KICKS & ECHO vol.2 リアルな感情を音楽にのせて
2025.11.19 INTERVIEW

KICKS & ECHO vol.2 | upcoming artist
MUSIC PRODUCER Shintaro Yasuda

リアルな感情を音楽にのせて

世界的アーティストの楽曲を手掛ける音楽プロデューサー、Shintaro Yasuda。これまで3度のグラミー賞ノミネートの経歴を持つ彼が、どのように音楽の才能を育て、一歩を踏み出したのか。国境を越え、波紋のように大きく広がり続ける、彼の音楽の源泉を紐解く。
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何に情熱を傾け、
何が幸せで、
何が悲しいかを知ること

――Shintaro Yasudaさんは、これまで世界的なアーティストの楽曲を手掛け、3度のグラミー賞のノミネートを経験されています。音楽業界へ一歩を踏み出す、きっかけはなんだったのでしょうか。
両親の影響で、3歳の頃からクラシックピアノを習い、成長するにつれてギターやサックスなど、様々な楽器を演奏してきました。15歳の頃からはポップミュージックやHIP HOPを聴き始め、多くのジャンルに触れるようになると、地元のアーティストやグループとパフォーマンスをするようになりました。当時は趣味のような感覚だったのですが、その後クラブでパフォーマンスをするようになってから、本格的に音楽にのめり込んでいったように思います。16歳くらいから音楽プロデュースや作詞作曲を学び始め、18歳でLAの音楽学校へ通い、プロデューサーとして誰かのために音楽を作ることを決意しました。
――特にShintaroさんを刺激したのはどんなアーティストでしたか?
最初に僕に音楽を教えてくれたのは、年上のクールな従兄弟でした。彼はロックやHIP HOPなど、ジャンルレスに音楽を聴き、ギターの弾き方も教えてくれました。その頃に手に入れたアルバムは、Blink-182の『Enema of the State』、Backstreet Boysの『Millennium』、EMINEMの『The Slim Shady LP』だったのを覚えています。今思うと、ロック、ポップス、HIP HOPと全く違うジャンルでしたが、どれも自分のお金をためて買った、僕のルーツとなるアルバムです。
――その頃から、様々な音楽のジャンルに触れていたんですね。
はい。僕が育ったマイアミという土地も、ラテンやHIP HOP、カントリーなど非常に多くの音楽が混在していた場所だったからこそ、様々なジャンルに触れ、スポンジのように吸収できました。そういった環境に身を置けたことはすごく幸運だったと思います。
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――プロデューサーとなり、より影響を受けたアーティストを教えてください。
アーティストはみな、クリエイティブなプロセスへのアプローチが少しずつ異なるので、誰かひとりを挙げるのは難しいのですが、アリアナ・グランデは僕が一緒に仕事をした最初の偉大なアーティストの1人です。アリアナの活動はつねに僕を奮い立たせ、学びを与えてくれます。彼女と仕事をしたことは、僕自身をさらに高めるための大きなインスピレーションとなりました。
――直近では、GENERATIONSの白濱亜嵐さんのプロデュース曲にも参加されていましたが、どのような関係だったのでしょうか。
亜嵐とは、共通の友人を介して出会った良き友人です。僕にとって、アーティストと仕事をするときは、亜嵐とのように、自然な関係を築くことを大事にしています。そこで気が合えば合うほど、良い音楽が出来るんですよね。僕のキャリアの少なくとも80%は、世界中の様々なアーティストとの人間関係を築くことから成り立っています。それがこの仕事でもっとも好きなことのひとつです。音楽を作ることはもちろん、世界中の様々な個性や文化を持つ人々と出会い、良い友達となり、一緒に音楽を作ることが大好きです。
――アーティストを知るほどに、深い音楽が生まれていくんですね。
その通りです。まず彼らをよく知り、何に情熱を傾けているのか、何が幸せで、何が悲しいかを知ることが、彼らのための曲やサウンドを作ることの種となります
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その時に感じた喜怒哀楽を
そのまま表現する

――多くのクリエイションに関わるなかで、音楽への情熱を保ち続ける秘訣を教えてください。
秘訣かはわからないですが、あらゆる国の人々との出会いや会話、その中で知る彼らの経験すべてが異なるインスピレーションとなり、情熱への刺激になっているのだと思います。それと、東京、ソウル、LA、ニューヨークと常に異なる場所にいることも、僕自身を新鮮な状態に保ち、情熱を維持するのに役立っていると思います。
――最近ではどんなことから刺激を受けましたか?
先日、Netflixで『First Love』を観ました。本当に素晴らしい作品でものすごく感情を揺さぶられ、今までとは違うサウンドを探究したいという気持ちになりました。このように、僕が経験するすべてのことから、インスピレーションを受けています。それに、どんな種類のアートであっても、文化の違いに関わらず、感情を伴うものであれば人は何かを感じます。だからこそ、人々はエンターテイメントを通じ、国境を越え繋がっているのだと思います。
――Shintaroさんはプロデュースだけでなく、自身でも音楽活動もされていますが、“自分らしい表現”とはなんだと思いますか?
僕にとって、アーティストと仕事をするときと、自分自身の音楽を作るときとでは、考え方が異なります。なぜなら、プロデューサーとしての仕事は、彼らのストーリーを手助けすることだからです。そこに自分のサウンドや物語を入れ込む必要はありません。一方、自分自身の音楽を作るときは、その時に感じた喜怒哀楽をそのまま表現するようにしています。もちろん、プロデュースの時に、自分の経験やサウンドを使うことはありますが、何より大事なことは彼らをサポートすることです。それがどのような曲かで変わってきますが、どんなものであれ、僕は本物の感情を伝えたいと思っています。そして、誰もがその音楽に共感してくれたら嬉しいです。それが僕の目標であり、ほとんどのアーティストの目標でもあると思います。
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家に帰ると“引きこもり”です(笑)

――物事が上手く進まない時、どのように解決していますか?
音楽やアーティストの仕事自体が、すべて感情に基づいています。心地よくない、あるいは良い気分でなければ、いいアイディアは生まれません。これはただ頑張れば乗り切れるようなことではないからこそ、気分転換や、一度その場から離れて休憩することを大事にしています。
――これまで、音楽を辞めようと思ったことはありますか?
今のところ、そう思ったことはありません。これからもそうならないことを願っています。音楽の仕事は、毎日同じではないからこそ、新鮮な気持ちを保てているのかもしれません。自分の世界でバランスを見つけることは、誰にとっても最優先事項なので、精神的、肉体的、感情的に健康を保つことがなによりも大事だと考えています。
――バランスを保つためにしていることを教えて下さい。
僕はこの業界の人には珍しく、朝型なんです。5時半から6時くらいに起き、早朝にジムに行き、帰宅後のコーヒーを楽しみます。その後にどんなハードスケジュールが入っていたとしても、1日の終わりにはペースを落としてリラックスし、テレビを見たり、誰かと話したりしてから寝るようにしています。あまりにもエネルギーが必要な仕事なので、家に帰ると“引きこもり”です(笑)。そのバランスが、僕にはちょうど良いのだと思います。
――日常を大切にされているんですね。制作をする上で、Shintaroさんの自信の源となるものはなんですか?
このお仕事をしていると、素晴らしいコメントをいただくこともとても多いのですが、あまり気にしないようにしています。なぜなら、僕にとって最も重要なのは、情熱を持ち続け、音楽を創造することだからです。音楽への愛と、それを創造することへの愛が、何より自信を与えてくれているのだと思います。だから、外からの意見があまり自分の内面に入り込まないようにしているんです。もちろん、褒めてもらえることには感謝しています。
――Shintaroさんはファッションへの愛も強いとお聞きしました。そのこだわりを教えて下さい。
まず大事にしているのは“形”です。どんなアイテムでも、最初に見るのはシルエットですね。つねに快適であることも大事なので、オーバーサイズが好みです。あとは、機能的であることも重要視するポイントで、Mizunoのシューズはユニークなビジュアルのものも多いですが、1日中履いていても快適で、スタジオで歩き回ったり、音楽を作ったり、旅行の時も心地よく過ごすことができるので気に入っています。ブルータリズム建築が落とし込まれたような、ボクシーでありながら、独創的なデザインのものも大好きです。
――最後に、次に目指しているステップを教えて下さい。
可能な限り、クリエイティブであり続け、毎日、人のために曲を作り続けたいと思っています。将来的には自分自身のアーティストプロジェクトもやりたいなと考えています。そして、若い才能に、僕が経験してきたことを提供したいですね。いま、才能のある若い人たちは本当に面白いものを作っています。彼らこそが、ネクストサウンドを作っているので、僕たちはそれをフックアップすることが大事だと思っています。僕自身も若い感性を持ち続けていたいからこそ、今後も若い才能とたくさん仕事が出来たらいいなと考えています。
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PROFILE
Shintaro Yasuda
ロサンゼルスを拠点とするアジア系アメリカ人のプロデューサー兼ソングライター。これまでにアリアナ・グランデやThe Weekend、LE SSERAFIM、Backstreet Boysなどのアーティストのヒット曲をプロデュースし、3度のグラミー賞にノミネート。DJとしても活躍し、世界中の様々な大型フェスにも出演。さらにApple Musicのラジオ『Hyper House』を長年にわたりプロデュースしている。

-KICKS & ECHO by Mizuno-
アーティストやクリエイターと共に“静かな情熱”を記録し、文化としてのMizunoを育てていくカルチャープロジェクト。

Photography: Yoshitake Hamanaka
Hair & Make-up: Kaho Sumi
Interview: Kana Yoshida
Interpretation: Kana Nomura
Cooperation: Universal Music Publishing Japan
Edit: Akiko Tomita
Creative Direction: Riza Fujimoto
Production: Me&Co