”歌声喫茶「灯」の青春”丸山明日果・著 集英社
もちろん私は、それに青春を燃焼させたなんて世代ではないのだが、その現場での盛り上がりを伝えるニュースくらいなら子供の頃に見たことはある。
店に集まった若者たちが声を合わせ、アコーディオンなど持ったりした”歌唱リーダー”に導かれるままに、ロシア民謡やら、その時々の流行り歌など熱に浮かされたように歌い上げていた。いわゆる歌声喫茶。
昭和30年代に人々の間で熱に浮かされたように支持され、隆盛を誇った不思議な音楽運動、とでも呼びたい現象。あれは何だったのでしょうね?
ふと不思議になることがあり、また、どうやらそこで歌われていたメニューの中心に位置したのが、毎度すみません、私の偏愛するロシア民謡であったりすることもあって興味を惹かれてもいたのだった。
そんな私なのだけれど、その内幕を描いた好都合なノンフィクションを読むことが出来た。
これは、ひょんな事から自分の母が”歌声喫茶”の創立メンバーであったのを知った著者が、そんな母の青春の軌跡に興味を惹かれ、その足跡を追い、ルポをものにしようと試みる物語。
まず提示される、自らの進むべき道を探しあぐねる、若き日の懊悩の内にある著者の姿。
読み進むうち、著者自身とその母、どちらもが”わたし”なる一人称で描かれ、二人は時に区別が付かなくなったりする。これには若干の混乱を味あわされる。
が、著者は、若き母親の日々の情熱に自分を重ね合わせるようにして取材対象に迫っているので、これはこれで一つの表現と受け取るべきだろうし、実際、不思議な描き方ながらも、そこに奇妙なリアリティを創出してもいる。
そして、関係者を訪ね歩くうちに浮き彫りになって行く、高度成長期に向かって走り出した日本において、”うたごえ喫茶”なる不思議な場で燃え盛った青春の群像。いや、当時、その実際がどのようなものであったのか、これを読むだけですべて把握できるものではないけれど。
それはおそらく、戦争の暗雲が去り、やって来た”戦後”の自由な空気の中で、不器用ながらも人々が抑圧されていた人間性を回復して行くために行なった一つの通過儀礼だったのではないか。
それにはまた、そのような人々の素朴な人間性なるものが、やって来る高度成長の時代に飲み込まれ、次なる日本構築へ向けての国家揚げての作業に再編成され吸収されて行く予兆を感じ取っての、不安の叫びも含まれていた、とするのは穿ち過ぎだろうか。
時空を超えて様々な情熱が絡み合い、疾走する様を見るような、不思議なまぶしさに満ちた本だった。
読みました~♪
lunaluni様もお読みになったとは・・
全くの「想定外」~
登場人物が≪カチューシャ≫リーダーの
知り合いの方ばかりでしたので
補完説明なども聞けて大変面白く
読みました♪
あの本の中で“少年”として登場する
方が今はおじ様になって≪カチューシャ≫へ
唄いにいらしてますヨ!
次はカリーナの番・・・・
◆元ニューラテンクォーター社長
山本 信太郎著
「東京アンダーナイト」
“夜の昭和史”
ニューラテンクォーター・ストリー
廣済堂出版(1600円)
ナットキングコール、サミーデビスJr.
パティーペイジ、ザ・プラターズ、ミルスブラザーズ
きら星の如く登場・・そして
力道山が眼の前で刺された!
著名政治家、児玉機関、CIA、大物や〇ざ
次々に登場~
あまりの面白さに図書館でイッキ読み♪
◆「スロヴァキア熱」~言葉と歌と土地~石川晃弘著(海象社)1500円
ご紹介の「東京アンダーナイト」も、相当に面白そうですね。興味あるミュージシャンばかり!しかも、”あの時代の日本”が舞台とは。これはちょっと当たってみましょう。