■打越正行,2012年11月4日,『出稼ぎ・〈キセツ〉・違法就労――グローバリゼーションとコミュニティの依存関係』第85回日本社会学会若手企画テーマ部会(札幌学院大学).
概要
本報告は,現在の沖縄の下層若者の就労世界が,グローバリゼーションのもとでいかなる変化を遂げてきた/いるのかを詳細に記述し,その現代的意味を考察することを目的とする.そのために,ここでは沖縄の下層若者の多くが経験し,また経験していない者にも強烈な影響を与えている〈キセツ〉という就労形態に着目して,彼らが違法就労や不安定就労に積極的に就く過程の説明を試みる.
沖縄の下層若者の現在の就労環境は,「復帰」直後と比較して,より劣悪なものへと変容している.本報告ではこの変化を,沖縄の下層若者の主な就労形態が,かつての出稼ぎから〈キセツ〉へと変容していることから説明を試みる.ここで出稼ぎとは,帰沖後の生活をある程度見込める就労形態であり,〈キセツ〉とはそれを見込めない就労形態である.「キセツ行っても,人生にプラスはない」という言葉から象徴的に読み取れるように,彼らは将来の生活を見込めない〈キセツ〉よりは,失業や逮捕といったリスクを含みつつも将来の生活を見込める違法就労に積極的に向かう.またこの〈キセツ〉という就労形態の存在は,〈内地〉での就労経験のある若者はもちろん,経験のない若者にも違法就労へ方向付けたり,不安定・低賃金・危険な職種にとどまらせたりしている.ここからは現在志向を抱く日本の不安定就労に就く若者とは対照的に,未来志向を抱いて違法就労に向かう沖縄の下層若者の姿を確認できる.このようにグローバリゼーションは,資本主義の末期的現象として,沖縄の下層若者にターゲットを絞り差別的に搾取を推し進めているが,それは彼らの生きるコミュニティに支えられた現象である.その点でグローバリゼーションとコミュニティは依存関係にある.
キーワード:沖縄,〈キセツ〉,コミュニティ
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