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簡易USBテスターWITRN CC1と電子負荷UL004をレビュー

購入の経緯

読者からもたらされたUSBテスターWITRN CC1情報で、取扱説明書を調べてみるとUSBケーブルの抵抗値を測るメニューについての解説があった。同じく実機メニューに表示されているのに一切記載のないWITRN C5とは大違いだ。

これだけで俄然興味が湧いてきた。しかもこのメニューを使うには、別売のUL004キットが必要とある。これは四端子接続法(ケルビン接続)で抵抗を測定するもので、先に購入したC5でも使えるという。これは入手しなければなるまい。

実はWITRN U3はあろえチェッカー2のようにUSBテスターに両端挿すだけでケーブル抵抗値を算出する機能がある。既知の内部抵抗とケーブル抵抗の電流差から抵抗を割り出す。他にも外部負荷を用意するモードもあるがこれはFNB58と変わらない。精度としてはUL004の比ではないだろう。そもそもテスターが古いため48Vに対応しておらず、その割に多機能なので値段はKM003Cと変わらない。

WITRNのUSBテスター

一体WITRNには何種類のUSBテスターがあるのだろう。とにかく多い、多過ぎる。

A A2/A2C/A2Q/A2L
U U2/U2P/U2X/U3/U3L/U3LP
C C0Q/C0+/C0s/CC1/C2/C4/C4L/C5

これ以外にもカラーバリエーション、Bluetooth、ケース素材、内蔵ADC分解能によって同じ型番でも何種類もあり購入する方が迷う。しかも公式販売はタオバオにしかなくそこですべて扱っているわけでもない。さらに日本では直接購入できないストアになっている(のちに買えるようになり、また買えなくなった)。このため割高な代行を使ったり、タオバオ内で他のベンダーを探したりアリエクで購入しなければならない。選ぶのも大変、入手も大変なユーザー泣かせのメーカーである。

タオバオで購入

C5を持っているので欲しいのはUL004単体である。タオバオのWITRN公式では900円(39.9元)になっているものの個人購入できない(注:時期により可能)。代行を使うと2,800円になってしまう。アリエクでは取扱自体を見つけられなかった。

タオバオに戻って、なぜかCC1+UL004だと買えるところをみつけた。送料込み3,744円(157元)だった。ケーブル抵抗測定に糸目はつけられない。独身の日セールで物流が込み合う前に買った。

WITRN CC1レビュー

今回おまけ購入となったテスターだがせっかくなのでレビューしておく。

WITRN公式の紹介ビデオを和訳した。おもしろいのは自らの問題点も語っているところだ。1,000円以下と言っている通り、実際にアリエクでは1個900円で買うことができた。この価格なら手軽なUSBテスターになるだろう。

一連の動作を見ておく。1画面目まで1倍速でそれ以後は5倍速にしてある。バージョンは初期のV3.2で行った。このサイズならケーブル持ち手に表示ディスプレイが付いているものの代わりに使えそうだ。

取扱説明書

機能

  • 24ピンパススルー
  • 電流、電圧、電力、方向、電力時表示
  • 急速充電プロトコル、データ線電圧表示
  • PDO表示
  • 電流、電圧、電力の最大、平均表示
  • リップル検出
  • ケーブル抵抗、ケーブル耐電流表示(要UL004)
  • FWバージョンアップ

外観と内部

サイズは約31.8x16.1x8.1mmで重さは7.4g、KM003Cが16.7gなので半分以下である。比較のため並べて撮ってみた。収納ケースがめずらしいスライド式になっている。

0.96インチIPSカラー液晶で解像度160×80ドットはかなり高精細である。インターフェイスとしてはType-Cのオスメス、ボタンは⊕,⊖の2つだけだ。外部電源をサポートしないのでテスター自体の内部抵抗27mΩを考慮する必要がある。

またCCラインにプルダウン抵抗がないため本機だけをコールドソケットに挿入しても通電しない。充電器とスマホの間に置くような場合はシンクのプルダウンがテスターを通過してソースに伝えられるので問題ない。

テスター単体で通電させるには先に紹介した拙作のアダプタや市販のOTG用として売られているものをテスターオスメスどちらかに挿入する必要がある。パススルーを謳うテスターとしては余分な抵抗をラインに接続したくなかったのだろう。

KM003Cはパススルーながらボタン長押しで抵抗印加をサポートしている。 

C5のようにネジ止め筐体ではない。KM003Cと同様に液晶側が粘着されているだけなので温めて剥がすことができる。

内部結線

24ピンパススルーを売りにしている以上、KM003Cと同等なのか調べてみた。とりあえずDP Altを含めて中継に使って大丈夫そうだ。ただ。両面D+/D-が内部で導通されているのはKM003Cと設計思想が異なる。要はケーブル裏表情報がこのテスターを通すと消えてしまう。WITRN C5と同じ結線であった。

また、あろえチェッカーではVBUSとD+/D-が点灯しないのでこのラインにダイオードコンデンサが挿入されていると思われる。純粋なパススルーではなさそうだ。

メイン画面遷移

テスターとして基本的な電圧、電流、電力、電流方向を表示する。⊖長押しで更新速度が高速・低速で切り替わる。自動回転OFF時は⊕長押しで画面表示方向を切り替える。

先の内容に加えて電力時、急速充電プロトコルが表示される。右上の赤丸と電流は容量記録モードの稼働と記録開始の下限しきい値を表す。

黄枠の充電プロトコル表示はテスター通過時の予測であり、その精度は少なくとも前回行った他機種と比べてパーフェクトであった。思わぬ伏兵現る。

容量記録モードに入っているときの経過時間とその間の最大値・平均値を表示する。目安にはなるが、スマホの充電状況を見たいときはやはりPCソフトを使って初期からフル充電までの経過をグラフ化して見るに越したことはない。

リップル計測はグラフ表示されず数値のみになる。ただし、抵抗測定を使わない人はバージョンアップによりグラフ化が可能になる。計測には正規の電子負荷を使い、充電器の出す直流精度を見ることができる。

この画面で⊖長押しで抵抗測定ページに入る。これは別項でしっかりと取り上げる。

バージョンアップ

V1.3(ホームヘルスバーバージョン)
V3.2(リップルテキスト-ケーブル抵抗-2/4方向回転オプション付き)
V6.3(リップルグラフ-2/4方向回転オプション)
V8.2(PDO拡大表示-2 / 4方向回転オプション)

V8.3(上記3.2~8.2に画面オフ機能を追加ものを同梱)

V6.x リップルグラフ V8.x PDO拡大表示

CC1はフラッシュ領域が少ないようで、あちらを立てるとこちらが立たずの模様。このため自分が使いたい機能を選んでバージョンアップしてくれという方式になっている。わたしの場合はケーブル抵抗が測れないと意味がないので出荷時V3.2ということになる。あるいはその機能はC5で実行し、PDO拡大表示に対応したものにするか。まぁ全部試せばいいのだが。画面自動回転は上下、4方向でFWを分けている。設定でいけないのかと思うがその領域さえもないのだろう。

テスターの⊖を押しながらパソコンに接続する。これでDFUモードに入るので以後の手順はC5と同じになる。当然上で紹介した通電のためのプルダウン抵抗は必要になる。

耐久性テスト

最後にCC1が36V⎓6Aに耐えるテスターだというので、同じ1,000円テスターとして紹介したATORCH CC085と勝負をしてみよう。片や240W以上に耐えるとアピールしていたなんちゃってスペックだ。WITRNはどうだろう。

41V⎓5Aを上限に数字は進まなくなってしまったが、とりあえずCC085のようにシャットダウンすることはなかった。そして40V以下で正常動作に戻る。少なくともPD 3.1 EPRの48Vは除き、28Vと36Vまでは余裕で耐えられるテスターだった。

UL004構成品

本ブログの本編はここからになる。期待としてはミリオームテスターで測るのと同じ結果になって欲しい。それが叶えば原始的なクリップを使うテスターではなく、3種のUSBケーブルをボードに挿すだけで正確なVBUS+GNDの抵抗値が表示される。

製品名 WITRN UL004
消費電力 DC電流(推奨5V⎓2A)
推定上限 USB-C 電流 8A
対応機種 U3/L/P,C4/L/P,C5,C0+,C0+Q,CC1
測定内容 ケーブル抵抗(VBUS+GND)
ジャミング防止 あり
インターフェイス USB Type-A,Type-C,Micor-B
重さ UL004:47.6g、絶縁ボード:4.8g
大きさ 119.5×32×13.3mm(UL004)
内容物 抵抗測定器 WITRN UL004 1個
絶縁ボード 1個

UL004紹介ビデオ

これもWITRN公式の紹介ビデオを和訳した。残念ながらCC1は登場しない。安全のため通電ボタンを装備にしているのにその回避方法を紹介してしまっている。CC1の中見せといいちょっと変わっている。

さらにもうひとつの改造ポイントとして、ケーブル抵抗測定機能を捨て、単なる定負荷として機能させ、リップル測定用に使う方法を紹介している。

UL004使用説明

接続順序

電源⇔絶縁ボード⇔USBテスター⇔UL004⇔USBケーブル

計測可能USBケーブル
  • USB-A to Type-Cケーブル
  • USB-A to Micro-Bケーブル
  • Type-C to Type-Cケーブル
  • Type-C to Micro-Bケーブル
使用方法
  1. USBケーブルをUL004のコネクタ2か所に挿す。
  2. 通電させたUSBテスターにUL004を挿す。
  3. UL004のボタンを押して測定を開始し、ケーブル抵抗データを取得する。
  4. ボタンを放すと測定が停止する。
注意
  • ボタンを押して測定する前にUSBケーブルを接続する。そうしないと高電圧が機器に損傷を与える可能性がある。
  • 電源には5V⎓2A以上の充電器かモバイルバッテリーを使用する。電流が不十分な場合は正常に動作しない。
  • ケーブルの接続方法はUL004裏面の接続図を参照する。

UL004外観

ケルビン接続の実行部になる。試験するUSBケーブルの片側でVBUSとGNDが短絡されている。わたしが以前行った方式と同じだ。これで基板右側にあるAかCポートのVBUSとGND両端を四端子法で測定すればいい。計測誤差を少なくするため、計測抵抗に比べて十分大きい10Ωのセメント抵抗器が配置される。

USBテスターに送り込む直下にはMOSFETがある。基板のスイッチオンで電源が供給される。VBUS,GNDで5Vの電源供給、D+,D-でケーブル両端の電圧を見るようになっている。

UL004のD+,D-を測定用に使用する関係で、電源側のD+,D-から余分な電圧がかからないように、そもそも遮断するためのボードが用意されている。Type-A専用なので、ケーブル抵抗測定のための電源は5Vオンリーになる。最低2A供給可能な電源を用意しろと言っている。供給先はAとCに分岐しているため、どちらのタイプのUSBテスターでも挿すことができる。

計測開始

それでは前回登場したC-C 78mΩとA-C 203mΩのケーブルをUL004で計測してみよう。やはり事前に端子部は両側よく清掃して行った。

ミリオームテスターで測った78mΩより大きく下がって50mΩと出た。D-の0.050V÷0.993Aで算出している。

A-Cは203mΩに対して188mΩなのでまぁ近いと言えるだろう。今回はC5を使って測定してみた。さすがに専用設計された外付けボードを使用するぐらいなので精度はいいだろう。

しかし、念のためミリオームテスターの校正チェックに購入したコンスタンタン抵抗の100mΩをAコネクタに直付けして測定してみた。138mΩなのでコネクタ自体と接触抵抗を考えるとほぼ正しいと言えるだろう。

総評

今回、USBケーブルの抵抗を正確に測定したいがためだけに一式を購入した。しかし、WITRN CC1が意外な実力者であることがわかって驚いた。CC1だけならアリエクで購入できるので、独身の日セール1個900円で追加購入させてもらった。

そういえば我がKM003Cはいつケーブル抵抗測定オプションとメニューを完成させるのだろう。

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  • TOMOCA (id:tomoca2)

    We have published the wiring diagrams for each tester. Have you seen them? The KM003C has conduction between the front and back of the D+ and the front and back of the D- inside the receptacle. In this sense, the information is not being transmitted correctly. To transmit correctly, the 24 pins must be separated. This is the only adapter that displays the voltage, current, and power.
    However, among testers, only the KM003C has a design philosophy of placing the D+/D- on one side inside the plug, which we appreciate. It goes without saying that there would be no problems even if the plug had conduction on both sides.
    I am also aware that the orientation can be determined by receiving the CC on CC1/CC2.
    Thank you for the discussion so far.

    各テスターの結線図を公開しています。ご覧になりましたか。KM003Cはレセプタクル内でD+表裏、D-表裏を導通しています。この意味では正しく情報が伝わっているわけではありません。正しく伝わるには24ピンがセパレートになっている必要があります。電圧電流電力が表示されるアダプターだけそうなっています。
    ただ、テスターではKM003Cだけがプラグ内でD+/D-を片面配置しているという設計思想のことを評価しています。プラグ内両面導通でも問題が発生しないことは当然です。
    また、CCをCC1/CC2で受けることによって向きを判定することも承知して語っています。
    今まで議論ありがとう。

  • yar

    for cable orientation detection

  • yar

    Thanks for the video with a cable testing board. Does it demonstrate that KM003C indeed doesn't have D+/D- pairs connected inside?

    As far as I understand from the USB-C specifications, the D+/D- lines are not used for cable orientation - for this purpose CC1 and CC2 lines are used.

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