ドナドナという、もう無理やり人を悲しくさせるような歌がある。家族同然に育てた小牛を市場に売りに行く悲しみを歌った、例の短調の悲しげでいて悲しげなあのメロディーのあの歌だ。
その歌に関して、以前出入りしていた掲示板で、ある人がこんな書き込みをしたのだった。「ドナドナの歌詞って、第2次世界大戦中、ナチスのユダヤ人強制収容所に家族を連れて行かれた人が、その事を悲しんで書いたものなんでしょう?」と。
我々は、「まさかぁ?ナチの収容所に連れて行かれた家族を、市場に売られて行く小牛になぞらえるなんて、生々し過ぎるんじゃないの?」と首をひねったのだが、確実な情報は誰も持ってはいなかった。
その話はそのまま中途半端に流れてしまったのだが、後になってなんだか気になるのでちょっと調べてみたところ、どうやらその話、本当だった可能性が出て来た。
まず、問題の歌詞を書いた作詞家はヨーロッパで生まれ育ったユダヤ人で、現実に妻子をナチのユダヤ人収容所で亡くしているという。また作曲者は、こちらはアメリカ在住のやはりユダヤ人の作曲家でショロム・セクンダ。この人はアンドリュース・シスターズのヒット曲、「ステキなあなた」の作曲をしている。あの歌のメロディ、いかにも民謡調なので、なんとなく作者不詳の伝承歌なのだろうなと想像していた私としては、そんなにメジャーな仕事をしているプロの作曲家が作った旋律と聞き、これはかなり意外だった。
大西洋を隔てて住む二人のユダヤ人が作ったこの歌、第2次世界大戦後に、建国されたばかりのイスラエルで、”音楽劇の挿入歌”に使われたのだという。音楽劇というのがよく分からない。ミュージカルのようなものか、もっと重いオペラのようなものか?
ともかく、普通には一緒に仕事をするきっかけもなかったろう二人が合作、そのような時点でそのような場所で行われた劇に使われたとなればこれは、ユダヤ人の民族意識高揚にかなり深く関わった歌なのではないかと想像される。詳しく調べれば相当なドラマがこの歌の影には潜んでいそうなのだが、まあ、私の調査力では、この辺りまでがせいぜいであった。
岩波新書から出ている「離散するユダヤ人」(小岸昭・著)などをお読みいただくと、もう少し突っ込んだことが書いてありますんで、興味を持たれた向きはご一読を。この先は単なる引用になってしまうんで、この辺で。
しかし、ユダヤのメロディって、何であんなに悲しい響きなのだろう。ドナドナといいマイムマイムといいハバナギラといい。これは、あの民族がいろいろ苦悩の歴史を歩んだからそのようなメロディを紡ぎ出すようになってしまったのか、それとも、もともとそのようなメロディを魂の真ん中に秘めている民族なのか。あるいは、こちらがそういう意識を持って接するから、彼らの旋律をそのように感じてしまうのか。まあ、そのすべてなのかも分かりませんが。
イスラエルで物悲しいというので、
シャロームという歌を連想しましたが、
ご存知ですか?
今、検索でみてみたら、
パレスチナ民謡とでてきました。
記憶ではイスラエルと思っていたんですが
間違っていたのかもしれないですね。
なんか、似た響きの曲です。