”韓流ブーム”に湧く我が国なのであって、先日もテレビのバラエティ番組でコメディアンが「いまどきのオバサンたちに受けるような美容院の名前を考えろ」なる課題に「サロン・ド・イ・ビョンホン」と答えて受けていたぞ。というかさっきスーパーに「韓流弁当」ってのが売られていたぞ。なんか、しばらく前までは「カルビ弁当」って商品名で売られていたものと内容は同じように見えたがな。
何で突然、家庭の主婦のミナサンは韓国がそんなに良くなってしまったのだろうと、ブームの発端となった「冬のソナタ」などもまったく見ていない私は不思議で仕方がないのだが。
そんな世情であるからこそ私は、「いまこそ、韓国からイ・パクサを呼ぼう!」と関係各位に大声で呼びかけたい気分なのである。痛快だろうなあ、韓国と聞いただけでオバサマたちの目がハートになってしまう今の日本に、あの素っ頓狂なポンチャク・ミュージックが鳴り渡ったら。
イ・パクサと彼の歌うポンチャク・ミュージックに説明が必要だろうか?必要だろう。でも、何年か前には何度も来日し、日本のラップグループの前座とはいえ、武道館のステージさえ踏んでいるんだけどねえ、彼は。キンチョールのテレビCMに起用さえされて、一時は彼の奇声が日本中に流れさえしたんだけど。さすがに人気者になるまでには行かなかったなあ。まあ、あのムチャクチャなキャラでは無理だけどね、ハナから。
イ・パクサのやっているポンチャクって音楽は、まあ要するにディスコミュージック化された”演歌チャンチャカチャン”みたいなものですな。チープで安易な打ち込みのリズムに乗って、あちらのヒット曲の、それもひときわ下世話な奴を選んで、メドレーで歌いまくる。当然、”高級な音楽ファン”を自認する人々からは白眼視されているみたいです、現地でも。そのかわり、オッチャンオバチャンの集まる気のおけない宴会の席では人気者だってのを韓国からのテレビ報道で見たことがあるぞ。
ひたすら調子がいいだけの音楽で、韓国の長距離トラックの運転手たちが眠気覚ましに聞いているなんて話も耳にした。くわえてイ・パクサの場合は、歌手になる前には旅行社の添乗員をしていて、観光バスのマイクを握って乗客に歌を聞かせていたのが歌手になるきっかけだったって事もあり、歌の合間に自分で”チャンチャチャラリラチャンラララ~♪”などと伴奏のフレーズも一緒に歌ってしまう”芸”を売りとしており、それがまたひときわアホらしさを倍加している。すべての権威もこけおどしも彼のその素っ頓狂な歌声の前には虚飾を剥がれ、森羅万象、皆ドタバタ(by筒井康隆)の正体を現し、崩れ去る。
ああ、なんとかイ・パクサにこの時点でスポットライトを当てる方法はないものかねえ。”微笑みの貴公子”ヨン様の笑顔の向こうで、イ・パクサの”チャンチャチャラリラチャンチャカチャ~”が快調に聞えてきてしまって、すべてぶち壊し。そんな現場を一目見てみたいんだが。
韓国ドラマは全然見ていません。というか、テレビドラマをみる習慣が無くて、テレビはお笑い番組とスポーツ中継しか見ていないんです。
イ・パクサ、いやあ、ぜひ本腰を入れて聴いていただきたいですね。彼が日本に初紹介された時は、私の周りのスキモノ連中は騒然となりました。こんなバカな音楽があったのか!と。彼のデビュー作、「新風(シンパラム)」を強力にお勧めいたします。アレが一番凄い。