悔を書き連ね……最後に、命よりも愛おしかった、貴方を失った。他人に成り果てた。早い話が、出会う前の状態だ。どうってことはない……

 そんなはずもなく。本当は、ずっと、泣きたかった。ノートを書いているうち、気付くと、頬を伝う程度はあれど、滂沱することはなかった。有責側がこんな台詞を吐いたところで、誰も理解出来ないだろう。行動は伴えなかったけれども、大好きだった。それも含め、原因の疾患まで、転院時に主治医は見抜いていた。解離も落ち着き、感情の起伏が穏やかになった頃に、個室で色々説明と質問を受け、ある行動嗜癖の診断を下された。
 自分でも、病気を盾に、何でも許されるのは嫌だ。何を言っても、すべて言い訳扱いになる。当人の自分でも、信じたくない、受け容れられない。傍観者も、知人も、友人も、一番は家族もそうだろう。そして貴方も。
 その現実を、じっと、耐えよう、見つめていこうと思う。治療は、始まったばかりである。ようやく、ここにきて、新しい鏡に交換することが出来たのだ。笑っても、誰も喜ばないなか、顔を映すことは、とても怖い。それでも、見つめて、己で己を受け容れなくてはならないのだ。そして、誰も喜ばなくなっても、この鏡は、優しく磨いていこう。私の、心臓だから。自分を愛せるのは、最後は、自分自身しかいなくなる。それに気付いたとき、どんなに切れ味のいい剃刀も、一切が必要なくなるのだ。


 思い返せるようになった今、こうして、簡単に、記憶を辿っています。貴方が怒る、煙草の喫い殻を、数本目の前にして。
 結婚してから、いとも簡単に禁煙をしたあと、私が喫ったあとは臭いを嫌がっていましたね。甲状腺の結果のあとも、本人以上に気に掛けてくれて、禁煙を薦めた、あの日はもう数ヶ月前。今は、誰も気に掛けないので、本数が少し増えました。
 貴方を、愛していた。……というのは嘘です。貴方を、愛している。と、書き出したかったのですが、あまりにも重すぎて。未練たらしいのを、多少は隠したくて。見栄っ張りな私を、よく知っている貴方なら、苦笑いするでしょう。

 羽根のように、軽い。軽い女なのに。貴方への、断ち切れない感情、そのすべてが、重い。紅葉の翼果のように、軽いから舞って、軽いけど、重いから、落ちて。また新たな場所で、暖かな日々を待ち続けています。
 また、何もない場所で、根を張ろう、そして、誰かが見惚れて、ふと立ち止まるような、綺麗な色を出そうと……

 貴方の幻影は、長い時間の中で、薄めましょう。もう、他人なのですから。それでも、思い出や希望が、夢に出て。無意識が、意識まで包み込もうとして。無意識に支配され、病が悪化するのか。無意識に絞首され、私は死ぬのか。
 現実に抱いてしまう、一縷の望み。無駄と分かっているのに、それを捨てられないのです。


















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さざなみいんこ 記事を有料にすることは、たぶんないです。お気持ちで結構です。

コメント

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翼果|さざなみいんこ
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