大病院の「霊安室当番」で争奪戦 葬儀業界の競争激化
葬儀業界の過当競争を象徴する場所がある。病院の霊安室だ。
病院で患者の死亡が確認されると、1時間以内に地下などにある霊安室へ運び込まれる。その手伝いをするのが、病院から「霊安室当番」に指名された葬儀社だ。
横浜市の葬儀社元幹部によると、当番の葬儀社は病院に呼ばれるとすぐに白衣を着て駆けつけ、病室から霊安室に遺体を運ぶ。
病院の霊安室は長時間、遺体を安置できず、病院から「葬儀業者は何時頃に引き取りに来るのか」と急かされるという。「この段階では亡くなった患者の遺族の約8割が葬儀社を決めておらず、途方に暮れている。『お手伝いします』と営業できる貴重な場所」という。
当番に指定されても通常、無報酬だが、公立の病院の霊安室の葬儀当番は入札になるほどの人気ぶりだという。「当番を落札するために、葬儀社の社員個々に別会社を作らせ、札を増やした社もある」(東京都内の葬儀社代表)
葬儀社元幹部によると、霊安室が4~5ある私立の大学病院では、当番に指名してもらうために、葬儀業者がナースステーションの看護師全員を旅行に連れて行ったり、病院OBを社員として抱えて指名を取ったりするほどの激しい競争があるという。
お葬式の「市場規模」は、コロナ禍でいったん落ち込んだ後、再び拡大しつつある。
東京商工リサーチ(TSR)が全国の葬儀社505社の24年の決算を調べたところ、売上高は約4052億円(前年比5%増)、最終利益は269億円(同22%増)と「増収増益」だった。
同年の休廃業・解散は66件、倒産は8件で計74件となり、13年以降で最多を更新。その一方、葬儀業の新設法人数は105社となり、新規参入が休廃業・倒産を上回る状態が続く。
24年の国内の死亡者数は、過去最多の約161万人。葬儀の数自体は増えているが、コロナ禍を境に、大人数が集まる「一般葬」は減り、「家族葬」や「一日葬」のような小規模な葬儀が増えている。TSR情報部の本間浩介さんは「低価格の家族葬を売りにし、ネットなどで派手に広告をする新興の葬儀社がM&A(企業合併・買収)で勢力を拡大。地域密着型の老舗との競争が激化している」と語る。