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1.美味しい悪魔と円卓の騎士
やっほー。アタシ、シェリン。今日も朝から元気にシゴトするぞーッて、目が覚めたのはいいものの。いちばん好きな匂いとダダ漏れフェロモンにやられて、〝元気に〟の意味が変わってきそう。
「ラムズ、ね。アタシ起きた」
「ん〜。シェリン、」
ラムズの鮮やかな青眼が視界に飛び込み、すぐに瞼が薄く被さった。後頭部に手を伸ばされ引き寄せられる。それから唇が重なって、頬や耳を冷たい指先で包まれ、水みたいな唾液を絡め合わせて深い口づけを交わす。──だからさ。だからサ? 襲いたくなるっつってんじゃんか?
「キスすんの? ヤるってこと?」
アタシがにんまりと唇を上げると、ラムズは表情を落としたように笑って「ヤんない」と答える。……ですよネ、わかってた。
「するつもりないならキスすんなって言ってるでしょーが」
ラムズは首を傾げ、甘く笑った。
「いいの? やめて?」
顔もイイし魔法力も高いし、なによりどんな悪魔よりもコイツのキスがいちばん〝美味しい〟。色欲値の高いアタシからすると、毎日毎時オアズケ食らっててサイアクだけど、このキスがなくなるのはもっとサイアクだ。
「だめ」
そう言い返して唇をもう一度合わせ、ラムズを組み敷くように上に被さった。貪るように唾液(まりょく)を呑み込めば、甘い舌使いで頬裏の粘膜を擽り刺激的な官能を送られる。んーま♪ ラムズとキスすんのがいちばん好き。
アタシは体を起こして彼の腰から退くと、そのまま立ち上がった。まだベッドで寝ているままのラムズがアタシの腕を引く。
「まだ眠い」
あっそ、アタシはもう眠くない。
怠惰値の高いコイツは、他人への無関心度MAX、趣味以外のやる気のなさMAX。睡眠欲も高めで、四時間以上寝ることもざらにあるとか。
アタシも三時間かそこらはほしいトコ。ま、不眠不休で生きることはできんだけどね。
「早く屋敷に帰れ。ジャマ」アタシは脚でラムズの腰を蹴り、そのままベッドから突き落とした。
蝙蝠の大きな翼がベッドの向こう側でばさばさと羽ばたくのが見える。
「骨に罅入った。起こして」
もちろん嘘。アタシより魔力量の多いラムズがこんなんで怪我をするわけないし、骨だって擬似的に模しただけでいくらでも修復できるし、というか、アンタ痛覚すらないよね。
「やーだね。セックスしてくれんなら考えてあげる」
アタシは全身をばさっと浄化魔法で洗ったあと(ちなみにこの魔法はラムズが教えてくれた)、化粧台にあったピアスを付け、頬にピンクのアイライナーでハートを二つ描く。こうするとカワイイ。
ラムズが後ろからアタシを抱きすくめて腹に腕を回し、首筋に口づけを落とす。そのままつぷっと牙が皮膚を刺し抜き、血を飲まれた。とくとくと喉が低く音を立てているのが耳元で聞こえる。
「ッッ。た、いっ。飲むな、ってば」
顔を顰めて剥がそうとするも、れ、と首筋を舐められるばかりで。「美味し」と低い声が鼓膜を揺らす。
「せめてアタシにも飲ませろ」
「嫌」
「じゃーやめろし。おまえだけだかんな、アタシの血勝手気ままに吸うヤツ」
どうにか体を引き剥がした。ラムズはご馳走様とでも言わんばかりに、ぺろと長い舌で自身の唇を舐めている。ウザ。サマになってるとこがウザイ。
冴え渡るようなプラチナの銀髪は塩梅よく跳ね、前髪がさらりと揺れる。涼やかなコバルトの眦に、ダイヤモンドをまぶしたみたいな長い睫毛が冠さる。いつ着替えたのか、さながらサファイアとブラックダイヤモンドで着飾った魔界の王子様だ。
ブルベな銀髪と、蝋を溶かしたような青白い肌、角張った黒い角、アーモンドアイを気怠げに細めた目つき──このへんはアタシも似たようなモンだけど、悪魔の中でも……いや、魔王幹部として働く高位悪魔の中でもダントツで見てくれがいい。ん、これもアタシもか♡ 誘って靡かないのはコイツだけで、アタシがそれっぽく微笑むだけで誰でも喜んで抱いて──よもや抱かれてすらくれる。
「吸われたくねえなら抵抗したら?」
ラムズはくつくつと笑い、ぱっと姿を消した。自分の屋敷に転移したんだろう。
ひとりになった空間で唇を尖らせる。できるもんなら抵抗してるっつの。ラムズの歳は五千……だっけ、アタシはまだ百を超えたところだ。
そも、ラムズには魔法やら拷問やらあれこれ教わった恩がある。本気で嫌がってるワケじゃない。ただアタシと絶対セックスしてくんないのが癪に障るだけだ。
「記憶、今日もないままか」
たいして気にしてはいないけど、アタシは生まれてから十年弱の記憶が抜け落ちている。アタシほどの悪魔ともなれば、健忘なんてものとはお目にかからないはずなのにね。
淡青のメッシュの入った銀髪を耳下で二つに結び、魔法でふわりと巻いていく。腰まで伸びた長い髪束を払う。ゆるやかにカーブする前髪を横に流して、アイシャドウを目元に飾った。コバルトからゴールドに変わるバイカラーの瞳が鏡に映り、それが細く歪に曲がった。
「んじゃ、遊んできますか♪」
今日は魔王命令でアタシが〝担当〟になっていた。
「やっほー。シェリンだよー。久しぶり、会えるの楽しみにしてた?」
足首は鎖でベッドの脚に繋がれ、両手首は後ろ手で拘束。口には猿轡が噛まされている。水色の髪を持つ女性が髪を振り仰いで必死に首を振る。
「んんっんっ! んんっ! んんんんっ!」
「ナニ言ってっか全然わかんなーい」
アハハハッと高い声で笑ってみせる。彼女は絶対に目を離さないというふうでこちらを見つめ、強く訴えかけるように必死に声を出している。
「その眼、ウザいんだよなあ。どういう感情? 嫌悪じゃないし、憎しみでもないし……。アタシなら同情引いて助けてもらえるかもって?」
くすくす笑って空中で指をつぃ、と動かし、彼女の脚の鎖を魔法で引っ張った。勢いで顔面から床に落ち、またうんうんと唸っている。
アタシは背中に馬乗りになり、女の髪を掴んで顔を上げさせると、にこりと微笑んだ。
「アーサー様? 悪魔は甘くないよ。アンタは最期までここから出られない。さ、あと何日保(も)つかな?」
たしか眼は喰っていいと言われていたはず。手始めに鉤爪で金色の目玉を抉りとって、口の中に放った。ぐちゅりと膜が潰れて粘液が舌に転がっていく。ん〜まい。さすが円卓の騎士、アーサーの称号を譲り受けただけある。聖魔力がたっぷり。
それからフォークで眼窩を掻き出すように抉って、乳房の突起は噛みちぎり、耳の中にアイスピックを突っ込んで遊んだ。
この女騎士が魔王城に囚われて三百年が経つ。いくら聖魔力の加護をもらっているからって、他の騎士たちはとっくに骸だ。ま、円卓の騎士が全員死んだら魔界と地上を繋ぐ扉が完全解放されてしまう。正義感の強いこの女は、それを少しでも遅延しようと必死なのだろう。
ただ、百年前と比べると随分治癒力が落ちてしまっていた。
怪我が治りづらいなら、こっちでいいか。アタシもそのほうが好きだし。
自分の体に陰茎を付けると、女をベッドに寝かせ脚を開かせた。
「んんん゛! ん゛っ!」
大声で叫び体を捻じろうとしてるけど、アタシは魔力を込めてベッドに押し付ける。目を挟むように彼女の両瞼を人差し指と中指で引っ張り見開かせ、眼球に媚薬の雫をぽつぽつと垂らしていく。女は悲鳴を上げてばたばたと手足を動かし、金属音が煩く鳴った。手枷を外してやると、彼女は皮膚が千切れるほど目を強く擦っている。焼け付くような痒みに襲われているんだろう。笑える。
「アタシと気持ちいいコトしよーねー♪」
魔王曰く、この女はアタシに犯されるのが特別堪えるらしい。次に嫌なのはラムズだってサ。それもそのはず、彼は人を貶めるのが特別得意だから、魔王のお気に入りなのだ。
そんででも、ラムズに加虐心はないんだって。
ほとんどの悪魔は色欲を持っているからこそ、傲慢や憤怒の感情と結びついて加虐嗜好を持ち、破壊衝動を発散して生きている。もちろん、アタシもこうして人を虐めるのは全然愉しい。
『俺? 愉しいと思ったことはねえよ。宝飾品に触れたやつに拷問すんのはちと気が紛れるが。そんくらい』
『じゃあアーサーをあんな虐め抜いてんのは、宝飾品を壊された恨みがあるとか?』
『まさか。ならあんなんじゃ済まねえだろ』
アレ以上があんだ。コッワー。
アタシたち悪魔は、七つの大罪と呼ばれる七項目で感情が振り分けられている。
傲慢、強欲、色欲、嫉妬、暴食、憤怒、怠惰。
ラムズは傲慢値が平均以上、つまり利己主義傾向が高め。アタシも似たり寄ったり。強欲についてはアタシは低値だけど、ラムズは超高い。〈閾値〉を超えている。こういう悪魔は──って、この説明はあとあと。
逆にアタシは色欲値が高めだけど閾値を超えないほどなので、ギリギリサキュバスには区分されない。嫉妬はそれなり、暴食はアタシのほうが高そう(人間喰ったり魔族喰ったりってやつ)、憤怒はふたりとも低め……アタシのがちょい高い? 怠惰はもう話したとーり。
七つの大罪のうちひとつでも閾値を超えていると、魔力量が跳ね上がる。強い悪魔ってコト。ラムズは強欲、それも特別宝飾品に対して異常な執着心がある。彼の宝飾品もその服飾も、この百年二度と同じものを見たことがない。
逆に色欲はゼロ値らしい。ゼロ値ってのもまた珍しい。
「男装までしてアーサーに選ばれた女が、女に犯されて鳴いてるなんてね? カワイソ〜」
「ん゛っ! んんん゛っ!」
件の女騎士は苦悶の表情を浮かべ、強情っ張りに快感に抗おうと猿轡を噛み締めている。ピストンを押し込むたび、へこへこと腰を震わせて女が絶頂していく。
「お前、もうじき死ぬんでしょ? 人生のほとんどを悪魔に使われて、嬲られて、犯されて……超カワイソ」
「んんんん゛!」
話によると、この女は実名を伏せ、男のフリをして円卓の騎士となっていたらしい。
「グレースちゃ〜ん?」
本名で詰るとさらに嫌がるとか。ん、たしかに床の魔法円がさらに光った。
女はときおり目を合わせては、悲哀と同情を混ぜたような表情を作る。
「キんモ。もっと激しくされたいってこと?」
一頻り体を甚ぶり嬲って犯しつづけると、女は気絶してしまった。
随分やせ細った腕だ。聖魔力のおかげで年齢は変わらないくせに、皮膚がたるんで皺や染みが増えてきてしまっている。もう加護の回復が追いつかないんだろう。は、三百年も悪魔に食い物にされてたらこーなるわ。
ベッドの下には魔法円が敷いてある。この女が、悲哀や憎悪、苦痛、そして絶望を感じれば感じるほど、聖魔力が漏れだし魔法円が吸いこんでいく。この聖魔力はアタシたち悪魔の大好物であり、自身の魔力強化にも繋がる。
円卓の騎士は、魔界の扉を封じるために人間たちから選抜され、神に聖魔力の加護をもらって対抗してくる者たちだ。でも三百年前の戦いで騎士たちは現魔王に敗れ、こうして魔王城に囚われ命果てるまで聖魔力を絞り尽くされている。
よーし。犯しただけにしては十分な聖魔力が溜まったな。これならまた魔王様に褒めてもらえるかも。アタシって優秀〜。
報告を終えて魔王城廊下を歩いていると、ラムズを見つけた。腕を引っ張る。
「また褒められたよ?」
「さすが俺のシェリン」
……おまえのじゃないけどな?
ラムズが人差し指をくぃくぃと曲げて手招きする。物置きの扉を開きアタシを入れると、薄明かりで青眼を光らせ、腰を曲げて顎を掬う。
──初めてキスをしたのも、こんな場所だった。
『アーサーを上手に拷問したんだってな』
ラムズは幹部の中でいちばん魔法力が強いうえ、あの打たれ強いアーサーから(アタシは正直そうは思わない。いつも不自然に目を合わせてきて気持ち悪いだけだ)、一度の拷問で信じられないほどの量の聖魔力を引き出したという逸話がある。だから、幹部でもおいそれと手を出すヤツはいない。
アタシの記憶が消えた当初、魔王に頼まれたと言ってこの男が助けてくれた。人に聞く彼の印象は、万華鏡のように多様で、はたまた鏡のような虚像で、カメレオンのように同じ色を取らない。
ある人は冷淡でつれないと言い、ある人は親切でジョークが上手と言う。ある人は加虐欲の鬼だと笑い、ある人は自分を甘やかして溺愛してくれると話す。
いくつ仮面を持ってるの、と尋ねたら、人の数だけ、と答える。仮面の下は、と尋ねたら、そんなもんない、と言われた。
〝自己〟に執着がないらしい。ん、ちょっとわかる。相手の望む姿で振る舞うほうが、大抵人間関係は上手くいく。相手の好きな性格で、相性のいい喋り方で、──相手の望む仕草をして、望む愛し方をする。アタシも、セックスに傾倒していなければ、そうやって生きていたと思う。
『そ、上手にできた。ご褒美ちょーだい?』
扉に背を預け、アタシが悪戯げに笑いかけると、彼の首が斜めに傾いた。銀髪がさらりと滑り、片目が影に沈む。
『何がいい』
『わかってるくせに』
少しだけな、と甘く掠れた声が、煙みたいに耳へ溶け込む。ラムズは扉に肘をついて、逃げ場を塞ぐように腰を沈めた。彼の影がアタシを覆い隠し、近づく青い瞳に引きずり込まれてしまいそうで。
『キスだけ? つまんないよ』
数ミリ残して、彼が止まった。
『気に入るよ。──ほら、お喋りはお終い』
冷たい息が上唇を撫でる。
サキュバス並みにヤってるアタシが? 言い返そうとする唇は蓋をされた。
柔舌が割り入って、アタシのソレを包んではつつき食んで重なる。滑らかな唾液が入り込み、ぴく、と体が反応した。ラムズがさらに体重をかけて耳頬を包みキスをして、長い舌が喉奥へ直接落とすように甘美な魔力を注ぎ込んだ。
……本当だった、とろとろと頬裏をなぞられ染み込んでいくたびに、甘い疼きが連鎖して腰が抜けそうになる。
聖魔力とはまた違ったベクトルで、魔力濃度の高い悪魔の魔力──体液や肉体は美味しい。でも高位悪魔の中でも、特別ラムズは美味しかった。
「今日こそシたくなった?」
「まさか」
キスが終わると打って変わって気怠げに放り、こつこつとヒールの音を立てて去っていく。ちぇ、つまんないの。
アタシの魔力だって他の悪魔には好評なのだ。他の悪魔や魔族と少し味が違うんだって。もちろん顔もキレイでカワイくて、プロポーションは抜群、声や反応も完璧と来た。アイツは何をそう拘ってるワケ?
そのうえいっそう業腹なのが、アタシ以外の悪魔とは平気で体を重ねているコト。
「なーんでアタシにだけ抱かしてくんないかなー。毎日ベッドには来るくせに」
ラムズもアタシの匂いが好きらしい(これも、それほど魔力相性がイイってコト)。自分が眠りたいときは必ずアタシをベッドに連れ込もうとする。……んで、手は出さない。
サイアクだよね? 悪魔として、男として終わってるよね?
その日は幹部会議があった。
魔王幹部たちは、悪どい薄嗤いだったり、重たい息苦しさだったり、猛禽のように鋭い目つきだったり。それぞれ恐ろしい悪魔の毒を揃えている。
が、ラムズはひとりただ宝飾品に塗れているばかりだ。若い青薔薇のような甘いマスクに、三回に一回の会議出席率、魔王サマにはタメ口と来た。アタシ含め、怠惰値の高い悪魔が幹部に抜擢されること自体が稀なのだ。
「ならその街ごと壊したら」
ずっと黙っていたラムズが何気なく口を開き、滞っていた空気をさらりと切った。
「……いや。いくら俺たちでも、壊滅させるのに何日かかるか。より暴走化した魔族が王都に逃げ込むだろう」
「俺と魔王でやるよ。いいだろ?」
魔王サマのほうにラムズが顔を向けると、魔王は笑い、他の幹部は居心地悪そうに眉を顰めた。
「魔王様をたかが魔族の殲滅ごときに駆り出すなど……」
「そのほうが早い」
「──ラムズ、それはお前の頼みか? ひとりでは無理だから助けろと?」
魔王は首を捻り、どこか楽しげに微笑んだ。
「そう。だめ?」
「……ふ、貸しひとつだ」
──まさか性欲のないラムズを抱くワケないし。コイツらどんな関係だよ。
魔王の次に、ラムズが仲の良い悪魔はアタシのはずだ。利用価値のない魔族にベッドから蹴り落とされたら、さくっと殺してしまうだろう。怒ってないよ。小蝿を払うのと同じ原理。アタシもそーだからよぉくわかる。
彼が関心を持つのは宝飾品を貢いでくれる人だけ。つまり(おそらく)魔王様。ただ、お気に入りの魔力のアタシには多少気を許してくれてるんだろう。
虎の威はいくら借っても無駄にはならない。ラムズと仲がよければアタシに楯突く悪魔もいないし、城下街では顔が効くし、けっこう便利だ。
魔力が好きってだけでここまで〝特別扱い〟をするのも、違和感があるんだけどねー? ま、本人に問い詰めても答えないだろうし、どうでもいーや。
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夕方頃、とある男悪魔とヤったあと、城下街の酒屋で駄べっていた。
「好きなんじゃない?」
「ラムズを? んー……嫌いじゃないけど」
「いや、ラムズさんのほうもお前に執着してるとか」
悪魔は〝愛〟という感情は抱けない。どこまで行っても単なる執着で、利用で、支配欲で、愛玩で──。
アタシは悪魔らしくワンナイトを楽しむこともあれば、人間と恋愛ごっこをするのも好きだ。それも含めてアタシの色欲。だから愛してると言うのは愉しいし、言われるのも嬉しい。愛されてるような感覚も、愛してるような疑似体験も、性衝動や快感を高める好いスパイスになる。
だからラムズとそういう恋愛ごっこを楽しむのも悪くはなさそ。顔も声もイイし。
でもアイツが誰かに執着? まさか。
そのとき突然ラムズが転移してきて、アタシの隣に座っていた。正面にいた男悪魔には見向きもせず、ふわぁっとひとつ欠伸をする。
「寝よ」
「……は?」
「睡眠足りなかった」
「宝飾品見てろよ」
「睡魔が邪魔で」
知らないし、関係ないし。腕を振り払う前にラムズが男悪魔と目を合わせた。
「借りてくな」
「どーぞどーぞ」
ラムズが魔王のお気に入りだってことは悪魔同士では有名な話だ。引き止めるヤツはもちろんいない。そのまま勝手に転移して、アタシの部屋に来ていた。
「アタシ眠くないから。ひとりで寝れば? ベッドにアタシの匂いついてんじゃない」
「ああ、それいいな」
ラムズは首を傾げて薄く笑うと、アタシの首筋に鉤爪を突き立てた。真横に引き切る既のところで彼の手を止める。
「ま、って」
力強すぎ。止めんの大変だわ。
「ラムズに首掻き切られたらいくらアタシでも回復に時間かかる。それに痛い」
「ベッドに血落とせばお前の匂いになんじゃん。俺と寝なくてすむよ」
血塗れびしょびしょベッドで寝る気?
「キチガイ?」
「シェリンのアイディア」
断じて違う。寝なくてすむ代わりに激痛与えられるとか聞いてない。
首筋からとろりと流れていく銀の血液を、ラムズはアタシの後頭部を掴み仰け反らせて舐めあげる。
「っ、ん。舐めんな、って」
「もったいねえじゃん」
「おまえが切ったんでしょーが」
「ベッドに流しちゃいけねえんだろ? なら舐めとく」
どんだけ美味しいのよ。というか、匂いが好きというほど魔力を気に入ってるんだから、絶対ヤるべきなのに。
「ヤろーよ。なんで血は舐めんのにヤんないの」
「気分じゃない」
「いつになったら気分上がんの」
「いつか。近いうちに」
近いうちに、と言われたことはない。期待していいってコト?
「今は寝かせて」
「アタシ眠くない」
「仕方ねえな。寝かせてやるよ」
ラムズが魔法を使うと、緩やかに眠気が脳に染み込んでくる。倒れてくる体を抱きとめ、布団に入れられる。抱き枕のように抱きしめられて、アタシは甘やかな睡眠に潜った。