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0(ゼロ)は自然数か否か -2- 数学基礎論の本の紹介

 数学基礎論についての良い文献があったので紹介します。
  リヒャルト・デテキント(Dedekind,Richard);渕野昌(Fuchino,Sakae 訳)
  『数とは何か そして何であるべきか(ちくま学芸文庫)』筑摩書房(2013/07/10)
  ISBN-10: 4480095470, ISBN-13: 978-4480095473
     <目次>
    訳者まえがき
    第Ⅰ部 連続性と無理数
    第Ⅱ部 数とは何かそして何であるべきか?
    付録A 前掲のモノグラフに対する説明(E.ネーター)
    付録B 集合論の基礎に関する研究1(E.ツェルメロ)
    付録C 現代の視点からの数学の基礎付け(訳者)
    訳者による解説とあとがき

 これは切断の概念で実数を構成したリヒャルト・デテキント(Richard Dedekind)の論文の翻訳で、デテキント著の第Ⅰ部と第Ⅱ部は読みやすいものではありませんが、理解を助けるための付録が充実しています。特に付録Cが論理体系入門から完全性定理、不完全性定理、そして選択公理とデテキント無限までの、ほどよくまとまった教科書になっています。これはお薦めかも知れません。とはいえ、メタ数学的証明の部分はやはり解説なしでは門外漢には理解が難しいでしょう。理解が深まったら見直すと見通しが良くなるという一種のチャートとしては最適かも知れません。また、付録C訳者による解説とあとがきには定理などの色々な意義について著者(渕野昌)kの見解が展開されており、この2つの部分だけで一冊の本と言っても過言ではありません。

 ここの「ゼロの発見」と題した項(p305-308)に、「0(ゼロ)は自然数か否か -1-」で書いた、自然数の始まりがゼロか1かという問題へのひとつの解答と呼べそうな話が書いてありました。自然数が1から始まるという考えはデテキントに由来するというのです。

----引用p305------
現代日本の数学教育に対するデテキントの負の遺産の一つに、自然数の全体を0からではなく1から始まるものとする、という扱いがあげられるだろう。
----引用終わり-----

 既に紹介したように1から始まる流儀は日本だけの特殊事情ではないので、負の遺産とすれば、それは世界中に残されていることになります。

 それはともかく、デテキントが「自然数が1から始まる」と考えた根拠は「生成のプロセスの初めにあるのは、何らかの数学的オブジェクトであって「何もない」という状態ではありえない」こともあると書かれています。一方現代集合論では空集合を出発点としているので0を始まりとする方が都合がよいのです。1を始まりとするのは「順序数としての数の把握」であり、0を始まりとするのは「基数としての自然数を考える立場」とも述べています。

 また集合論の中で自然数のモデルを作る方法として2つの流儀があり、空集合をøとおいて、
 1) ツェルメロによれば、
  ø, {ø}, {{ø}}, {{{ø}}}, ・・・・
 2) フォン・ノイマンによる現代的方法によれば、
  ø, {ø}, {ø,{ø}}, {ø,{ø},{ø,{ø}}}, ・・・・

 後者はnに当たる集合の元がちょうどn個あるので自然だと述べています。確かにそんな感じがします。
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