(The Original Bourbon Street Cajuns )
ここで、「なかなか生きの良いケイジャン・ミュージックの新譜を見つけたよ!」・・・とか騒いでみても「ケイジャンってなんだ?」と首をかしげるのが、まっとうな日本の音楽ファンというものです。そりゃそうだ。
まあ、アメリカ南部はルイジアナ州の辺りにフランス系アメリカ人の多く住む地域があるとお考えください。もともとあのあたりはフランスの植民地だった時期があり、ほら、「フランス国王ルイの領土」って意味ですからね、ルイジアナって地名も。
その地のフランス系住民の歴史も語れば実に奥行きの深い物語なんだけど、そこまで突っ込む余地もないし、そもそも私に説明しきる知識がない。申し訳ない。まあ、そんなフランス系アメリカ人たちのコミュミティで継承されてきた大衆音楽がケイジャン・ミュージックである、とお考えください。いかにも黒人白人、洋の東西などなど、さまざまな文化が入り乱れるアメリカ南部ルイジアナ特産の音楽と思える。
雑に説明してしまえばケイジャン、フランス語で歌われるカントリー・ミュージックなんだけど。もちろん、詳しく語れば独特のツー・ステップやワルツといったリズムや、ボタン式アコーディオンのフィーチュア、ユニークなバイオリン奏法などなど、語らねばならない特徴は多々あるのだが。いやもう、こんな説明はまだるっこしくて。とっととこのアルバムの話をしたいのだ、ケイジャン・バンド、オリジナル・バーボンストリート・ケイジャンズ の新譜、”ウェイロン&サミー ”について。
なにしろどこで普段演奏を聞かせているのか、バンド名に書かれている。有名な観光地であるニューオリンズのそのど真ん中、バーボンストリート。特に音楽マニアってわけでもない観光客が名所旧跡を見るついでにルイジアナ特有の音楽であるケイジャンが演奏されるのを”見物”する、そのような非常にベタな環境を演奏の場として選び、そこで生き抜いてきたバンドなのである、彼らは。
私ごとで恐縮だが、私も観光地のど真ん中で育ち、そこのキャバレーやホテルのクラブで、ろくに聞いちゃいない酔客相手に夜ごと音楽を奏でて何がしかの銭を受け取り、それで何十年という歳月を送ってきた老バンドマンたちを見て来ている。それどころか、楽器の奏法や音楽理論を、私は彼らから学んだ。だから、そのような環境で”バンドマンである事”が、いかにハードであるのか、容易に想像はつく。そしてバーボンストリート・ケイジャンズの面々、ジャケ写真を見るに、皆、決して若くはないのだ。
が、このアルバムに刻まれている音楽に、そのような生活の澱りはまったく感じられない。むしろ、つい最近始めて念願の楽器を手にした音楽好きの少年が、まだみずみずしい感性でもってケイジャン有名曲の演奏に取り組んでいる、そのようにしか思えない、溌剌たる演奏を聞かせているのだ。
音楽のジャンルがどうの、といった話をあっちにおいておいたとしても、こいつは奇跡みたいなもの。一曲目からポジティブなエネルギー炸裂の音群が走り抜ける。どこまでも明るく、それは決して無理やり作り上げたものではない。
最初に述べたようにケイジャンなる音楽、決してメジャーな代物ではないのだが、むしろそんな”世界の片隅”にこそ音楽の未来はあるのでは、などとあらためて考えさせられたのである。
おりしもこの2005年の秋、ニューオリンズの街は超大型ハリケーンの襲来により、甚大な被害を被った。だが大丈夫、ニューオリンズは死なない、ルイジアナは負けない。この音楽魂ある限りは。と勝手に断言させてもらおう。
演奏の質と、お客の入りとは、
全く関係なく、
時として、出演者と店の人とが
お客より多いなんてこともありますね。
セッションしている老バンドマンの
楽しそうな顔をみて、
何がしかの金で、
よしとするんだなと思ったりします。
35位ですよ。
そんな知り合いの老バンドマンたちの話も、いずれここに書いて行きたいと思っています。
今日はずっと30位代をキープでした。ご支援、ありがとうございます!