アンジェロ・ブランデュアルディは、1950年、イタリアはミラノ郊外の町で生まれたシンガー・ソングライター。70年代のデビュー以来、数多くのアルバムをリリースしている。”イタリアのドノバン”との異名をとるが、いやいや、この説明が一番楽で簡単に彼の紹介が出来るなあ。
ヨーロッパ、およびその周辺の伝承音楽などをモチーフに、独特の牧歌的な幻想味の強い音楽世界を編み上げてゆくその手法は、確かにドノバンを連想させる。が、どちらかといえば少年時代の夢想の破片から、浮き世離れた夢の世界を作り上げるドノバンと比べると、ブランデュアルディの音楽には、同じ現実離れ系とはいえ、音楽理論的には根拠のある(?)夢想譚とも言い得る部分がないでもない。ライブアルバムでは、自身の演奏するバイオリンでアラブの民族楽器カーヌーンと競演してみたり、イタリアの民俗歌舞団をゲストに招いたりと、根の深いところを見せるブランデュアルディである。
音楽的には、やはり70年代のものが素晴らしい。その、独特の夢幻的音楽世界が大きく花開いている。その一つの到達点である、76年発表の傑作アルバム、ALLA FIERA DELL'EST が、日本盤発売が予定され、レコード番号が決まり、雑誌広告までが打たれたのに、なぜか発売が見送られてしまったのが残念でならない。そしてそのまま、いまだに彼の音楽の我が国における本格的紹介がなされていないのも、悲しい話である。
その後、80年代に至り、まあこれは私にはそう感じられた、程度のものであるが、彼の音楽にやや行き詰まりを感じさせるものが出て来た。それゆえ私は一時期彼の音楽から離れていた。
だが、90年代に入り、ヨーロッパの伝統音楽を大きく取り入れたFuturo antico三部作を発表した辺りからまた彼の音楽は面白くなってきていて、2000年発表のL'INFINITAMENTE PICCOLO などは、すっかり復調の感がある。(これは”アッシジの聖フランチェスコ”として知られる古いイタリアの宗教家をテーマにしたもので、そういえばかってドノバンも、この人物の生涯が映画化された際、主題歌、「ブラザー・サン、シスター・ムーン」を作り、歌っていたものであり、この辺の符合も面白いところだ)
どうやら、まだまだブランデュアルディの幻想世界を堪能させてもらえそうで、楽しみなことではある。
ちょっと残念なこと。70年代のジャケ写真に見られる彼のルックスは、こう言っては失礼なのだが、容貌魁偉というか、ある種不気味なものがある。痩せこけた顔の真ん中に神経質そうに大きく見開かれた目が光り、クシャクシャの長髪が天を突いている。なんだかボッシュの絵にでも出てきそうなキャラだったのだ。が、最近の彼は中年に至り、顔立ちにも落ち着きが出て、なんだかハンサムと言ってもいいような顔立ちに変化してきてしまったのである。
私は、青白き奇怪なルックスの青年が骨ばった手でギターをまさぐり歌い出すと、そこに奇跡のように心安らぐ美しい音楽が生まれ出る、そのギャップが好きだったのだが、これはちょっと残念だ。なんて、ご本人には読ませられない、ひどい話を書いてるな。
普通のおじさんになってしまって、
ちょっと残念っていう感じ、わかります。
どの人も、生きて、年とっていくから
イメージのままでは、ないんでしょうが、
そのままでいて欲しいという、ファンの心理。
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