第24回「私が加害者」山上被告の母親 「教会に尽くせば家が良くなると…」
安倍晋三元首相銃撃事件の第8回公判が18日、奈良地裁(田中伸一裁判長)であった。弁護側の証人として、山上徹也被告(45)=殺人や銃刀法違反などの罪で起訴=の妹がこの日から出廷。母親の信仰に翻弄(ほんろう)された家庭環境について証言を始めた。
記事の後半では、母親の証人尋問の主なやりとり、これまでの裁判のリポート動画などを掲載しています。
「今までほとんど自分の生い立ちについて話したことはない。なるべく忘れようと生きてきた」。証人尋問に応じた理由を問われるとそう述べ、「それでも今回お話ししようと思う」と語った。
母親は妹が小学1年のときに、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)に入信した。一緒に寝起きした部屋には、創始者の文鮮明(ムンソンミョン)氏と韓鶴子(ハンハクチャ)総裁の写真が掲げられ、母親は毎日朝晩に祈りを捧げていた。そうした姿は、子ども心に「受け入れられなかった」という。
やがて多額の献金が発覚し、同居の祖父は「出て行け。面倒を見切れない」と怒鳴った。「祖父は私と徹也に愛情を注いでくれた唯一の存在」だったといい、行き場のなさを感じたという。「2人で児童養護施設に逃げれば生きていける」。そう思うこともあったと証言した。
その後、家族はどうなったのか。この日、妹に先立って出廷した母親が約3時間に及ぶ尋問で語った。
母親は献金によって、被告が自衛隊に入った2002年に自己破産した。長男は大学進学を望んだがかなわず、暴力を振るうようになった。「私がよく教会に行っているのを、すごく嫌がっていた」という。
05年、自衛隊にいた被告が自殺を図った時も、母親は教団行事のため韓国にいた。すぐに帰らなかった理由を弁護人に問われ、「毎朝お祈りしたら『帰るな』と声が聞こえてきた」と説明した。
15年に長男が自殺。時折家に来ていた被告は数年後、顔を見せなくなったという。
事件はニュースで知った。「徹也がそんなことをと。初めは被害者が元首相ということに気持ちが向きませんでした」
一方、弁護人に安倍氏と教団の関係を問われると「関連はあると思っていた」。21年に安倍氏が教団の友好団体のイベントにビデオメッセージを送ったことについても、「有名な方がしてくださってよかったなと」と語った。
事件については「私が加害者」とし、「教会に尽くせば家が良くなるという思いを利用された」と教団を批判した。だが信仰は続けているといい、「自分は教義と逆のことをした」と話した。
徐々に声が小さくなった母親だが、検察官の質問を遮って「徹也は本当は優しい子です。私がちゃんと対応できていたら事件は起きなかった」と食い下がる場面もあった。退廷を待つ間も発言し、裁判官に制されながら「てっちゃん、ごめんね」と被告に語りかけた。
被告は視線を落とし、反応しなかった。
19日は妹の証人尋問の続きから始まる。
母親の証人尋問 主なやりとり
【弁護側】
――被告の祖父が1998年に亡くなってから。
長男は大学進学を強く望み、徹也は「働く」と言った。(経済状況は)切迫していた。長男は不安な様子で私に暴力を振るい、2回ぐらいあばら骨を折った。徹也は止めていて、1回だけ長男を殴り、あごの骨を折った。
――被告が自衛隊に入り、2005年に自殺未遂をした時はどこに。
韓国にいた。教会の方から「命に別条はない」と言われ、帰国しなかった。
――なぜ自殺を図ったと。
そのとき聞かなかったと思う。
――深刻だとは?
身体的にはよくわからなかった。
――教団から5千万円の返金が。
自殺未遂があって夫の兄が教団に抗議した。月々40万円の返金で、私が管理していた。
――長男が15年に自殺してからの被告は。
2、3年たって家に来なくなり、連絡もなくなった。怒りのメールはあった。
――事件はどう知った。
ニュースで。信じられない思いだった。そんなことあるのかなと。
――安倍氏と教団の関係をどう考えている。
おじいさん(岸信介氏)が(教団創始者の)文鮮明(ムンソンミョン)さんと交流があった。安倍さんも関連はあると思っていた。
――安倍氏が友好団体に送ったビデオメッセージについて。
有名な方がしてくださってよかったなと。
――被告はなぜ事件を。
私が加害者だと思う。献金を黙ってしてきたし、子どもたちをほったらかして教会に尽くしたら、家が良くなると思っていた。たとえ貧しくても心が豊かになるようにするのが本来の宗教なのに、はき違えて、教団からちやほやされることに有頂天になっていた。
――献金の責任は教団にもあると?
はい。
――でも今も信仰を。
籍はあるが、実際には教会に行っていない。
――脱会について。
その方がいいと思うが、今ここでは答えられない。献金に一生懸命になって大変な間違いをした。子どもたちに尽くしていくのが本当の道筋だった。
【検察側】
――祖父は被告や兄妹をかわいがった。
よくかわいがってくれた。子どもが小さいときはお風呂によく入れてくれた。田舎に一緒に帰ると、色んなところに連れて行ってもらった。生駒(奈良県)の遊園地に連れて行ってくれたこともあった。
――子どもたちにとってお父さんの代わりのような存在。
はい。
――小学生のときの被告。
長男は目の手術をして大変だったが、徹也は非常に元気だった。どうしても真ん中は育児放棄気味。寂しかったと思う。中学時代は普通に通学して成績もよく、高校時代は応援団を一生懸命にやっていた。ただ高校生のときは祖父と私の確執が影響して、しんどかったかもしれない。
――子ども3人に信仰を強制することは。
一緒に行かないかとは言ったけど、強制は無理です。
――子どもたちに教会関係者との結婚を勧めたことは?
ありません。
――被告が一時期、大学の通信制に通ったことがあることは。
そうだったかもしれません。
――大学に行くことは反対してない。
そうです。
――1年ぐらいは月13万円を振り込んでいた。
弁護士の勉強をするということだった。
――金を渡さなくなって文句は。
ありません。
――自衛隊を辞めてからの仕事は。
契約社員をしていたのは知っています。
――21年2月ごろ、メールで「俺の仕事に口出す筋合いはない」と。
年齢が年齢なので。
――自立して生活していた。
はい。
――家に行ったことは。
はい。
――中に入ったことは。
1回だけ。
――銃のようなものは。
そんなものはなかった。
――あなたの入信や献金に安倍氏は関わっていない。
そうですね。
――殺害されてもやむを得ないと思うか。
思ってないです。
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- 【視点】
この記事の中に、「関係性のゆがみ」という被害をどのように計るのかという難しい問いがある。
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- #安倍元首相銃撃
- 【視点】
山上被告の母親は、献金すれば「教団からちやほやされ」て、有頂天になってしまったと反省の弁を述べているが、この証言は、まさに統一教会によるマインドコントロールの手法の一端を示していると言える。 ターゲットにした者を褒めて褒めて褒めまくり、高額献金をすればさらに「賛美のシャワー」を浴びせまくっていい気分にさせることで、法外な献金に疑問を持たせず、むしろ達成感や満足感を与える。と同時に、褒められ体験がさらなる献金をする動機にもなる。このようにして、いかにも強制という形はとらず、自分の意思に基づく自発的行為と思わせて、教団にとって都合のいい行為へとしむけていくのは、カルトの典型的な手口の1つだ。 統一教会に限らない。オウム真理教も信者になったばかりの者に対し、「あなたは修行の天才」「前世からの修行者」などと持ち上げ、その気にさせて深みにはまらせたり、「徳がある」「前世は高位の修行者だった」と持ち上げて多額のお布施をさせたり、というようなことをやっていた。 こんな大事件が起きた後も脱会せず、教団の手口への批判を控えている山上被告の母親の対応からは、教団の心理操作の根強さを感じる。
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- #安倍元首相銃撃
安倍晋三元首相銃撃事件
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