SF小説は世につれ、人につれ、なんぞと言います(・・・言わんっ
ま、そのですね。
いかに内容が未来のものであっても、実は「現在」を反映した物語であることが多い─ってことです。つまり、SF小説あるいはSFアニメってやつは、今、我々が現に生きている社会と、その社会を縛りつけている価値観を敷衍したものだといえるでしょう。
従って、この作品「ガサラキ」もまた、発表年である1998年当時の空気を映しています。
たとえば、シリーズ後半に入りますと、「ガサラキとは何か?嵬とは、骨嵬とは?」ということよりも、むしろ「西田さんのクーデターは成功するのか?」という方が気になってたまらなくなります。
あの劇画「沈黙の艦隊」(96年完結)の大ヒットあたりから、ちょうど「属国日本論」が脚光を浴びていた時期の、日本の世論。それが背景にあります。
いや、この作品は「沈黙の艦隊」の影響バリバリだと断言していいでしょう。結論まで、ほぼおんなじところに着地します。
(そういえば、サンライズ制作のOVA「沈黙の艦隊」の監督は、高橋良輔氏でした)
あるいは、某知事が「日本は世界最大の債権国で、アメリカの国債をいちばんたくさん引き受けている国だ。そんなもん、売りに出せば一気にアメリカは窮地に陥る。日本が弱腰でいる必要はない」などと発言し、当の米国からかなりお灸をすえられた(?)のも、この頃だったと思います。これが、物語後半に重要な出来事として出てくる「穀物モラトリアム」を彷彿とさせます。
さらに言えば、湾岸戦争です。とくに序盤の「ベギルスタン紛争編」(注・勝手に命名)の戦闘シーンは、もろに湾岸戦争(91年)のそれを模しています。
つまり、そうした「20世紀末日本の空気」を、この作品は色濃く醸し出しています。
98年当時の空気、ですから、10年後である今見ますと、「昔の話だよなあ」という感じがします。いちおう2014年が舞台なんですが、メカは別として、やはり98年の物語なんですよ。
まず─当然のことながら─地球温暖化、なんていう話が全然出てきません。ここ数年のように、毎度毎度の「異常気象」がごく当たり前(?)・・・ではない世界なのです。
その他いろいろありますが、それは置いときまして。
まずはおなじみのストーリーの追っかけ、いきましょう。
本編解説その4
豪和の里、石舞台を急襲したシンボルのTA・イシュタル部隊が見たものは、異形の兵器だった。それは、甲冑をまとった鬼の姿をした古代のTA、すなわち骨嵬だった。
ユウシロウが内部に乗り込んで操る骨嵬は、信じられない破壊力でミハルの前に迫っていた。
ミハルの心の中に、封印された過去の─前世の記憶が蘇りつつあった。恐怖のあまり、ミハルはパニックを起こしてしまう。
シンボルが「オリジナル」と呼ぶ骨嵬の、突然の攻撃。シンボルのTA部隊は、機体を放棄、爆破してその場から引き上げる。しかし、意識を失ったミハルは逃げ遅れ、骨嵬から下りたユウシロウによって保護される。
骨嵬とは何か?何故、それを自分が動かせるのか?何より、自分は誰なのか?そう問いかけるユウシロウに、空知検校はこう答える。
「京都へ行きなさい。そして、豪和一族発祥の地、渡辺の里を訪ねなさい。そこに、全ての答えがある」
ミハルは、その地を知っていると言う。そこで、二人はかつて─遠い昔に─生きていたと。
ユウシロウは、ミハルとともに渡辺の里へ旅立つことを決意した。
いっぽう、その頃。
北海道・八臼岳演習場では、特自の広川参謀と豪和の科学者・米谷によるTA実験が密かに行われていた。量産型TA「17式(いちななしき)」をさらにパワーアップさせたものだった。
このTAに乗る4人のパイロットには、特殊な薬剤が投与されていた。これは、豪和一族が所有する骨嵬から抽出したグロブリンを主体とするものだった。つまり豪和は、ユウシロウと同等の能力を持ったパイロットを人工的に作り出し、TAを操縦させるつもりだったのだ。
しかし、「人為的に作られた嵬」は、実験開始直後に暴走を始める。生体反応が人体の限界を超えて爆発的に進み始めたのである。4人のパイロットは、絶叫しながら原野を走り出し、何をどうやっても止めることができない状態に陥った。
このままでは、演習場を飛び出し、人家のあるところまで暴走するだろう─そうなったら、パイロットもろとも爆破しなければならない。
ベギルスタンからの帰国後、そのまま各務原飛行場に留め置かれていた特自・実験中隊が、急遽北海道へ呼び寄せられた。彼らのTA操縦ノウハウを使って、17式改を阻止せよと言うのである。
しかし、いちばんの乗り手であるユウシロウがいない。広川参謀は、特自のヘリを使ってユウシロウを探し出すことを決意する。
渡辺の里を目指し、ユウシロウとミハルは山道を駆けていた。それは、「嵬の道」と呼ばれる、いにしえ人の道だった。今はもう誰も使うことはない、古い古い旧道である。ユウシロウにとっては初めて歩む道のはずが、なぜかその道筋の全てが記憶の中にある。
二人は、ぽつりぽつりと語り始めた。
ミハルは言う。「遠い昔、こんな闇を見ていたような気がする─何故、あなたはこの道を知っているの?」
ユウシロウには答えられなかった。
「時々、あなたの言葉が私の中を流れていく。それは間違いなくあなたの言葉」
はるかな昔。二人はたしかにその魂を通わせたはずなのだった。
やっとめぐりあった二人。しかし、特自のヘリが上空に迫っていた。
二人は引き離され、ユウシロウは北海道へ、ミハルは豪和総研へ送られることになった。
ミハルは、ユウシロウに言う。「大丈夫よ、私たちは貴重な実験動物だもの。大切に扱ってもらえるわ」
実験動物。道具。手段。
豪和家にとって自分は何なのか。ユウシロウは、今やっとそのことに気がついた。
ユウシロウが八臼岳演習場に到着した時、事態はさらに悪化していた。実験中隊のB小隊(高山・北沢組)でさえ17式改を止められず、もはや爆破しかない状況にさしかかっていた。
特自が豪和と共同でひそかに進めていた「特殊な薬物を使ったもうひとつのTA実験」に、実験中隊隊長の速川中佐は激怒した。これではまるでパイロットは使い捨てだと、広川参謀に詰め寄る。
「前線の兵士は、後方が自分たちをコマではなく人間として扱ってくれると思えてこそ、命をかけられるんです!」
しかし、一刻の猶予もなかった。暴走する17式改は、まもなく最終防衛線を突破してしまう。そうなったらなら、いっせいに砲撃が加えられることになっている。
負傷した高山・北沢に代わり、ユウシロウが出撃する。なんとしてもパイロットを助けるために。
なぜなら、そのパイロットもまたユウシロウと同じ。ただの「道具」だから。
僕も同じなんだと、ユウシロウは呟いていた・・・。
ユウシロウは命がけで17式改のパイロットを救います。この場面はまさに「火事場の馬鹿力」、嵬であるユウシロウの面目躍如といった迫力のシーンです。
と同時に、これは「使い捨てられるいち歩兵」の意地、でもあります。高橋監督の大ヒット作「装甲騎兵ボトムズ」の根底に流れる、いわば「反骨精神」と同じものではないでしょうか。
(・・・これが高橋カラーなんだよぅ
このエピソードでは、他にも印象的な場面がたくさんあります。
まず、ユウシロウとミハルを追いかけてくる妹・美鈴。必死の「ブラコンっぷり」を見せます。これは後々の伏線にもなっています。
ついでにいいますと、何故かそこに安宅大尉もいるんですが、この行動力がなんとも彼女らしい。これも、後のエピソードでの何気に重要な伏線です。
そして、北海道・八臼岳演習場にて。これが薬物を使った実験だったことをユウシロウが知った時、彼は広川と米谷に向かってこう叫びます。
「僕は、あなた方を─あなたを許さない!」
お人形さんのように無表情で、なにもかも唯々諾々と受け入れてきたユウシロウが、初めて感情を剥き出しにして他人を罵倒する場面です。
ユウシロウ大好き人間の私なんぞ、マジで泣いちゃいますよ
さあ、加速度的に佳境へ向かって疾走する「ガサラキ」。次はいよいよ平安編だ!
ちょいと余談
TAことタクティカル・アーマー、すなわち「戦術甲冑」。
この物語に登場する二足歩行型兵器は、たった2種類・・・豪和のTAと、シンボルのMF(メタルフェイク)、イシュタル。
これではおもちゃメーカーはたまりませんなあ・・・・
実際、あんまり売れなかったそうですな
しかも、おもちゃ製品名は「雷電」なのに、作品中その名称は出てこないっす・・・せいぜい「17式改」という名称があるだけで。
(ちなみに、17式改のおもちゃは「震電」だってさ。なんじゃそりゃ)
ま、それはそれとして。
面白いのは、このTAを操縦するパイロットの格好なんですよ。
はっきりいって自転車型エクササイズマシーンを漕いでいるみたいなポーズです
ですが、よくよく見ると、あのマヤ文明遺跡・パレンケの石棺の絵にそっくりなんですよ。ほら、一時期「これは宇宙船を操縦するパイロットの絵だあっ!」とか言われていたヤツ。
メカデザインの人、そこまで考えたのかな
(※ただし、今ではこの説は完全に否定されています。あれは絵を縦にして見るのが正しく、ちょいと寝そべっている姿なんだそうな)