EGGコンソールの配信中止原因がややこしい。何故MEG-DOSではなく本家MS-DOSが使われたのか

何か勘違いしている人が結構いる、というか公式からの告知が根本的に説明不足、ニュースサイトすらわかっていないのか誤解を招きそうな記事を書いてそれが混乱を招いているみたいなので解説記事を書いてみる。

事の発端はD4エンタープライズ社(D4E)が運営しているレトロPC・ゲーム機タイトルを復刻するサービス「プロジェクトEGG」のNintendo Switch向けラインナップ「EGGコンソール」にてNEC PC-9801版「フレイ」「ブランディッシュ リニューアル」が突然配信中止(既存購入者は再DL可能)したことから始まる。

D4E公式からは配信停止理由について説明は一切なされておらず、EGGコンソールで他にもSwitch向けにPC-9801タイトルを配信しているのに何故この2作品のみなのか、という疑問が沸き起こったが、考えられる理由として両作品とも"起動時にMS-DOSの起動画面が表示されており、マイクロソフト(か任天堂)の許可なくMS-DOSを組み込んだのではないか"という推測が立った。念のために言っておきますが、あくまでも推測というだけで本当にこれが原因で配信停止になったと確定したわけではないです。

そしてこれに関連して有限会社エムツー代表取締役社長である堀井直樹氏がエスピーエス社より権利を引き継いだPC-98MS-DOS互換「MEG-DOS」についても許諾をしていないことに気づく。

物凄い紛らわしいが、ある問題が発生したら別の似たような問題も発覚した、というだけで最初の問題の原因や解決方法があるのかどうかに関しては全くでていないのであしからず。

MEG-DOS無断使用に関してはプロジェクトEGG側と堀井氏の間で話し合いがあり、解決したという告知がD4E側からなされたが、この1ツイ―トだけしか告知しておらずどういった経緯でMEG-DOSを使用したのか、実際に使用したタイトルはなんなのかなど相変わらず一切記述していないので、直前で2タイトルが配信停止になったのはMEG-DOSが原因かの様に読めてしまうなど相変わらず誤解を生じさせている。というか権利物の無断利用とか本来ならば会社間でやり取りしてニュースリリースで正式にアナウンスするようなものを、正式名ではない会社名で記述し「故意ではない」と読む側に保身に走っていると否定的な印象を与えるような文をSNS上だけで公開するとか自営業かよ。

 

今の時代、MS-DOSを知らない人がいると思うので大雑把に解説すると、Windowsよりも前に発売されていたマイクロソフト社製のOSのことだ。グラフィカルな画面からの操作ではなくモノクロ画面上でキーボードからコマンドを入力し操作する古典的なインターフェース、OSの機能といっても画面上に文字を出力するかファイルの入出力を行うだけ、ユーザー自身が動かせるソフトは一つのみのシングルタスク、文字出力ではないその機種特有のグラフィックやサウンド出力を行うならそれ専用のドライバを組み込んで読みだす形にするかプログラマ自身が直接ハードウェアを弄る必要がある。NEC PC-98シリーズではこれが標準OSとなっており、現在の基準では原始的なものだが1983年発売のPC-98初代機で16bit CPU、標準メモリ128KB(MBではないです。最大でも640KB)、640*400 8色(その後4096色中16色に拡張)、マウスは標準で付属しない機種に載せられるようなOSはこれくらいしかない。

プロジェクトEGG(EGGコンソール)で配信されているタイトルは、現在のプラットフォームに直接移植したものでなく、PC-98エミュレータ上で当時のソフトを動かしているのだが、もちろん当時のソフトをそのまま持ってきているのでMS-DOS用に作られたタイトルであるならばMS-DOSもまた起動に必要になってくる。だが当時はフロッピー起動が主流で、フォーマット時にシステムファイルもコピーすればMS-DOSの起動ディスクが作れたので勘違いする人もいるかもしれないが、MS-DOSは無料ソフトではない。更にMS-DOS Ver 2.11まではソフトにバンドルしての販売が認められていたものの、その後のバージョンでは普及のため各自でMS-DOSを用意する必要になった。

動かすのに必要なソフトがない、どうすればいいのか。実は当時からある解決方法が出ていた。

HDDも普及していない時代、煩わしい手間がかかるソフトは売上に影響する可能性もあるため、一部のPCソフト会社では独自に互換DOSを作成しそれを組み込んで購入した状態のまま動かせるようにしていたのだが、その中でも有名なのが「GR-DOS」や今回話題に上がった「MEG-DOS」なのだ。

本当にMS-DOSと置き換えられるほど高性能ならOS屋にでもなっていたほうが儲かっていたんじゃ、と勘づく人もまたいるかもしれないが、実は互換OSと言ってもフロッピーから直接プログラムが起動できるだけと言った方がいい。「MEG-DOS」についてはコマンド機能などが用意されていないんでユーザーがディスク内のファイルをこれ単体で直接操作することもできない。OSは"オペレーションシステム"の略だけど、実際のところ"システム"しか存在しないので互換S単文字か。更にこのシステム部分も、HDD上のファイルを読み書きすることはできない。上記でもちょっと書いた通りHDDは普及しておらずフロッピーブート前提だったためこれでも問題なかった。本当にプログラムの起動に必要最低限な部分だけを実装し開発労力を最小限に抑えている。

オリジナル版及びプロジェクトEGG版「フレイ」でもこのMEG-DOSを組み込みフロッピーから直接起動させられるようにしていた(ブランディッシュ リニューアルは未確認)。なら何故EGGコンソールではMS-DOSになっているんだ?という疑問の答えがここにあるのかもしれない。

「フレイ」はフロッピー4枚組、「ブランディッシュ」は3枚組となっていてゲームの進行状況に合わせてフロッピーの入れ替えをする必要があったが、その煩わしさを解決したい人向けに「HDDインストール」機能にも対応していてそれを使うならMS-DOSも各自で用意してください、という形になっていたのだがゲーム機であるSwitchかつエミュ上でフロッピーイメージの切替作業をプレイヤーが行うのは問題があったのだろう、その切替作業の手間を無くすためHDDインストールという状態にしておく必要がある、すなわちMS-DOSが組み込まれた状態にしなくてはいけなかった。移植担当者の認識では、当時はフォーマットしたフロッピーにMS-DOSが入っているのは当たり前で単体市販ソフトという認識が薄かった、もしくはゲームと共に利用許可をもらっていると勘違いしてそのまま入れた。

・・・と推測したのだが、これもどうやら違うようだ。報告によるとコンソールEGG版「フレイ」は普通にディスク版だった模様。つまり、別にMS-DOSを使わなくても配信出来た。じゃあなんで使っていたの!?

 

ちなみに、PC-98用互換OSのすべてがMS-DOSの代わりにならないかと言えば現在ではそうではない。K2的に言えば「だが今は違う!」

元はPC/AT互換機用に開発されていたフリーのMS-DOS互換「FreeDOS」をPC-98向けに移植した「FreeDOS(98)」(GPL 2.0 ライセンス)などがある。これならばHDDに対応しているようだ。

仮にMS-DOSが原因だとするのならば、これを使って再配信する方が現実的になるかもしれない。まあ、これはこれでやはり手間をかけて今度こそ問題が発生しないことを確認することとなると思うので簡単とはいかないかもしれないが。