第7回買春した客に手錠、売春女性を保護…パリにいた研究者が流した涙
連載「買春は暴力」⑦
2016年に買春する側を罰する法律をつくったフランス。売る側を被害者として保護している。法律の意義と、それがもたらした社会の変化についてフランス刑法やジェンダーに詳しい島岡まな・大阪大学教授に聞いた。
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いまの日本の法律や制度には性差別が潜んでいるものが多くあります。例えば、夫婦同姓を「強制」する民法の規定があり、妊娠は女性だけではできないにもかかわらず、女性のみが対象となる刑法の自己堕胎罪があります。ほかに、刑法の淫行勧誘罪は、淫行の常習がある女性とない女性を分けてとらえます。枚挙にいとまがありませんが、最たるものが売春防止法だといえます。
女性に偏る「売る側」のみを処罰し、男性に偏る「買う側」の責任を問わないという法律のあり方は、社会のジェンダー差別を温存し、強化させているといえます。
フランスが2016年、日本の売防法に似た法律を廃し、買春処罰法を導入したことは社会の価値観を大きく変える出来事でした。
法律ができた当時、パリに住んでいました。テレビのニュース番組で、売春する女性が待機するトラックに警察が向かっていく。逃げる女性たちに向かって、警察官が「あなたは保護の対象です。逃げる必要はありません」といい、買春した客の男に手錠をかける様子を目の当たりにした時は、涙が出ました。
フランスの買春処罰法は、条文で「売春の現実と身体の商品化に伴う危険性に関する情報は、中学校において提供」され、それは「男女間の平等な視点を提示し、人間の身体に対する尊重を学ぶことに寄与する」とも定めます。
日本の売防法も、22年に成立した困難な問題を抱える女性支援法も、売る側や女性に焦点があてられていますが、フランスの法律は、「変わるべきは社会」だと指摘します。
フランスもかつては買春に「寛容」な文化がありました。しかし、1975年にシモーヌ・ベイユ保健相(当時)が中絶を合法化し、2000年の候補者を男女同数にするよう政党に求めるパリテ法の導入で女性議員が増えるなど、ジェンダー平等に向けた取り組みを続けるなかで、買春処罰法が実現したのです。
買春を性暴力、性搾取であると位置づけることは性暴力をどうとらえるかという意味でとても意義が大きく、無縁の人はいません。
日本も売防法改正にむけて議論をすべきではないでしょうか。
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国は11月12日から25日まで「女性に対する暴力をなくす運動」を実施している。
●配偶者暴力相談支援センター ☎#8008(はれれば)
●性暴力・性犯罪被害者のためのワンストップ支援センター ☎#8891(はやくワンストップ)
年齢や性別を問わず相談できる。
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