葛飾応為 幻の作品に会いに
葛飾応為の新たな作品が見つかったとのニュースに胸を躍らせながら、すみだ北斎美術館へ行ってきました。
すみだ北斎美術館。
公園のなかにあり松の木と近代的な建物の調和が見事。
葛飾応為は葛飾北斎の娘で、今は応為を主役にした映画も上映されています。北斎と共に暮らし生涯を絵に捧げた人生であるにも関わらず、応為の作品として認められているのは7つしかないという謎多き人物です。
私は応為の「吉原格子先乃図」を見て、浮世絵とは思えない光と影の美しさや描写の細かさ、提灯にこっそりと自分の落款を入れるという粋な計らいに心を奪われ大好きになりました。
応為の作品全てに会いに行くことを心に決めているのです。
今回展示されている「蝶々二美人図」は個人の方が所蔵されており、応為の8作品目として認められ、初めての公での展示となったものです。
浮世絵は海外での評価が高く多くの作品が日本から流出し、また行先不明となっているものもあります。応為の作品が残っていたこと、そして大切に保管し今回展示して頂けたことは奇跡的で、所蔵されている方にも、今回の展示に関わって下さっている方にも感謝しかありません。
展覧会では、北斎をはじめとして縁の絵師たちの美人画に当時の生活風景も描かれていて、江戸時代にタイムトリップしたような気持ちになりました。
応為の作品は展覧会の終わり近くに展示されていました。
作品を見つけた時、胸の高鳴りが最高潮になりドキドキしながら駆け寄りました。
美術館のなかは平日にも関わらず混んでいたのですがたまたま応為の作品の前には誰もいませんでした。
2匹の黄色い蝶々を見る若い二人の女性。
一人は首を傾げ、一人は団扇で仰ぎながらじっと見ています。
団扇で仰いでいる女性は後ろ姿ですが、白い首に黒い髪のうなじが美しく、深い藍色の着物に赤い髪飾りと帯が映えています。
首を傾げている女性は白を基調にした着物が爽やかで藍色の柄、赤い長襦袢に黒い帯がキリッとしていて、しなやかな身体の動きには瑞々しい若さを感じます。
今まで見てきた応為の作品とは違っていて、光と影や情念のようなものはありません。
若さや可愛らしさ、少女から大人の女性へと変わっていく時期の瑞々しい美しさが溢れていて、まさに蛹から蝶々になった瞬間のようです。
これを描いた応為もまだ若かったのでは?と感じましたが、やはり初期の作品でした。
応為自身も蛹から蝶々になったお年頃だったのかもしれません。
作品の前にはちょうど休むためのソファーがあったので、そこに座って遠目で見たり、また立って近くで見たりを繰り返し気付いたら1時間も見ていました。
どれだけ長い時間見ても飽きることなく、目も心も奪われました。
応為の新たな作品に出会い、また新たな応為の魅力を知って、ますます応為が好きになりました。
一生涯を絵に捧げたにも関わらず応為の作品が少ないのは、北斎の代筆をしていたからという説が濃厚で、研究が進んでいます。
これからもまた応為の作品が増えるかもしれないと思うと楽しみですが、自分の作品であることを知ってほしいと応為は強く望んではいないようにも思います。
ただ描くことが大好きで、父のそばで描くことに専念できる人生を送ったことは、当時女性絵師が活躍できることが少なかった江戸時代においては幸せだったのでしょう。
粋な江戸っ子だった応為のこと。
応為が代筆したかもしれない北斎の浮世絵を探していることを
「不粋なことするなよ」
と笑っているかもしれませんね。


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