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ロシア軍がウクライナを449発の長距離ドローン・ミサイル攻撃、首都キーウでパトリオットが迎撃善戦

JSF軍事/生き物ライター
ウクライナ空軍より2025年11月14日迎撃戦闘の集計報告

 2025年11月14日のウクライナに対するロシア軍の長距離ドローン・ミサイル攻撃は合計449飛来(ドローン430機+ミサイル19発)でした。今月2回目の大規模攻撃であり、その攻撃は首都キーウに集中しています。首都は防空網が厚く、高い阻止率を記録しています。

  • 2025年11月14日:合計449飛来(ドローン430機+ミサイル19発)30突破
  • 2025年11月08日:合計503飛来(ドローン458機+ミサイル45発)88突破
  • 2025年10月30日:合計705飛来(ドローン653機+ミサイル52発)79突破
  • 2025年10月22日:合計433飛来(ドローン405機+ミサイル28発)84突破
  • 2025年10月16日:合計357飛来(ドローン320機+ミサイル37発)51突破
  • 2025年10月10日:合計497飛来(ドローン465機+ミサイル32発)73突破
  • 2025年10月05日:合計549飛来(ドローン496機+ミサイル53発)65突破
  • 2025年10月03日:合計416飛来(ドローン381機+ミサイル35発)96突破

※10月と11月の大規模攻撃。なおドローンは毎日飛来している。

2025年11月14日迎撃戦闘:ウクライナ空軍司令部

  • キンジャール空中発射弾道ミサイル×3飛来2撃墜
  • イスカンデルM/KN-23弾道ミサイル×9飛来6撃墜
  • ツィルコン極超音速巡航ミサイル×1飛来0撃墜
  • イスカンデルK/カリブル巡航ミサイル×6飛来6撃墜
  • 自爆無人機と囮無人機×430飛来405排除(飛来うちシャヘド約300)

※合計449飛来419排除、30突破 ※阻止率93%

ウクライナ空軍より2025年11月8日迎撃戦闘の集計報告
ウクライナ空軍より2025年11月8日迎撃戦闘の集計報告

※「排除」とは撃墜/抑制(ЗБИТО/ПОДАВЛЕНО)のことで、抑制とは本来は電子妨害での無力化(迷走/墜落)を意味するが、しかしここではドローンに関しては囮無人機の燃料切れ墜落による「未到達」も含む。

攻撃は首都キーウに集中

※ППО радар と monitorwar による共同作業の可視化地図(2025年11月8日)
※ППО радар と monitorwar による共同作業の可視化地図(2025年11月8日)

攻撃経路の可視化地図の出典 : https://t.me/mon1tor_ua/57795

  • 橙色:弾道ミサイル(イスカンデルM/KN-23:地上発射)
  • 水色:弾道ミサイル(キンジャール:空中発射)
  • 緑色:巡航ミサイル(カリブル:艦船発射) 
  • 黄色:各種ドローン(シャヘド自爆無人機/ガーベラ囮無人機:地上発射)

※ウクライナ空軍司令部の集計が若干混乱しており、カリブル巡航ミサイル(艦船発射)とイスカンデルK巡航ミサイル(地上発射)の合計6発が纏めて計上されている。可視化地図でもカリブルとイスカンデルKが混ざった状態。

※可視化地図ではツィルコン極超音速巡航ミサイルの1発が反映されていない。

ППО радарmonitorwar による共同作業の可視化地図。両名はこの攻撃経路の可視化地図を世間に広めて欲しいとクリエイティブ・コモンズ・ライセンスをCC 4.0に設定。

弾道ミサイル×13飛来8撃墜、5突破 ※阻止率62%

  • キンジャール空中発射弾道ミサイル×3飛来2撃墜
  • イスカンデルM/KN-23弾道ミサイル×9飛来6撃墜
  • ツィルコン極超音速巡航ミサイル×1飛来0撃墜

※ツィルコンは極超音速巡航ミサイルだが速度が短距離弾道ミサイル並みに高速なのでこのカテゴリーに入れている。

 弾道ミサイルはキーウに集中、パトリオット防空システムが善戦し半分以上を撃墜しています。迎撃が困難な高速目標が相手であることを考えれば、悪くはない数字だと言えます。

 最近のロシア軍は2025年8月28日と8月30日の迎撃戦闘で弾道ミサイルがパトリオットによって阻止率73~75%で阻まれて以降、パトリオット未配備地域を重点的に弾道ミサイルで狙う戦法に変更していましたが(関連記事)、今回はパトリオット配備が確実な首都キーウを狙ってきました。(前回の弾道ミサイルによるキーウ攻撃は10月22日に記録、その前は10月10日、9月は記録なし)

巡航ミサイル×6飛来6撃墜、0突破 ※阻止率100%

  • イスカンデルK/カリブル巡航ミサイル×6飛来6撃墜

 ウクライナ空軍司令部の集計が若干混乱しており、カリブル巡航ミサイル(艦船発射)とイスカンデルK巡航ミサイル(地上発射)の合計6発が纏めて計上されています。おそらく推定になりますが、イスカンデルKの発射地点がクリミア半島からだとすると、黒海から侵入して来たカリブルと混じってしまって判別が困難になってしまった可能性が考えられます。

各種ドローン×430飛来405排除、25突破 ※阻止率94%

 長距離無人機について阻止率は最近の大規模攻撃の中では最も良い迎撃成績の数字です。なお長距離ドローン攻撃は毎日行われており、数日おきに纏まった数の大規模なドローン発射が記録されていて、阻止率は概ね80~95%の範囲が続いています。

最近の大規模なドローン飛来記録(10月以降)

  • 2025年11月14日:430飛来405排除、25突破 ※阻止率94%
  • 2025年11月08日:458飛来406排除、52突破 ※阻止率89%
  • 2025年10月30日:653飛来592排除、61突破 ※阻止率91%
  • 2025年10月22日:405飛来333排除、72突破 ※阻止率82%
  • 2025年10月16日:320飛来283排除、37突破 ※阻止率88%
  • 2025年10月10日:465飛来405排除、60突破 ※阻止率87%
  • 2025年10月05日:496飛来439排除、57突破 ※阻止率89%
  • 2025年10月03日:381飛来303排除、78突破 ※阻止率80%

※ドローン阻止率の推移は最近に限らず過去3年を見ても大きな変動は無く、概ね80~95%の範囲に収まっており、特に悪い場合でも70%台が稀に記録された程度。

※ドローン飛来数のおそらく半分以上は安価な囮無人機であると思われる。長距離ドローン攻撃で囮無人機が混じり出したのは2024年7月以降、本格的に増加したのは2024年10月以降。


突破数の打撃力換算:ミサイル1点、ドローン0.1点

  • 2025年11月14日:合計7.5点(ドローン2.5点+ミサイル5点)
  • 2025年11月08日:合計41.1点(ドローン5.2点+ミサイル36点)
  • 2025年10月30日:合計24.1点(ドローン6.1点+ミサイル18点)
  • 2025年10月22日:合計21.2点(ドローン7.2点+ミサイル14点)
  • 2025年10月16日:合計17.7点(ドローン3.7点+ミサイル14点)
  • 2025年10月10日:合計19.0点(ドローン6.0点+ミサイル13点)
  • 2025年10月05日:合計13.7点(ドローン5.7点+ミサイル8点)
  • 2025年10月03日:合計25.8点(ドローン7.8点+ミサイル18点)

※打撃力換算はミサイルとドローンの弾頭重量差を10倍とする。

※上記リストは10月以降の突破数の打撃力10点以上のケース。

 11月14日は防空網の厚い首都キーウに攻撃が集中した為、迎撃による阻止成功が多く、突破された損害は最近の大規模攻撃の中では最も少なくなっています。しかしそれでも、民間人の犠牲者が出ています。

首都キーウ上空で迎撃戦闘、2025年11月14日

和訳:「今夜ロシアのミサイルが、あの忌々しい嫌悪感を催すヒューンという音と共に、頭上を飛んでいった。シャヘドでさえ今や音が違う。改良され、より速くなったのだ。今朝、私は目を覚ました。キーウでは4人が目を覚ますことはなかった。彼らはベッドの上で殺害されたのだ。」マリア・アヴデーエワ(キーウ在住)

※なお民間人犠牲者数はさらに増えて5人死亡となっている。

※ヒューンという音:亜音速巡航ミサイルのジェットエンジンが出す甲高い音。

※シャヘド136自爆無人機の速度面での改良は未確認。飛翔音の変化は巡航高度の変更やガーベラ囮無人機との誤認の可能性なども有り得る。

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ありがとうございます。
軍事/生き物ライター

弾道ミサイル防衛、極超音速兵器、無人兵器(ドローン)、ロシア-ウクライナ戦争など、ニュースによく出る最新の軍事的なテーマに付いて兵器を中心に解説を行っています。

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