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別冊「バビル2世」マガジン

「バビル2世」のコミックス&アニメその他を中心に、オールドファンがあれこれ語ります。

高橋良輔監督作品その2「ガサラキ」第10回

2008-12-09 22:54:04 | 「ガサラキ」関連
10回目ですねえ。なんかうだうだと続けていたら、こんなにも回を重ねてしまいました。
が、まだまだ終わらんぞ

この「ガサラキ」において、いちばんキョーレツなキャラは誰かといえば、そりゃもう黒い兄貴・豪和一清でしょうね。なんたって前世もすごいし、最終回ではとんでもないことをやらかすし。
とてもじゃないけど、ヘタレ王子(あ?)のユウシロウなんざ相手になりません。

その一清と張り合う存在感を見せるのが、西田さんです。外見もすごいですよ。だって、自分で自分の両目を日本刀で斬り裂き、盲目になっちゃったんですから。
西田さんは、特自内に多数のシンパを抱え、いわば秘密結社を作っています。広川参謀なんて、「西田さんのためなら死ねる」くらいに心酔しているみたいです。
その西田さんが、心を込めて速川中佐を説得。その「西田理論」は、いかにも純粋な民族派という感じで、武人の心を動かさずにはいられない、といった風情です。
そんなわけで、速川中佐もほだされてしまいました。

速川中佐が心を決めたからには、実験中隊の面々もやはり「ついていきます!」となってしまいます。やっぱり体育会系ですなあ。
とはいえ、全員がすっきりはっきり決心したわけではなく、たとえばTAパイロットの北沢大尉は、迷っている本心をムラチューにふと吐露します。そして、「豪和大尉なら、こんなとき迷わないだろうな・・・俺、ホントは彼がうらやましかったんだよ。だからついつい、冷たいような態度をとっちゃったんだ」と言います。
豪和ユウシロウは、たぶん逃れられない運命を背負っている。けれども、決してそれから逃げたりはしない。あの静かな表情のまま、黙って前に向かっている─と、北沢大尉は感じていたのですね
そして、ムラチューも迷わないんだろうと。しかし、「私だって、ホントは迷ってます」と言われて、北沢大尉ははっとします。いつも明るく振舞っているムラチューが、実は慎重に空気を読んで、みんなを鼓舞していたのだということに、初めて気づくのです。
(たぶん、この瞬間に北沢大尉はムラチューに惚れたと思われ

そのほか、鏑木大尉もやはり内心は迷っています。「ああ、私ってどうしていつもこうなんだろ」みたいにくよくよしてます。相棒の安宅大尉があっけらかんなのが好対照。
実験中隊は、治安出動に備えて東京へ移動することになりました。しかし、TA2機の整備が遅れたため、安宅・鏑木の両名だけが実験場に残り、あとから出発することになります。
これが重要な伏線。

さて、西田さんの話に戻ります。西田さんは博識なので、かつて「傀儡子の民」と呼ばれた軍事豪族のことを知っていました。そして、まだ彼らは日本のどこかで生きているだろうと一清に語ります。(目の前にいるのに)
しかし、一清は黙ってその話をやり過ごします。
実は一清、西田さんの思想に共鳴して協力しているわけじゃないんですな。前にも書きましたが、西田さんたちのクーデター・・・おっと、行動をちゃっかり利用して、豪和が日本の実権を握ろうとしているだけでね。
だから、西田理論についても「理想というのはもろいものだ、フッ」ってな具合に、内心は鼻で嘲ってます。
どこどこまでも黒い兄貴

さて、あらすじ行きましょう。


本編解説その9

米軍特殊部隊の力を借りて、シンボルのメス評議員はミハルをとり戻した。しかし、彼女はまるで抜け殻だった。呆然としたまま口を聞かず、表情も変えない。
「何があったのだ、ミハル」─メスは驚く。
7歳のミハルを引き取ってから8年間、メスにとってミハルは「娘」にも等しい存在だった。
メスの心は痛んだ。

ミハルを奪われたユウシロウは、たった一人で関東に帰ってきた。
今、日本国中が騒然としている。食料の値段が高騰し、暴動があちこちで起きつつあった。そんな中、政府は戒厳令を発令し、夜間外出禁止令をしいた。それを不満に思う一般市民が、あちこちでデモを繰り広げている。
日本は今、未曾有の激動の中にあった。
それなのに、ユウシロウの心の中は、ミハルのことでいっぱいだった。なんとしてもミハルをこの手に取り戻したい。
なすすべもなく、ユウシロウは自宅に電話をかける。妹の美鈴を頼ることしか出来ない。
しかし、美鈴の声を聞いたとたんに、ユウシロウはわが身の愚かさに気づいた。まだ14歳の妹に、危ない真似をさせるわけにはいかない。
電話を切ろうとしたユウシロウの耳に、三男・清春の声が響く。「ユウシロウ。事と次第によっては協力してもいいぞ」と。
いぶかしむユウシロウに、清春は言う。
「言ったじゃないか。兄としてお前を心配しているって」


ここであの会話が生きてくるんですね。物語の冒頭で、清継と清春が「兄として、お前を心配している」と言っていたアレですよ。決して社交辞令じゃなくて、本心だったということです。
ユウシロウは、清春の助けで、東京に出発する直前だった安宅大尉と鏑木大尉に連絡を取ることができました。
そして、安宅大尉の運転するTA運搬トレーラーに拾ってもらいます。深夜の国道で佇むユウシロウは、なにやら思いつめた表情。さて。


その少し前、安宅・鏑木両名を残して東京へついた実験中隊は、さっそくTAを治安出動させていた。
パイロットは高山少佐、北沢大尉の両名。国会議事堂周辺を取り巻いている群集が暴徒と化す前に排除する、それが任務だった。
首相の乗った車に、誰かが投石した。それにつられる様に、人々が次々と投石を始めた。
狂乱状態になる群集。TAはプラスチック弾を投擲する。殺傷力はない、暴徒を排除するだけだ。
しかし、相手は敵ではないのだ。一般市民である。市民に攻撃を加えるのか?─高山と北沢の心が激しく動揺する。
やがて、群衆の中から火炎瓶を投げつける者も出た。飛び交う発炎筒、逃げ惑う人々。
あたりはパニック状態となった。


この場面の描写は実にリアルだと思います。「治安出動」の実態を、それも鎮圧する側の視点から、これほど現実感バリバリで描いたアニメはいまだかつてないでしょう。
これは、なんとなく「全共闘世代」的な感覚じゃないか?という気もします。高橋監督(1943年生まれ)は、たぶん60年と70年安保の「空気」を、青年時代にリアルタイムで経験したはずです(ちょっと年代はずれてますが)。
その時の感覚がちらっと出ているのかなと思うんですが。どうなんでしょうか。


安宅大尉と鏑木大尉の乗ったトレーラーは、ユウシロウを乗せて走り出した。しかし、ユウシロウはひどく思いつめた表情で言う。「お願いしたいことがあるんです」
ミハルを救い出したい。彼女がどこにいるのかわからない。それでも、どうしてもミハルを取り戻したい。
ユウシロウがここに至るまでのいきさつを聞いた二人は驚く。
しかしユウシロウの、その必死の表情が鏑木大尉の心の底深く眠る記憶を呼び覚ました。
鏑木は力強く叫んだ。「行きましょう!」
いつも冷静、慎重な鏑木の豹変ぶりに、安宅大尉は驚く。二人には、一刻も早くTAを東京に運ぶ任務があるというのに。
「いやなら、あなたはいいのよ」
きっぱりと言い放つ鏑木に、安宅は苦笑しながら言う。
「かわいい弟のためだもんね。いいわ、付き合うわよ」
二人は、東京の村井中尉を呼び出し、ミハルを連れ去った米軍特殊部隊が横田基地に帰還したことを突き止めた。さらに、特自のサーバーをハッキングさせ、横田基地捜索のニセ指令を発令させた。横田基地にテロリストが逃げ込んだということにしたのである。
ユウシロウと、安宅・鏑木の3名は、ミハル奪還作戦を開始した。


いつも冷静な鏑木さん。必死にユウシロウを助けようとします。「え~?どうしちゃったのよ、鏑木ぃ」という感じで驚く安宅大尉ですが、そこはそれ、安宅サンですから。ソッコーで協力を決断。
この場面、すごくいいです、泣けます、姐さん二人の侠気あふれる友情~!
そして、ここであの「平安編」なんですよ。平安時代、憂四郎の許婚だった三富すなわち鏑木さん。そのひそかな思いが、ここで炸裂するんです。
許婚ではあったけど、結ばれることのなかった二人。でも、彼女は彼をなんとか助けたいと思うんですな。
これって究極のプラトニックラブじゃないですかあ

さあ、いよいよTA 対 F22ラプター
見せ場が待ってるぜ!

以下、次回。