”ZELVOULA by グムラン・レレ”
アジアとアフリカの文化が微妙に混交したインド洋文化圏とでも呼ぶべきサークルのアフリカ側に位置して、独特の自然誌と文化的光芒を放っている不思議の島、マダガスカル島。それに寄り添うようにして海に浮かぶ小島が、レユニオン島である。これはその島の”マロヤ”と呼ばれる音楽だそうな。
聞いてみれば、現地のポップスと呼ぶのもためらわれてしまうほど、素朴極まりない音楽。いくつかの曲ではサックスなどが入りはするものの、基本は、レレの枯れた歌声を取り囲むパーカッション群と、アフリカ臭さを濃厚に発するコーラスのみによって出来上がっている音楽である。それも、ほとんどの曲で、シンプルなメロディ・ラインをコール&レスポンス形式で歌い交わす、実にプリミティヴな構成となっている。
とはいえ、同じ打楽器のみで出来上がっている、例えばナイジェリアのフジのような迫力で聞かせる音楽ではなく、むしろのどかさ、穏やかさの印象が強い。
民謡調というよりわらべ歌風とでも言いたい、素朴すぎるメロディラインは、なぜか南米のフォルクローレなども想起してしまう、不思議な哀調をおびている。このメロディの成立に至る道筋に、当然の如く想いは向かうが、今はまだ気ままな空想を行うレベルの情報さえなし。どのような歴史を辿ってきたメロディなのだろう。
なんだかまるで田舎の村祭りの現場、それもカーニバルなどという大仰なものではなく、収穫を祝う小村のつつましい村祭りの音楽が、そのままの形でポップスに変じた、そんな気のおけない素朴な楽しさが一杯。
歌声の向こうに吹き抜ける潮風の気配も嬉しく、人間がこんなにのどかに生きる余地が、まだこの地球の片隅には残されていたのだな、などと、なんだかホッとさせられるものが伝わってくる音楽だ。