アジア

2025.10.30 15:00

「ドル毀損」はトランプ最大の失敗になるおそれ 反面教師は日本

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ドナルド・トランプ米大統領がアジアを歴訪するなか、ドル安を望むトランプの意向は、たとえ表向きには議題になっていなくとも主要なテーマになっている。

クアラルンプール、東京、ソウルで、トランプのチームは関税や安全保障、米国への投資について話し合っている。だが、その裏でトランプとその側近たちが常にもくろんでいるのは、米国の産業界に有利になるように為替相場をドル安方向に進めることだ。皮肉なのは、トランプが今週訪れた国の大半はまさに、そうした人為的な通貨安には弊害が伴うことを実証していることだ。

最たる例が日本である。日本の輸出主導型成長モデルでは長年、円安が好まれてきたが、日本政府が過去25年執着してきた為替レート管理はとくに有害だった。

過度に弱い円は日本のアニマル・スピリットを再燃させるどころか、歴代政権の改革意欲を後退させた。行政の効率化、イノベーションの促進、生産性の向上、女性のエンパワーメント、東京を再びアジアの金融センターにするといった課題に対して、切迫感をもって対処する動機が薄れてしまったのだ。

1980年代、「日本株式会社」はイノベーションやリストラ(事業の再構築)、リスクテイクに積極的だったが、過去四半世紀は円安の効果で企業経営者はそうする必要性を感じにくくなった。円が下落すればするほど現状に安住できるようになり、日本の成長軌道は妨げられる。その間に、中国が世界の競争条件を一変させている。

始まりは1999年、日本銀行が初めて政策金利をゼロ近くに引き下げた時だった。2年後の2001年、日銀は世界に先駆けて量的緩和政策を導入した。量的緩和の大きな副作用のひとつが急激な円安進行だった。

2013年、日銀は量的緩和をさらに拡大し、未踏の領域に踏み込んだ。円は対ドルで30%下落し、日本の国内総生産(GDP)押し上げに寄与した。東京株式市場は急騰した。

だが、円安は日本の競争力を高めることもなければ、経済の効率性を上げることもなかった。日本を世界のスタートアップ競争に参入させることにもつながらなかった。もしタイムトラベルができるなら、2013年に戻りたいと思うかもしれない。当時の安倍晋三首相が華々しい改革プログラムを打ち出した年だ。いわゆる「アベノミクス」は、サプライサイド(供給側)の一連の改革で日本を刺激し、変革することを目指していた。

だが、それは基本的に「日本の特色あるトリクルダウン経済」とでも呼ぶべきものだった。もし安倍が初期の高い支持率、衆参両院での多数派、日本の首相として史上最長の8年近くにおよぶ在任期間を生かし、アジア2位の経済大国を再構築してくれていたら、2025年の日本株式会社は繁栄していたかもしれない。

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翻訳・編集=江戸伸禎

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2025.11.17 16:00

テクノロジーを起点に、変革をデザインする。EYストラテジー・アンド・コンサルティングの多様なプロフェッショナルが生み出す新たな価値

テクノロジーの進化がかつてないスピードで進む今、事業を成功へと導く鍵は、もはやテクノロジーの活用なしには語れない。EYストラテジー・アンド・コンサルティングには、そんな時代の変化を最前線で支え、企業の複雑な課題解決をテクノロジーの力で導くプロフェッショナルたちがいる。多様なバックグラウンドをもつメンバーたちは、どのようにして価値を生み出しているのか──その多彩な仕事の現場を取材した。


総合系コンサルティングファームの「Big 4」の一角として、世界150以上の国と地域でサービスを展開するEYストラテジー・アンド・コンサルティング(以下、EYSC)。

そのなかでもテクノロジー部門は、AI活用やDX推進など、従来のコンサルティングの枠を超えた領域で存在感を発揮している。テクノロジーとデジタルの力を駆使し、課題設定を含む戦略策定からシステム導入までワンストップで支援することで、クライアントの変革を加速させているのだ。

この部門には、多様なバックグラウンドをもつプロフェッショナルが集う。保険会社のDX推進、商社でのERP導入、グローバル企業のシステム刷新──その活躍の舞台は実に幅広い。彼らはどのようにして、企業のテクノロジー変革を支えているのか。現場のコンサルタントたちに話を聞いた

顧客企業に常駐し、課題を深掘り、DX人材の育成を伴走する

EYSCシニアマネージャーの山本恒は、SIerのエンジニアとしてキャリアをスタートさせ、コンサルタントへの転身を経て保険会社でDX推進に携わってきた。テクノロジーとコンサルティング、双方の現場を熟知する山本がEYSCにジョインしたのは、その経験を融合させ、より本質的な変革支援を実現したいという想いからだ。

現在は保険・金融分野を中心にDX推進をリードしている。最初に担当したのは大手保険会社のDX人材育成プロジェクト。クライアントのオフィスに常駐し、現場に深く入り込んで企画から運営まで伴走支援した。

山本 恒 EYストラテジー・アンド・コンサルティング シニアマネージャー
山本 恒 EYストラテジー・アンド・コンサルティング シニアマネージャー

「お客様に『DX人材を育てたい』という大きな目標はあったものの、具体的な進め方が定まっていませんでした。そこで私たちが運営の枠組みを提案し、ひとつずつ形にしていったのです。クライアントの現場に深くかかわることで初めて見えてくる課題や文化があります。その現場で“何に困っているのか”“本当に実現したいことは何か”を理解できたことは、非常に貴重な経験になりました」(山本)

この経験を通じて、事業会社が抱える構造的な課題への理解が一段と深まったという。現在は別の保険会社で、データ基盤構築やデータガバナンス整備を支援。データドリブン経営の実現に向け、プロジェクトを主導している。

「お客様はデータを活用した意思決定を目指されています。基盤を整えるだけでなく、ルールや仕組みを整備して初めて、真のデータドリブン経営は可能になります。基盤づくりをSIerに委託するだけでは“使える仕組み”にはなりません。将来のあるべき姿を描き、そこから逆算して“今なすべきこと”を明確にする――その検証と構想こそ、私たちコンサルタントの存在価値だと考えています」(山本)

エンジニアから転身、“サポートされっぱなし”の葛藤を糧に、プロフェッショナルなコンサルタントへ

シニアコンサルタントの塚田真悠は、かつてマイクロソフト製品を扱うエンジニアとしてキャリアを歩んでいた。しかし、「特定製品しか提案できない」ことにもどかしさを感じ、顧客にとってさまざまな選択肢から本当に最適なソリューションを届けたいという思いから、コンサルタントへの転身を決意した。現在はマイクロソフト製品を中心に据えつつも、それにとらわれずERP導入など幅広い領域を支援している。とはいえ、入社当初は、“コンサルタント未経験”ゆえの壁にも直面したという。

塚田真悠 EYストラテジー・アンド・コンサルティング シニアコンサルタント
塚田真悠 EYストラテジー・アンド・コンサルティング シニアコンサルタント

「仕事の進め方や考え方を理解している前提でタスクが飛んでくるので、最初は右も左も分からず戸惑いました。サポートしてもらうばかりで申し訳なく、上司の話も理解できない時期は正直つらかったです。でも、結局は真剣に向き合い続け経験を積み重ねていくことでしか乗り越えることはできません。4年経った今では、急な依頼にも暗黙の了解で動けるようになりました」(塚田)

さまざまな経験を経て、塚田は、もともとの技術力に加え、課題を構造的に捉える“提案力”を身につけたコンサルタントとして活躍している。

特に印象に残っているのが、ある食品商社へのERP導入プロジェクトだ。紙ベースの管理体制と縦割りの組織構造を抱える同社では、新しいシステム導入への不安の声も少なくなかったという。

「業務が変わることに不安を感じられていたようでした。要件定義前だったこともあり“導入後にどう変わるか”を理解いただくことが難しく、根気強く丁寧に説明し続けました。すると次第に、『その機能は便利だね』といった声が増え、理解してもらえることが徐々に増えていったのです」(塚田)

技術と人、論理と情熱。その両輪を駆使して、顧客とともに課題解決に挑む姿勢こそ、塚田の最大の強みとなっている。

グローバルの橋渡し役として、持続可能な変革を導く

米国の大学を卒業後、一橋大学大学院で学びを深めたシニアコンサルタントの常悠然は、異なる文化や価値観を行き来しながら、自らのキャリアを形成してきた。母国・中国ではテクノロジーの進化が社会の隅々まで浸透し、産業構造そのものを塗り替えつつある。そんな変化のうねりを間近に感じ、「テクノロジーが社会をどう変えるのか、その現場で自らの力を試したい」と強く思ったことが、EYSCに飛び込むきっかけとなった。

ERPシステム導入のプロジェクトでは企画立案から構想策定、要件定義に至るまでの上流工程を中心に支援。中国語・日本語・英語の三カ国語を自在に操り、グローバル本社と海外拠点の間に立ってプロジェクトを推進した。文化の違い、価値観の違い、業務プロセスの違い——それらを乗り越え、共通の目標に向かって歩むために、常は“翻訳者”であり、“橋渡し役”でもある。

常 悠然 EYストラテジー・アンド・コンサルティング シニアコンサルタント
常 悠然 EYストラテジー・アンド・コンサルティング シニアコンサルタント

「私たちは単なるシステム導入を目的にしているわけではありません。導入の先にある“持続可能な変革”を見据え、クライアントのビジネスをどう進化させるかを共に考えることを重視しています。投資額の算出、DX戦略の策定、業務プロセスの再設計など、支援の範囲は多岐にわたります」(常)

印象に残っている案件のひとつが、大手スポーツメーカーのグローバルERP刷新プロジェクトだ。世界各地の拠点で使用するコードマスターを統一する必要があり、共通基盤を整えることが急務だった。しかし現地からは「手間が増える」「自分たちの業務に合わない」といった戸惑いや懸念があがっていた。

「当初はメールでのやりとりでは理解が得られず、直接対話することにしました。現地メンバーと一人ひとり向き合い、ヘッドクォーターが目指す方針の意図や、統一がもたらす将来的な価値を丁寧に説明しました。その積み重ねによって、ようやく信頼が生まれ、プロジェクトが動き始めたのです」(常)

単なるシステム導入ではなく、組織の意識や文化までも変えていく——。常の仕事には、そうした「変革のプロセス」に寄り添う誠実さがある。グローバルとローカルをつなぐその姿勢は、EYSCが掲げる「テクノロジーによって、人と組織を前進させる」という理念を体現している。

自分の強みを発揮しながら、社会に貢献するやりがいを感じて

日本企業が厳しい競争環境のなかで持続的な成長を遂げていくために、EYSCのプロフェッショナルには、国内外の先進事例に敏感に学び、常に新たな価値を創出しながら、未来を見据えた取り組みを提案していくことが求められる。そうした高い期待に応え続けられるのは、高い志と専門性を共有する仲間の存在、幅広い業界や領域のプロジェクトに携わり自らの関心や強みを生かして挑戦できる環境、そして何より、自らの仕事が社会の発展につながっているという確かな実感があるからだろう。

「お客様をご支援することで、エンドユーザーにより良いサービスが行き渡るようになる。その先に社会全体の豊かさが広がっていくことを実感できるのが、この仕事の醍醐味です」

そう語る山本は、近年生成AIの実装支援にも力を注いでいる。

「まだ過渡期ではありますが、お客様自身も驚くほどのスピードで生成AIの活用を模索されています。そのなかで私たちは、単に技術を導入するのではなく、“何のためにAIを使うのか”という本質を共に考える立場にあります。お客様の目指す方向性と、私たちが提供できる価値を的確に重ね合わせること。それが次のフェーズの課題であり、やりがいでもあります」(山本)

一方、公共案件など新たな領域に挑戦している塚田は、さらなる成長への意欲を見せる。

「最終的には、お客様にとって最適なソリューションを提案できるようになることが目標です。そのためには多様なソリューションに触れ、現場での経験を積み重ねることが欠かせません。座学だけでは得られない“実践知”を積みながら、ゆくゆくはシステム開発のフェーズにも関わっていきたいです」(塚田)

そして、常は、今後の展望をこう語る。

「生産性向上のご支援を通して、企業の効率化や組織変革に貢献できたことが何よりのやりがいです。大手企業の変革は社会全体にも波及します。これからもグローバルとローカルをつなぐ存在として、より広い視野で価値を届けていきたいです」(常)

EYSCには、専門性も経験も異なる多様な人材が集まり、それぞれの強みを生かして輝いている。多様なプロジェクト、多様な学び、多様な挑戦。そのすべてが、コンサルタント一人ひとりの成長を後押しし、企業の未来、そして社会の進化へとつながっている。

EYストラテジー・アンド・コンサルティング テクノロジー部門
https://www.ey.com/ja_jp/services/consulting/technology-consulting


やまもと・ひとし◎金融サービステクノロジーコンサルティング(AI&データ)シニアマネージャー。保険会社のデータ基盤構築やDX推進、金融機関のデータガバナンス体制構築支援などに従事。

つかだ・まゆ◎マイクロソフトソリューション シニアコンサルタント。マイクロソフト製品を中心としたERPシステム導入支援のほか、公共案件のシステム刷新や総合食品商社におけるBPR支援などに従事。

チャン・ヨーラン◎デジタル・プラットフォーム シニアコンサルタント。日本語、英語、中国語の3カ国語を駆使し、国を跨いだグローバルでのERPシステム導入などに従事。

promoted by EYストラテジー・アンド・コンサルティング / text by Fumihiko Ohashi / photographs by Shuji Goto / edited by Akio Takashiro

国内

2025.10.30 10:30

高市首相は日本を経済危機から救えるか? 米フォーブス編集主幹も期待

高市早苗首相。2025年10月28日撮影(Andrew Harnik/Getty Images)

高市早苗首相。2025年10月28日撮影(Andrew Harnik/Getty Images)

フォーブス編集主幹のスティーブ・フォーブスは、日本が経済停滞から脱却する助けとなり得る、高市早苗首相のサッチャー流の傾向を称賛している。他方で、フォーブスは、同首相が歴代の首相と同じ方針を追求すれば失敗に終わるだろうと警告している――。

日本の新たな、そして初の女性首相は、米国や自由主義諸国全体にも打撃を与えかねない深刻な経済危機から自国を救えるのだろうか?

就任したばかりの高市早苗首相は、英国初の女性首相である故マーガレット・サッチャー元首相の熱烈な崇拝者だ。サッチャー首相就任前の英国は、激しいインフレと重い税負担にあえぐ「欧州の病人」だった。「鉄の女」と呼ばれるサッチャー首相が1979年に就任すると、90年までの11年間のうちに、英国は世界経済のけん引役へと変貌した。同首相は減税を実施し、強い力を持っていた国内の労働組合を弱体化させ、インフレを抑制。外交面でも強硬な姿勢を崩さず、ソビエト連邦との東西冷戦では西側諸国を勝利に導いた。

高市首相も同様に、中国の増大する軍事力に対抗するため、防衛費の大幅な増額を提唱している。その上で、米国との軍事的・経済的な関係強化を望んでいる。残念ながら、同首相の経済政策はこれまでの政策の延長線上にあるものが多く、自国を危険な経済停滞から脱却させることはできないだろう。

日本は長年、巨額の政府支出と増税を続けてきた。国内総生産(GDP)に占める政府債務の割合は米国のほぼ2倍に達する。1999~2024年にかけて、日本銀行はゼロ金利政策という破壊的な政策を実施してきた。政府からの強い圧力の下、金融機関は市場価値が帳簿価額を大幅に下回る国債を大量に抱え込んだ。

日本は税負担が重い。給与から差し引かれる税の合計は32%超で、米国の15.3%を大きく上回る。さらに悪いことに、所得制限もない。米国では社会保障税の所得制限は17万6100ドル(約2700万円)だ。日本の法人税率は企業の規模に応じて最大35%近くに達する。個人所得税の最高税率は45%だ。

さらに円安も進行している。それでも高市首相は、日本がこれまで繰り返してきた悪名高い景気刺激策をまたもや推進しようとしている。

サッチャー流の減税? そんなものは忘れろ。税制改正は微々たるもので、来年には法人追加課税が導入される。高市首相はサッチャー流の強硬な経済政策を採用すべきだ。

残念ながら、不可解な理由から日本の強力な財務省は減税を嫌っており、むしろ逆を好む。同省は1990年代以降、不人気な増税を強行してきた。

日本は30年以上も低迷を続けている。新首相はその原因を把握しなければならない。そして、その卓越した政治手腕を駆使し、税率の大幅な引き下げを皮切りに、サッチャー流の改革を実現させる必要がある。

日本の長年にわたる停滞への転落は、第二次世界大戦で壊滅的な被害を受けた後の1940年代後半から80年代にかけての成果とは驚くべき対照を成している。当時の日本は体系的に減税を実施し、政府支出を厳格に抑制し、健全な通貨を維持した。その結果、驚異的な成長率を達成した。80年代後半には、欧米の報道機関は日本を「止められない経済の巨人」と描写していたほどだ。

しかしその後、日本政府はその成功の方程式を放棄し、軌道から外れた。それが今日の金融・通貨の混乱を招いている。

この衰退を食い止めなければ、影響は世界中に及ぶだろう。円通貨危機は他の主要通貨にも波及する。現在、主要通貨はすべて不安定な状態にある。債券市場も混乱に陥るだろう。政府は中央銀行に、市場で売れなくなった債券を買い取らせる誘惑に駆られるだろう。これは大規模なインフレを引き起こす確実な処方箋だ。こうした危機による地政学的影響は、ロシア、中国、北朝鮮、イランをはじめとする悪質な国々にとって、政治的な天の恵みとなる。

高市首相の成功は自由主義諸国の成功となるだろう。

forbes.com 原文) 

翻訳・編集=安藤清香

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