”春やかりゆし”by 玉城一美
昨日は「風邪ひいてるけど大晦日だし、酒飲んじゃおうかなあ」とか書いたけど、結局大事を取って飲まなかったのでした。シラフで年越しをしたなんて、20年、いや30年ぶりとかさ、そのくらいになるんじゃないか。軟弱になっちゃったなあ、かっては医者も呆れるアルコール依存の凶状持ちだったのにねえ。
で、昨夜のネット上の知り合いたちの日記を覗いて歩いたら、なんかやたらにあちこちですき焼きの話題がのぼっていたんで、こちらも食べたくなって来た。で、正月の夕食に、真似してすき焼きをたらふく食ってみた。
そしたら今になって若干の回復の感触が出てきたんで、「よし、一日遅れだが今夜、昨夜の分を飲み直すか」なんて気分もあり、なんだが、その一方、「調子に乗るな。もう一晩、断酒しておけ」とか心中、諌める声もあり。
どっちにしようかな。あなた、どうしたらいいとお思いですか。
本日の一枚は、なんかいかにもジャケの写真が”新春”って感じなんで、購入した昨年の夏から”新年一発目の日録にはこのジャケを貼ろう”と決めていた一枚であります。
これは昨年リリースされた沖縄の民謡歌手・玉城一美の、多分2枚目のアルバム。
玉城一美は、沖縄民謡の父といわれた玉城安定の娘であり、沖縄の民謡界で活躍を続ける一方、かっては坂本龍一のワールドツアーに参加したり、といった活動もしている人のようだ。
収められたどの唄にもジャケ通りの、ほっこりと春がほころんだ、みたいな暖かく華やかな空気がほんのりと通うアルバムであり、風邪に悩まされつつ春の日差しを待つ、みたいな気分の時には最適の作品だ。
いわゆる沖縄島唄の歌い方なのだが、重くない持ち味に好感が持てる。あくまで軽やかにふんわりと歌声を空気に乗せて行く。いくつも”春”や”花”の一文字がタイトルに含まれる曲が収められているが、この辺も彼女の持ち味を分かっての事なのだろう。
そんな具合に、”沖縄・春気分”のアルバムではあるのだが、その一方でこれは、戦争の翳りがあちこちに差しているアルバム、という側面もある。
たとえば、これも沖縄音楽の巨星・普久原朝喜が第二次大戦時、滞在していた大阪の地で、沖縄戦で荒廃した故郷を思って書き下ろした名曲、”懐かしき故郷”が収められている。その他、「二見情話」「軍人節」「平和の願い」などなど。
それは、玉城一美自身の筆による父母への想いを記した小文が添えられているように、このアルバムには亡き父(2001年、没)の残した唄を歌い継ぐ、というテーマがあり、それに沿って曲を選んだ結果、玉城安定の生きた時代が時代であったから結果としてそのような内容になってしまった、というのが本当のところなのかも知れない。
けれど、先に述べた玉城一美のフワッと軽やかで暖かな歌唱でそれらが歌い上げられて行くと、もうこの世にはいない人々の魂よ安らかにと玉城一美が捧げる魂鎮めの唄、あくまでも春の風に似合いの優しい笑みを含んだ送り唄、との意味合いも出てくるようで、こいつはちょっと、ほっこりしつつも粛然とした想いにも駆られる、不思議な作品となっているとも言えよう。
ああ、いいね彼女は。よし、最初のアルバムもなんとか手に入れとこう、と決まる。
≪収録曲≫
1.春ぬうた三味線
2.バチクヮイ節
3.宝親がなし
4.汀間節・月ぬ夜
5.二見情話(共演:神谷幸一)
6.久米阿嘉節
7.多良間ションガネー
8.懐かしき故郷
9.越来・城前町
10.花ぬ恋心
11.華ぬ高離り
12.軍人節(共演:神谷幸一)
13.世持節
14.春や春
15.平和の願い