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遺族質問、黙秘権根拠に回答拒否 地裁是認、被害者参加で議論呼ぶ
黙秘権と被害者参加制度
黙秘権と被害者参加制度
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医療事故の刑事裁判で東京地裁が10月、黙秘権を根拠に被告が被害者参加した遺族の質問へ回答しないことを認める判断をしていたことが16日、分かった。被害者側が裁判に直接関わりたいとの思いから導入された被害者参加制度の趣旨には沿わない一方、黙秘権を尊重すべきだとの意見もあり、関係者の評価は分かれる。
裁判は東京女子医大病院で2014年、手術後に鎮静剤プロポフォールを大量投与された男児=当時(2)=が死亡し、元准教授と元研修医が業務上過失致死罪に問われたもの。両被告は無罪を主張し、公判中だ。
元研修医の弁護側は今年10月6日の公判で、被告人質問で供述しないと宣言。被害者参加で出廷した遺族の質問に対しても回答しないと述べた。検察側は「供述を強いるものではない。被害者側の質問機会が奪われてはならない」と異議を申し立てたが細谷泰暢裁判長は退け、この日の審理は終了した。
制度は08年に始まり、事件の被害者や遺族らが公判で被告・証人に直接質問できる。一方、黙秘権は憲法で保障されており、刑事訴訟法は「終始沈黙し、または個々の質問に供述を拒むことができる」と定める。
ある検察幹部は、今回の件を特異な事例だとし「制度設計からして質問の機会は与えられるべきだ。こうした運用が定着してよいのか」と疑問を投げかける。弁護団の趙誠峰弁護士は「有罪か無罪かを審理しているのに、既に『被害者』とされる存在が法廷にいること自体、無罪推定の原則に反する。黙秘権を行使する被告への質問をさせなかった訴訟指揮は正しい」と話した。
元裁判官の半田靖史学習院大法科大学院教授は「黙秘を宣言していれば、裁判官の判断に必要な情報が出てこないことは明らかだろう。質問に答えないことが続くと被告に不利な心証が形成されたり、あるいは被告がそれを恐れて黙秘権行使をためらったりする可能性もある。無駄と分かっていれば、その手続きをすべきではない」との見方を示した。
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