”One String Blues”by EDDIE "ONE STRING" JONES
1メートルほどの長さの板切れ。その両端に釘を一本ずつ打ち付ける。両者の間に一本の弦を張り渡す。弦は、正規のギターの弦のようにも、たんなる針金のようにも見える。板の片側に、なにかの空き缶を一つ、くくりつける。これは弦の音を共鳴させる増幅器としての意味があるのだろう。
演奏者は弦を張った板に向かって座り、左手に空になったウィスキーの小瓶を、スチール・ギターの奏法の要領で弦に押し当て、音程の調節をする。右手には小型のしゃもじのような、おそらくは金属製のヘラを握り、そいつを弦に叩きつけるようにして奏する。
説明に問題があり、よくお分かりいただけなかったかもしれないが、これが今回の主人公、エディ・ジョーンズの使用楽器、”ワン・ストリング・ギター”である。
この、どう考えても手作りの楽器から打ち出される音塊は、当然の事ながら非常にプリミティヴなものである。普通のギターによるブルース演奏をギクシャクと模したような、ブルージーな、どす黒いフレーズが溢れ出る。それにかぶる、エディ・ジョーンズの枯れ切ったシャウト。
とても1960年の録音とは思えない、素朴過ぎる音楽である。音の響きから言えば、さらに半世紀前の録音であっても、いやそのほうが納得しやすいだろう。奴隷制度初期の古きアメリカをさらに遡り、もうすぐそこ、エディの音楽の向こうに彼らの故郷、アフリカの岸辺が見えてくる。
彼の”一弦ギター”から生み出されるのが、”普通”のブルースギター弾きたちが愛好するフレーズを模したものであること、エディのレパートリーが、”ベタ”といっていいほどブルースのスタンダードや黒人民謡からの引用であることから、エディが手作りの一弦ブルースギター弾きに徹したのは、かなり意識的な行為だったのでは?との仮説を立てることも可能なのだが・・・この骨がらみのイナたさ、”作り”じゃとても出せないだろうね。