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黒沢永紀オフィシャルブログ(旧・廃墟徒然草)

産業遺産と建築、廃墟、時空旅行、都市のほころびや不思議な景観、ノスタルジックな街角など、歴史的“感考”地を読み解く

池島炭鉱 #06 住宅棟地域1

2009-12-22 18:52:04 | 池島炭鉱
長崎県にある21世紀まで操業していた、
九州最後の炭鉱、池島炭鉱をお送りしています。
今回からは静かな眠りにつく住宅棟地域を、
ワンダーJAPAN誌の没画像を中心に、
ちょっとアップしていこうと思います。



池島と言えばこの鉱員アパート、
というくらい有名な、特殊な形をした8階建ての4棟。
池島には沢山の炭鉱アパートが今も残っていますが、
基本的には長方形のブロック型をした4階建ての建物です。
そんな中、このちょっとアールデコっぽくもある建物は、
島の一番高いところにあって、特に印象深いです。



部屋は正確には見ませんでしたが、
6帖と8帖くらいの2部屋に風呂とトイレ付きで、
住環境としては悪くなかったんだと思います。



8階建てを裏側から見たところ。
4棟ある各棟はすこしずつ離れていて、
それぞれが4階と屋上で、ブリッジで繋がっています。
4階のブリッジは丈夫そうですが、屋上は鉄板のみなので、
すでに穴が空き、渡れそうにはありません。



こちらは島の中央付近に建っている1号棟と6号棟は、
画像でもわかるように、かなり年期が入っていますが、
島内の鉱員アパートは、古いものから新しいものまで様々で、
幾度かに分けて建設されたのだと思います。
殆どの建物には2桁の番号が振られてますが、
これらは全て鉱員アパートで、
3桁になると職員用、そして130番台以降が、
高級職員のアパートです。



1号棟の門に残る錆びついた扉の向こうに、
寂しげに花が咲いていました。
庭も植物が育ち、格好の猫の遊び場になっています。





木枠サッシュの窓枠を鳴らす、
風の音だけが聞こえます。





草の沼に沈んでゆく車。







冒頭の8階建てアパートに裏には、
発進所へ通じる階段があります。
炭鉱マンは日夜ここから出勤していたんだしょうね。
「御安全に」の標語が書かれた看板を越えると、
そこからは命がけの作業場。
この場所が安堵と緊張の境界線だったのかもしれません。

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12月17日発売のvol.14号に、
池島炭鉱が特集されています。



blogにアップしていない、
選炭工場の詳細や住宅街の様子が掲載されています。
特に選炭工場は、一般では入る事の出来ない場所で、
採掘された石炭が製品になるまでの行程を伝える、
貴重な遺産だと思うので、
興味のある方は是非ご覧ください。


池島炭鉱 #05 坑外施設2

2009-12-18 23:44:22 | 池島炭鉱
長崎県にある21世紀まで操業していた、
九州最後の炭鉱、池島炭鉱をお送りしています。
前回に引き続き坑外(坑道の外にある)施設です。



坑外に縦横無尽に走る軌道の上には、
沢山の炭車が静かに停まっています。
かつては前回の記事でアップした様に、
石炭を満載したり、坑内で使う機器を載せて、
いったりきたりしていたんだと思いますが、
いまでは使われている炭車は殆どありません。



以前見学した際に、たまたまむこうから
連結した炭車を牽引する光景を見る事ができました。
画像からもわかるように、運転席の天井はかなり低く、
やはり坑道をなるべく狭く造る結果、
そのしわよせは人がかぶるんだと思います。
それにしても運転されているお2人は渋いですね。



修理中の車輛。
坑内には様々な形や色の車輛があり、
それぞれ使い分けがあるんでしょうが、
そこまで聞く事は忘れてしまいました。




坑外に眠る、高速人車の「女神号」
先頭には松島炭鉱のCIが付けられています。
こちらは、坑内見学の時に乗る人車よりは、
随分乗り心地も良さそうで、奇麗ですね。
あだ、もうこの人車が活躍する事はないのだと思うと、
残念です。



炭車修理工場で炭の車のメンテナンス。
全てが手作業で行われていました。





仕上工場(各種設備のメンテナンス的なことを行うところ)でも、
実際に作業が行われていました。
これまで、炭鉱の廃墟をいくつも見学するたびに、
その都度、仕上工場とかはどういった場所だったんだろう?
と思っていましたが、こういう場所だったのですね。



ベルトコンベアも、こうやって一つ一つ
手作業でメンテされています。




ベルトコンベアを修理していた工場の内部。(たぶん)
足付き灰皿、木製ベンチ、木枠のサッシュ、木製の机、
ストーブ、トタンの壁、ランプシェード、
どれもが炭鉱を見守り続けて来た、
時間の積み重ねを感じます。

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そして、今週池島炭鉱をアップして来たのは、
ワンダーJAPAN誌掲載のお知らせでもありました。
12月17日発売のvol.14号で、
池島炭鉱が特集されました。



ワンダーJAPAN誌は、blogにアップしていない、
選炭工場の詳細や住宅街の様子が掲載されています。
特に選炭工場は、一般では入る事の出来ない場所で、
採掘された石炭が製品になるまでの行程を伝える、
貴重な遺産だと思うので、
興味のある方は是非ご覧ください。


池島炭鉱 #04 坑外施設1

2009-12-18 00:18:36 | 池島炭鉱
長崎県にある21世紀まで操業していた、
九州最後の炭鉱、池島炭鉱をお送りしています。
今回は坑外(坑道の外にある)施設です。



坑道見学の時に乗った人車を上げ下ろしする捲座。
見学などで使われているので、
とても奇麗に手入れされています。
身長よりも大きく、太いワイヤーが巻き付いています。
昇降は、深度やスピードが分かる、
極めてアナログな計器を見ながら、
長年の勘をたよりに運転台から行います。



捲座から外へ繋がるワイヤーロープ。
この先に坑内への人車が繋がっていますが、
視認出来ない程の距離をとっています。
画像奥に見える、筒状の廊下のようなものが、
掘り出した石炭を選炭工場へ運搬するコンベア、
その奥に建つ櫓が、旧第一竪坑です。



右の真ん中にワイヤーが通る軌道は、
やがて人車へと続いています。
左側の軌道は相当歪んでいますね。
坑外にはいたるところに縦横無尽に、
軌道が張り巡らされています。



採掘した石炭を運び出す連卸坑口。
右側に写るのが石炭を運搬するコンベアです。
インドネシア語で書かれた消火器の文字が、
東南アジアからの研修者施設として使われている事を
教えてくれます。



第一竪坑の横にあった排気塔。
第一竪坑は、後年第二竪坑にメインの役割を譲り、
その後は排気竪坑として使われてきました。





鉱業所の敷地のはずれにある、
火力発電所兼海水淡水化装置跡。
操業時は、採掘した石炭で発電し、
さらに海水を淡水化して水の供給もしていた様ですが、
閉山後は閉鎖され、
現在は電力も水も外部からの供給のようです。



閉山してすぐの頃訪れた時はまだ奇麗でしたが、
今年訪れてみると、だいぶ傷みも進行している様でした。





発電所と道を挟んで海側にある、
発電で使った石炭のかすを処理する工場。
この裏手に、かつてはボタ浜が広がっていましたが、
いまではもう黒々とはしていません。
ただ、実際に浜へ降りてみると、
前回の記事でもちょっと触れた松岩と呼ばれる、
石炭になりそこねた、木の年輪等がよく分かる石が、
沢山転がっています。

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池島炭鉱 #03 模擬施設

2009-12-17 00:37:21 | 池島炭鉱
長崎県にある21世紀まで操業していた、
九州最後の炭鉱、池島炭鉱をお送りしています。
今回は見学の為に新たに造られた模擬坑道と、
鉱業所内にある模擬展示コーナーです。



坑道内の様子をコンパクトに再現した模擬坑道は、
港からほど近い、鉱業所のはずれにあります。
模擬施設の入口には石炭を満載した炭車が展示されていますが、
積まれた石炭は全部本物です。




炭車に積まれた石炭のアップ。
中央に写る、ちょっとまるっこい石炭は、
松岩(石炭になりそこねた石炭っぽい石)っぽくも見えますが、
その他は鋭角な切り口とキラキラ光る、
まさに黒いダイヤモンドですね。



模擬坑道は2つのブロックに分かれていて、
画像は第一のブロックの様子です。
曲げた鉄骨アームの間にびっしりと木を敷き詰めて、
天井の崩落を防いでいますが、
実際の坑内でも、この状態に造ってある所と、
コンクリートで完全に固めたところがあります。
その昔の炭鉱では、木だけで坑道を支えたそうですが、
崩落の危険性と隣り合わせだったと思います。



オレンジ色の機器は発破機。
その隣に並ぶ筒状のものが、ダイナマイトの見本です。
発破機のサイドの穴に発破キーを差し込み、
一回奥へ回した後、「発破ーッ!」のかけ声と共に、
キーを手前へ戻すと、発破が爆発します。
模擬坑道では、発破体験も出来ますが、
残念ながらシミュレーションで、
聴こえてくる爆発音は録音の音です。



奥のブロックは坑内の様に暗く、
様々な機器の駆動体験が出来ます。
画像はダイナマイトを埋め込む、
細長い穴をあける削岩機の体験。
刃先を壁に押し付けて、レバーを倒すと、
けたたましい音と共に、先端が壁を削って進みます。



次は、鉱業所内に造られた、模擬展示コーナー。
年内は坑道の見学が出来ますが、
年明けからは坑内見学はお休みで、
しばらくは模擬坑道と模擬展示コーナーの見学になるそうです。
画像は、坑道の記事でもアップしたロードヘッダー。
掘削してかき集め、
右側に写るベルトコンベアーへ載せるまでの作業をこなします。
画像でもわかるように、鉄骨アーチに支えられた坑道内を、
前進しながら掘削してく機器です。



手前に写るのは、形は違いますが、
これも掘削作業を行うドラムカッターです。
後方に写る白い板状のものが沢山並んでいるのが、
自走枠と呼ばれる、作業現場の天板を支え、
採掘が終わると前進して、後方の天板は崩落させ、
自然と採掘したところが埋まって行く様にする機器。
主に炭層が厚く長い距離に渡って、
広がっている場所で使われます。
ドラムカッターは炭層に向かって横移動しながら、
採掘して行くようです。



ドラムカッターの刃。
2つ前のものより更に大き刃で、
手の平より大きかったを思います。
こちらもやはり使っているとぼろぼろになるので、
定期的な交換が必要だと言うことでした。

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池島炭鉱 #02 坑道

2009-12-15 01:38:33 | 池島炭鉱
長崎県にある21世紀まで操業していた、
九州最後の炭鉱、池島炭鉱をお送りしています。
今回は炭鉱のメイン施設である坑道です。



人車に乗ってほどなく到着する最初の場所は、
海抜0mの地点です。
既にむき出しのケーブルや換気用ダクトが錯綜し、
地上とは異なるカオスの世界が始まります。



水平坑道の壁面は全面濡れていて、
海底の坑道へ入った事を実感します。
また坑内は極めて暗く、ヘッドランプを消すと、
点々と坑内を照らす蛍光灯以外は、
闇の世界が広がります。



坑内には様々な施設が造られ、
あたかも地底都市のように思えます。
坑内は極めて湿度が高く、
これでも常時換気しているのかと思うと、
海底を掘り進む事がどれだけ大変な事かと、
想像出来ます。



以前に坑内見学をした時には、
海抜-240mまで行く事が出来ましたが、
現在では海抜0m以下は水没してしまっているそうです
画像は地底深くに設置されたポンプ座。
換気と同時に、常に水もくみ出さなくてはなりません。
オレンジ色の太めの管が、
坑内の至る所にある、換気ダクトです。



更に奥へ進むと、
操業時はその先が続いていたんではないかと思われる、
坑道の跡が至る所にあります。
地底深くにはポンプ座の他にも、
坑内の捲座(坑内のトロッコを上げ下げする装置)や、
坑内貯水タンクなどもありましたが、
それら貴重な施設が全部水没してしまったのかと思うと、
とても残念です。



坑内の軌道の横にあった転轍機。
この錆び具合からも、
坑内の湿度の高さが想像出来ます。
その他、残土をかき出す機械や、坑木を運ぶ機械等、
あらゆる坑内の作業機器が、
ぼろぼろに錆び付いています。



現在でも見学出来る、
切羽(きりは:石炭を掘り出す最先端の場所)の再現展示。
壁は炭層ではありませんが、
掘削に使われるロードヘッダーは、
実際に使われていたものです。



ロードヘッダーの刃の部分。
刃と言っても炭層を掘るので、
それほど鋭くはありませんが、
逆にこの頑丈そうな刃ですらぼろぼろになるので、
常時交換していたそうです。
まるで昆虫の頭部の様ですね。



見学の最後には、
地上の管理センターと通信体験も出来ます。
坑内の見学を終えた事を無線で伝え、
地上からは、了解の応答があります。
通信用の文章が書かれた紙をお持ちなのが、
案内して下さった方です。
炭鉱マンを彷彿とさせる、
(本当は社員の方かも知れませんが)
渋い方でした。

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池島炭鉱 #01

2009-12-14 00:54:01 | 池島炭鉱
長崎県の中央部、かつて外海(そとめ)と呼ばれ、
現在は市町村合併で長崎市に編入され、その北端に位置する池島は、
21世紀まで操業していた九州最後の炭鉱でした。
閉山後はベトネムやインドネシアからの、
炭鉱従事者の為の研修施設として使われていて、
さらに近年では、以前シリーズでアップした長崎さるくの一環として、
一部見学もできるようになっています。



神之浦(こうのうら)港から約6km、フェリーで20分位の洋上に浮かぶ、
周囲がそそり立つ岸壁で囲まれた島です。
江戸時代には目付番所がおかれ、
半農半漁で成り立っていた島ですが、
炭鉱が斜陽へ向かっていた1950年代に入って、
新しく開発された、国内では後発の炭鉱です。







フェリーは島の東部に造られた池島港に発着しますが、
もともとこの位置には「鏡池」という伝説の池があり、
その一部を切り開いて港にしたそうです。
島の名前もこの池からつけられました。
港に入ると、目の前に炭鉱施設の心臓部、
選炭施設の工場群が見えて来て、ワクワクします。







フェリーの乗降客はわずかです。
かつて炭鉱が操業していた時は、
通いの職員さんや炭鉱マンの家族等、
沢山の人が乗降していたんではないかと思いますが、
今は池島に用のある人も、
殆どいなくなってしまったんでしょう。
フェリーを降りると、
ススキと同化した廃車が出迎えてくれました。







島の中央部にある池島中央会館。
宿泊もできる公民館のような施設で、
1階は受付と講堂、2階に会議室や調理室、
3階が和室の宿泊施設になっています。
施設見学の前に、まずこの講堂で概説ビデオを見たり、
見学の注意等を聞いてから出発します。







前もって頼んでおくと、
港で営業する食堂「ミナト亭」製の炭鉱弁当が出ます。
左奥に写る緑色の麺が、確かこだわしのパスタだと聞きましたが、
詳細を覚えていません。
基本、美味しいです。







食事を済ませて説明が終わると、
島の西端にある発進所へ、マイクロバスで移動します。
中央に移る高い鉄骨の塔が、
後年使われていた第二竪坑の櫓です。
すでに竪坑自体は埋められていますが、
櫓だけは池島炭鉱のシンボルとして、
今でも残っています。







発進所というのは、坑内へ入る為の準備をする所です。
見学だけなら気が楽ですが、
実際に作業をする炭鉱マン達は、
ここで気合いを入れたんだと思います。
画像は、ずっと以前に見学した時のものなので、
服装も作業着を着ていますが、
長崎さるくの見学では、作業着を着る必要はなく、
長靴とタオル、およびヘッドランプ付きのヘルメットと、
酸素吸入器を装着します。







発進所で準備が終わると、
再びマイクロバスで、坑口へ移動しますが、
その途中、第二竪坑の下を通ります。
坑口は完全にコンクリートで塞がれていますが、
その上には頑丈そうな鉄骨に囲まれた、
ケージ(竪坑を昇降するエレベーター)が残っています。
ゆっくりと見られないのは残念ですが、
それでもリアルなケージを見る事のできる、
貴重な瞬間だと思います。







坑内へは斜坑と呼ばれる斜めに掘り進んだ穴から、
人車と呼ばれる、人運搬用のトロッコに乗って入ります。
椅子は木製で固く、スペースもかなり狭めです。
膝を斜めにして座り、座席横のチェーンをかけたら、
いざ、坑内へ出発です。







耳をさくけたたましい音と共に、
暗闇の地底へと人車は滑り落ちて行きます。
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