ここは、魑魅魍魎が跋扈するホロウ内。生きている者を探して彷徨うエーテリアスは今、走っていた。標的を見つけて嬉々として走るその姿には、無機物的でありながら感情を感じさせるものだった。
追いかけられていたのは、1人の人間だ。額にバンダナを巻いた男。背後にエーテリアスを背負いながらもその視線は鋭く一切の絶望の色はなかった。瓦礫にまみれた半壊の建物に体を捩じ込み、身を隠そうとするも、ズボンの裾をエーテリアスの鋭利な爪が捉え、その人外の膂力でもって引っ張り出そうとしてくる。
「く……ッ!」
閃光が瞬く。自らを拘束しようとする手に向けて放たれた突撃銃の掃射だ。劈く銃声が断続的に続き、不意に止まった。カチカチと引き金を引くも銃はうんともすんとも言わなくなってしまった。男が銃をチラリと見れば、排莢口に薬莢が張り付いて詰まっているではないか。即座に銃を投げ捨て蹴りを何度も叩きつけてようやくエーテリアスも堪らず手を離した。
男はその隙を見逃すことなく建物の奥へと身を捩じ込み、そのまま走った。しばらく走ってから周りに視線を向けながら体を物陰へと隠し、体内のナノマシンを通じて通信する。
「こちらスネーク、少々トラブルがあったが合流地点に到着した。そちらは?」
ホロウは外界と隔てられた異空間だ。いかに通信技術が特異であれ、影響は避けられない。連絡が取れない可能性もあった。返事が返ってこないかもしれない。
『聞こえてるよ!そっちの状況はモニタリングもできてる、時間通りだね』
人が良さそうな明るい声が返ってきて、少しホッとした。戦場において予想外が常とはいえ、順調に行く方がいいに決まっている。
「遅刻したことはないぞ」
『そうかな?人を待たせることは多いんじゃない?』
「かもな……それで、まだそちらの姿が確認できないが、何処に?」
『ここだよ、スネーク』
通信越しではなく、耳に入ってきた声に身構えながら見れば、そこにはよく見るオレンジ色のスカーフに番号が振られたポンプ。イアスがいた。
「リン」
『驚かせちゃったかな?ごめんごめん』
居たなら先に声をかけて欲しかった、そんな意味を込めて名前を呼べば、軽い調子で謝罪が返ってきた。
『だけどついてないね、弾詰まりなんて』
先程の出来事だろう。見ていたリンがそんな風に慰めてくれたが、それを一蹴するスネークはその手の事に詳しくないリンに説明する。
「あれは、恐らく安物弾薬にあたったんだろう。炸薬の品質が悪く、上手く反動を得られず排莢不良を起こした」
『ふーん……ねぇ、前から思ってたんだけど、なんでスネークはこう、旧世代の武器に拘るの?』
その言葉に少し閉口する。リンが言っていることは正しい。旧都陥落以前には既に型落ちとなっていた火薬を使った銃及び兵器は今となっては時代遅れを通り越して骨董品だ。
「……そうだな。それを話すには少し説明がいる。まず俺は化け物の専門じゃない。人を相手にすることが大半だ。今のエーテル兵装が悪いわけじゃないが、人を相手にするには少々火力過剰で扱いづらい面がある」
長時間任務として戦場にいる事も多いスネークからすれば、便利かもしれないがその分機構が複雑で耐久性が不安視されるエーテル兵装よりも、シンプルで耐久性のある使い慣れたものを好んだのだ。リボルバー二丁持ってもジャムが怖い訳じゃないが、やはり確実性というのは変え難い価値がある。
「戦場はシビアだ。付け焼き刃は通用しない。多少火力不足であっても身に染みついたものを使う方がいい」
『なるほど……身に覚えはあるよ』
プロキシとして幾度なくホロウに関わってきたリンとしても、その感覚は理解できた。予想外の出来事に対する咄嗟の判断に、身についた経験が大きく関わっている。そうして危機を脱した事もある。とても大事な事だとリンも分かった。
「だが、ホロウについては俺よりもリン、君の方がよく知ってるはずだ。頼むぞ」
『もっちろん、そこは任せて。完璧に誘導するよ!そうだね……ホロウには様々な情報が溢れてる。エーテリアスが四肢を壁や地面に擦り付ける音、エーテルが運んでくる鼻につく嫌な匂い』
「──リン」
「視覚、嗅覚、聴覚、そういった感覚から来る情報は馬鹿にできないからね」
「リン」
あの伝説とも言えるスネークが自分を頼っている、という事実にやる気を漲らせ説明するリンに、何度か呼びかけてやっと止まった。
「分からないんだ」
『分からない?』
「音の方向も匂いもな」
『そう?だったら後は……ゲーマーとしての勘を信じて』
【ルール】
・自分の転生キャラになりきること(解釈違いを恐れるなかれ!)
・キャラ達の原作でやらない行動はできるだけ避けること
スネークもとい転生者の1人
スネークが好きすぎるあまりムーブから何までそっくり真似したガチ勢。ある意味ヴェノム。境遇含めそっくりなので実質同一人物かもしれない。