この作品は、ヒューゴー、ネビュラ両賞受賞、3種類の年間傑作選に選ばれており、大森望氏も、ウィリスのシリアス系の中・短編の中での最高傑作と評価されています。 ウィリスだけに、筆運びが達者で、一見、リーダビリティが高そうな印象なのですが、いやい…
シェクリイといえば、やはり「危険の報酬」にとどめを刺すとなってしまいますが、社会風刺の切っ先がすっかりなまくらとなり、ストーリーの意外性も野暮ったく煤けてしまっているにしても、古めかしくも人情味あふれる展開に、ノスタルジーを感じて、ほっこ…
海外SF短編を中心に、好みに任せて、広く浅く紹介しています。 もともと、「gooブログ」で、わしには,センス・オブ・ワンダーがないのか? とのタイトルで、2005年からぼちぼちと続けてきたのですが、「gooブログ」が運営停止になるということで、「宿主」…
巨大な地殻変動により、アパラチア山脈が隆起して出現した、標高4万メートルを超える台地に分断されてしまったアメリカを、山越えの陸路でつなぐ「トラック野郎」のお話です。 台地の登りは45度にもなる急角度。さすがに自走はできないので、大規模な歯軌…
エリンク・フランク・ラッセルといっても、ほぼほぼ忘れられた存在になっていると思います。 私もそうですが、2013年の創元の復刊フェアのラインアップの一つである、ラッセルの短編集「わたしは”無”」を買って積んでおいたのを、この正月にたまたま読んでみ…
「史記」の中でも、戦国の覇権を握らんとする秦王を暗殺すべく、燕の密命を帯びた荊軻の章は、実にドラマチックで、よく知られ、人気の高いところです。秦へと向かう荊軻が易水のほとりで悲壮な覚悟を詩句に詠むシーン、玉座の回りで繰り広げられる秦王と荊…
David Bowieがこの世を去ったのは、2016年の今日、1月10日でした。 私の住む京都には、ところどころに京都を愛したボウイの足跡が残っています。 1970年代後半、アメリカから欧州へと戻ったボウイは、「ロウ」(1977年)「英雄夢語り」(1977年)「ロジャー…
「SFマガジン」2025年2月号(第767号)は、創刊65周年記念として、オールタイム・ベストSFを発表しています。 2014年から10年ぶりとのことですが、オールドファンの私としては、その昔のオールタイムベストと比べながら、見ていきたいと思…
「人生がどんなに長くても、あるいは短くても、ものごとには一度だけでじゅうぶんすばらしいこともあるわ。おやすみなさい、わたしのスロウボート・マン。おやすみなさい」 永い時を生きる吸血鬼の女性が、ただ一人愛した男性との出会いと別れを描き、小品な…
鉱山の奥深く、わたしの足の下でゆっくりと自転しているのは、一つの惑星だった。 「こんなこと、ありえない」途方もないエネルギーが大陸サイズの岩の塊を切り出す様子に、わたしは息を呑んだ。視点はかなりの高度で—少なくとも三万メートルはあり—その光景…