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別冊「バビル2世」マガジン

「バビル2世」のコミックス&アニメその他を中心に、オールドファンがあれこれ語ります。

高橋良輔監督作品その2「ガサラキ」第8回

2008-12-05 21:28:24 | 「ガサラキ」関連

「ガサラキ」に登場するヒロインは4名です。
(豪和乃三郎氏の夫人はスルー、ってことでひとつ)

まず、ユウシロウの妹─ただし、血はつながっていない─である豪和美鈴。由美子さんクリソツの14歳。

そして、特自実験中隊の同僚である安宅燐(あたか・りん)大尉、鏑木かほる大尉、ムラチューこと村井沙生(むらい・すなお)中尉です。この3人は、実に有能な人たちです。唯一「なごみ役」であるムラチューですら、ドジったり失敗したりへまをしたり・・・なんてことは皆無で、オペレーターとしての技量はピカイチ。特自のサーバーへハッキングなんて朝飯前です。
安宅・鏑木の両名は24歳、ムラチューは23歳という設定ですので、17歳のユウシロウよりもずっとお姉さんですな。じっさい、安宅大尉が「かわいい弟のためだもんね」などと言う場面がありますから、そういう感じ(?)なのでしょう。
ちなみに、安宅大尉の身長は172cmとなっていますから、きっとバレーボールやバスケットの選手みたいなアスリート体型なんでしょうね。さすがTA乗りです。
(いっぽうのユウシロウは173㎝ですと。17歳だから、あと2㎝くらいは伸びるかも?)

さて、見た目由美子さんな美鈴お嬢ですが、ユウシロウに対しては凄まじいばかりのブラコンです。なにかってえと「お兄様、お兄様」と大騒ぎしています。小説版では、ミハルとともに家出したユウシロウを追いかけて、関西にまで行っちゃいます。TVはそこまでの描写がないので、これはさっくりスルーしましょう
さらに小説では、美鈴は歳の離れた母親違いの3人の兄には気兼ねがあってまともに口をきけず、ユウシロウだけが唯一のよりどころだったと書かれていますが、それっぽい感じはTV版からも漂ってきます。だから「ユウシロウお兄様、命」なんですね。
しかしラスト近くで、美鈴はユウシロウが兄の憂四郎ではないことを本当は知っていたということが明らかになります。あまりにつらい記憶なので、潜在意識へ押し込めてしまい、表面上は忘れていたのです。
ですから、美鈴の「お兄様、命!」という気持ちには、一人の異性としてユウシロウを密かに意識していたという意味も含まれています。
(こういうところも、なんとなく由美ちゃんっぽい感じですね)

さらにもうひとつ、実は美鈴は・・・ということもあり、魂の深い部分でユウシロウを求めていたのだな、ということがやがてわかってきますが、それはまだ先の話。

では、ユウシロウの旅を追いかけましょう。


本編解説その7

ユウシロウは、抜け殻のようになったミハルを連れ、逃避行を開始した。何事にも反応しない彼女の手を引いて、訪れたのは関西地区にある「アジアン静脈瘤」だった。
アジアン静脈瘤。それは、不法滞在のアジア系移民たちが集まって形成しているスラム街で、日本人は侮蔑の意味を込めてそう呼ぶ。今や日本各地にアジアン静脈瘤はいくつもできていた。
ここならば、きっと見つからない。もしも兄たちに見つかったなら、ユウシロウもミハルも実験動物に逆戻りである。千年の時を超え、再び「殺戮の道具」となるのがオチだ。
二人だけでひっそりと生きよう─ユウシロウは、そう考えたのだった。
しかし、二人の行方を追っているのは、豪和だけではなかった。シンボルもまた、掌中の珠であるミハルを取り戻すために動き始めていた。

その頃、特自の内部では、クーデター計画の詳細が練り上げられていた。国学者・西田、広川参謀、そして豪和一清が、ひそかにこれからのことを話し合っていた。
この年、世界は記録的な熱波の影響(※異常気象・地球温暖化という言葉は出てこない)のため、各地の小麦収穫が壊滅的打撃を受けていた。なんと、全世界の穀物備蓄が一ヶ月を切るところにまで落ち込んでいる。まだどこにも発表されず、誰も知らないはずの情報を、西田は綿密なデータ分析から割り出したのだ。
西田は、米国政府が近々「穀物モラトリアム」を実施するだろうと断言した。ようするに、自国の穀物輸出を禁止し、国内分を確保するための緊急措置である。そうなれば、食料自給率が低く、輸入に頼っている日本はひとたまりもなくなる。
その時、かならずや日本国内でいくつか暴動が起きるだろう。食糧暴動である。それは、アジアン静脈瘤において顕著であるにちがいない。
不法滞在民の暴動を鎮圧するため、特自が治安出動する。その時こそが、決起だ。
西田は言う。「治安出動には、TAが主力となる。ならばこそ、速川中佐の実験中隊の力がどうしても必要になる」
TAに関しては、どこよりも熟練したスキルを持つ速川中隊の協力がなければ、クーデターは到底成功しない。従って、速川中佐をなんとか説得し、仲間として引き込まなければならない。
西田は、自らが説得にあたることを決意した。
しかし、実験中隊中一番のパイロットであるユウシロウがいない。
一清は、父・乃三郎がこっそりユウシロウとミハルを逃がしたことをいまいましく思っていた。なんとしても、二人は連れ戻さなければならない。


10年前、1998年といえば、やはりまだ「地球温暖化」という言葉が広まってなかったんですね。これが今現在の作品だったなら、間違いなく異常気象とかなんとか言うはずです。
ま、それはそれとして。今現在(08年)の日本の食料自給率は約40%。米国というより、中国からの輸入に頼っているのが現状で、いくら「中国産はアレですから嫌!」とか言っても、中国産野菜等々なければやっていけない現状です。
この作品は2014年の近未来が舞台ですが、どうやら食料自給率の問題は解決していないようですな
ちなみに、都道府県別に見ますと、食糧自給率が100%を超えている(輸入なしでもやっていける)のは、北海道をはじめ東北3県のみです。北海道はカロリーベースで200%ですから、胸を張っていいと思います。(東京なんて1%!)
ま、いいや。続けます。


ユウシロウとミハルは、関西のアジアン静脈瘤をふらふらと歩いているうちに、街を牛耳っているマフィア同士の抗争に巻き込まれる。彼は、とある中華料理店の店主を救ったことで、多大な感謝を受けることになる。
よくぞ仲間を助けてくれた─と、若い男がユウシロウの前に現れた。その一帯の顔役である王(わん)という男だった。
彼らは、わけありな2人を匿い、とりあえずの住居を提供し、あまつさえユウシロウに仕事を紹介してくれた。ユウシロウは、慣れない手つきで皿洗いのバイトをすることになった。
ミハルはまだ心を開かない。呆然としたまま何もしゃべらず、一日中じっと部屋で座っているだけである。
それでもよかった。逃亡者の日々を、それでもユウシロウは充実感を持って過ごしていた。
しかし、王のもとにシンボルからの連絡が入った。王は、かつてシンボルの工作員としてスパイ行為をしていたことがあるのだ。
シンボルのエージェントは言う。「近々、米国は穀物モラトリアムを実行する。日本各地に食糧暴動が起きるだろう。その時、特自が暴動鎮圧の名目で出動するのは確実だ。まっさきにやり玉に上げられ、スケープゴートになるのがアジアン静脈瘤だ」
間違いなくアジアン静脈瘤に特自が乗り込んでくるだろう、と言うのである。
さらにシンボルのエージェントは告げる。
「我々は二人の人間を捜している。彼らはアジアン静脈瘤に逃げ込んでいる可能性が高い。それを見つけてほしい」
シンボルから送られてきた顔写真。それは、ユウシロウとミハルだった。


皿洗いしているユウシロウの瞬間コスプレ姿が「燃え!」です。
しかも、王さんたちが提供してくれた二人の宿泊場所が、どう見てもラブホ。大きなダブルベッドが「でん!」とある部屋で、ユウシロウとミハルは日々を過ごしているわけで。同じベッドで寝ているようです
しかし、だからといって変なこと(?)をするわけじゃない。ほんとに清らかな二人です。
この現実感のなさというか、浮世離れした雰囲気がユウシロウの持ち味。ふつう17才すなわち高校2年なら、頭の中はそのことで一杯でしょうに。
さすがに千年の記憶をもつ嵬ですなあ。精神年齢1000歳なんで、世間一般の煩悩なんてぶっ飛んじゃったのでしょう。
・・・いや。真面目なだけだな、きっと

ところでアジアン静脈瘤在住の不法滞在者の皆さんですが、ユウシロウがたまたま仲間の命を救ってくれたことをいたく感謝し、あれこれ世話をやいてくれます。しかも、ユウシロウは「兄妹」だと主張していますが、「違うだろ?」と気づいています。それでも、深く問い詰めることもなしに接してくれます。
はっきりいって、(大富豪である)豪和家の冷たい連中よりもずっと人間味にあふれ、心の熱い人たちです。
このあたり、いかにも高橋監督らしさが出ています。最下層、底辺で一生懸命生きる人々への暖かい視線が感じられるわけです。これは「太陽の牙ダグラム」から終始一貫して流れている高橋イズム、とでも。
特自の仲間たち。そして、アジアン静脈瘤の人々。彼らとのふれあいの中で、ユウシロウは完全にお人形さん状態から抜けだし、血肉の通った一人の人間として自らの足で立つようになりました。
しかし、腹黒兄貴の一清、あいかわらず策を弄していますぞ。


実験中隊は、北海道・八臼岳演習場から呼び戻され、量産型TAの調整にかり出される日々を送っていた。ユウシロウがいないので、TAの試乗は3人でこなさねばならならず、激務が続いていた。
何のためにこんなことをしているのか。中隊の全員も、うすうす事態が飲み込めてきた。近々、まちがいなく治安出動がある─そのときこそ、TAの出番なのだと。
そんな折、中隊長の速川中佐が広川参謀に呼び出された。西田から話があるというのだ。
ついにきたか─。中隊の全員が息を詰める中、速川は参謀本部に赴く。
西田による速川の説得が始まった。

いっぽう米国は、穀物モラトリアム発表に先駆け、シンボル製TAであるイシュタルを特殊部隊に正式採用することを決定した。米国もまた、暴動鎮圧のためには、二足歩行型兵器が最適と判断したのである。
米国政府による穀物モラトリアム発表の時期が迫っていた。世界は今、誰も経験したことのない「戦争」、日本とアメリカによる深く静かな戦いに向かって歩を速めていた・・・。

物語は、怒濤の勢いで急加速。
次回へつづく!