「クマが柴犬くわえ…」AIフェイク動画“投稿者”が負う「罪」の重さ 人身被害“過去最悪”の中、広がる不安に“便乗”か?【弁護士解説】
環境省によると今年上半期(4〜8月)のツキノワグマの出没件数は2万792件で、統計がある2009年度以降、初めて2万件を突破した。 「クマが柴犬くわえ…」YouTubeにもアップされていたフェイク動画 同省は17日、10月の全国のクマによる負傷者を含む人的被害が88人に上り、今年4〜10月の合計が196人となったと発表した。過去5年間の同時期で最多で、死亡者数も12人と過去最多を更新した。加えて今月3日にも1人が死亡し、16日にもクマが原因と疑われる死亡事故が起きている。 テレビやネットニュース、SNSでも連日クマ被害が話題となっているが、この状況に乗じて、AIで生成された「現実のものではない映像」が多数拡散される問題も起きている。
「クマが自動車を襲う」虚偽のドラレコ映像も多数
10月25日、宮崎県大崎市の住宅にクマが出没し、庭で飼われていた柴犬をくわえて藪(やぶ)へ逃げ込む事件が発生した。 事件後、TikTokで「クマが柴犬くわえ逃走 どう対策」という動画が拡散。しかし映像を確認すると、画面右側や左下に、OpenAIが開発した動画生成AIモデル「Sora」のウォーターマーク(透かし)が表示されていた。 つまり、この動画は生成AIによるものであり、実際の事件映像ではない。それにもかかわらず、AI生成である事実が明示されておらず、視聴者に「本物の映像」だと誤認させる意図があった可能性がある。 実際、TikTokで「クマ 柴犬」と検索すると、同様のAI生成動画が多数投稿されているのが確認できる。また、クマが自動車を襲う様子をドライブレコーダーが捉えたかのように見えるAI動画も多く出回っている。 他にも「人間がクマにサツマイモなどで餌付けする」「制服を着た少女が子グマを抱っこする」「高齢者が怒鳴ってクマを撃退する」など、クマに関連した様々なシチュエーションの生成AI動画が投稿されている。 それらを視聴した人の一部が「実際の映像だ」と誤認している可能性は高いが、投稿者に法的な問題は生じないのだろうか。