ちょっと前の日本のポップスというのか、その辺のものの歌詞というのは、「とにかく頑張れ!」みたいなものがやたら幅を利かせていたものだ。”負けないで~泣かないで~明日はきっと来るわ~あなたのために~君は一人じゃない~♪”なんてタグイですな。
情けないのは”俺たちはロックバンドだ”みたいな顔をして悪ぶっている連中まで、結構その種の歌詞を歌っていたことで、「おいおい若者よ。あんな歌詞なんてものは、ワシの若い頃には流行から一歩半遅れた服を着た、人畜無害なトッチャン坊や顔のフォークソングの連中が歌ったもんじゃよ。モーリスのギターを持ってのう。まったく、不良の音楽のプライドはどこへ行ってしもうた?」なんぞと、なんとも情けなくなってしまったものだが。
あの流行はいったいなんだったのだろうか?どこから始まって、何の需要を満たしていた?私は凄く不思議だったのだが、ああやって”頑張れソング”をありがたがって聞いている連中って、歌で「頑張れ」といわれると素直に頑張る気になるのだろうか?だったら、「頑張るな」という歌を聞かせたら頑張るのをやめるのだろうか?・・・閑話休題。と書いて、もうこの話題はやめたくなるのだが、話はまだ導入部だ。
ともかく先日もある人が、その”頑張れソング”の流行を嘆いていたのだが、その発言に対して反応あり、「いや、あなたの認識は遅れている。今のその方面の流行最先端は、いかにも頼りない感じの男の子が、”頼りない僕だけど、ずっと君を守ってあげる~”と歌うパターンなのだ」と。ははあ。いつの間にかそんな歌がナウイってことになっている。日本のポップス状況はそうなっていますか。なんだか知らないが。
そういえば。車の、”スズキ・アルト”のCMソングなんてのは、我々無関係者が日常的に接しているその流行の典型例なんでしょうな。「ずっと守ってあげたいから 君のためのアルト~♪」なんて、いかにも頼りなげに、ときどき声がひっくり返ったりしながら歌われる、あの歌。私は一度でいいから、あの歌を歌っている歌手を思い切りぶん殴ってやりたいと思っているのだが。
などというとさらに声あり。「ところがあの歌が、今日の若奥様連中に好評で、中には感動で涙を流して聞いている者もあり」と。う~~~む。そこまで行ってますか。もう、なんにも言えまへんわ。
若い頃には「泣かないで~頑張って~明日は来るわ~♪」なんて歌を聴いて育ち、長じて人の妻となり子をもうけ、”やさしいフォルム”の軽自動車とかに乗り、「君のためのアルト~♪」なんてヘロヘロ声で歌われて感動し涙する・・・君らの頭の中には、いったい何が詰まっているのだろう?
ああ、年寄りめいたことを書いてしまっているのは分かっているのだがね、とはいえ私は、今、この時勢に青春時代などを過ごさずに済んだことを神に感謝したい気分なのだ。