鎖無き世界   作:エ・駄・死だな

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血と悲鳴で埋め尽くされる日

 

 

 

 

「それでは次に、このエデン条約に参加する学園の主要人物につきまして───」

 

 

 

 

 

 

「……随分と賑わってますね、先生?」

 

「うん。頑張った甲斐があったよ」

 

 

 

 

 

車の中から見る景色は、まさに祭りだった。

 

ビルに貼り付けられてある大型モニターはもちろん、レストランにあるテレビや、電化製品店にあるテレビまで。全てがクロノス報道部のライブニュースに置き換わっている。

 

 

街にはトリニティとゲヘナの生徒が溢れ、牽制し合っている。こんな時ぐらい仲良くできないのか?

 

 

「今日はゲヘナもトリニティもどっちも休みだからね。他にも今日は休みの学校は沢山あるよ」

 

「…それほど今日は特別な日、ということでもあります。ゲヘナとトリニティ……敵対するマンモス校の平和条約。まだ実感はありませんが……」

 

「…これが和解の第一歩になるはず。だからこそ、今日は頼むね?ユウキ」

 

「……勿論です」

 

 

 

 

 

「そろそろ見えくる頃だけど………あ!」

 

 

周りにある近未来的な建物と相容れない、古臭い様な、同時に威厳もあるような建物が遠くに見える。

 

 

 

「ここまでで充分です。ありがとうございました…………先生、前に大量のカメラを持った生徒がいますが……あれは?」

 

「あれがクロノス報道部の生徒たちだよ。私達も多分、顔は見せないといけないかな……」

 

「はあ………とりあえず車から降りましょう。幸いまだ気づかれてはない様です」

 

 

 

都市であのポジションといったら、セブン協会が当てはまるが………あんな大人数でけしかけるものではなく、1対1の対面でインタビューをしていたな。まあ、あっちは人が集まりすぎるとネズミ共が集まったりどさくさの暗殺があるからだが……

 

 

 

 

 

 

「あ、今丁度あの「シャーレ」の先生が到着しました!我らが連邦生徒会の一員であり、今までに様々な功績が残っています!このエデン条約にも一枚噛んでいるとか!」

 

 

 

 

カメラのフラッシュを受けながら、万魔殿、ティーパーティーが作る道を通り中に入る。中は予想通りというかやはり古めな作りになっている。

 

 

「少し早めにきちゃったね……お散歩でもする?」

 

「迷子になる予感しかありませんが?」

 

「で、でもここは護衛で人もいっぱいいるし……いざとなったら道を尋ねれば…ね?」

 

 

「……まあ、それなら…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しばらく歩いていると、一際大きい……確か「教会」という名前の建物に着いた。

 

 

 

「…そこの風紀委員の方、今この線を越えませんでしたか?」

 

「は?そっちが線を踏んでたから、どかそうとしてたんだけど?」

 

 

奥の方で正実と風紀委員が言い合っているのが見えた。今少し聞いた声だけで、かなりしょうもない理由で言い争っていそうなのがわかる。

 

 

 

「…先生、割って入りますか?」

「うん。早く止めよう…あ、武力行使はダメね?」

 

「………勿論です」

 

構えかけていた銃を下ろし代わりに盾を取り出す。こんなのは喧嘩両成敗が良いと思うが……未だに先生の考えは理解できないな。

 

 

 

 

 

「貴様ら、何をし「きひひっ……」…うわ」

 

声をかけようとした瞬間、どこからともなく怪ぶ……正義実現委員長、ツルギが現れた。

 

 

「くひひひひひひ………!」

「ひえっ…!」

 

威勢が良かった風紀委員もあの有様。まあ同情はできる。

雰囲気はまさに一触即発……というよりかはツルギが暴走しそうだ。止めないと大惨事になる未来が見える。

 

「あ、あの……!みなさん、ここで喧嘩はダメです……」

 

またどこからか生徒がやってきた。服装的にトリニティの生徒っぽいが……とりあえず、この生徒に乗じてこのまま暴走阻止だ。

 

「ツルギ様。今騒ぎを起こせば、最悪エデン条約がお釈迦になってしまいます。ここは一旦落ち着いて…」

 

その言葉で、ツルギの目には理性が戻り……いや、変わってるか?これ。

 

「……確かに、そうだな。それに、ここにいらっしゃるのは、シャーレの先生だ。

 

「……覚えておけ」

 

一応ちゃんと効いたようで、すぐに人の言語を取り戻した。顔がイカつい以外は、冷静になれるちゃんと優秀な生徒なのはわかってるんだけどな……。

 

 

怯えて逃げてった風紀委員と正実を………いや何で正実も逃げるんだ?味方だろう?

 

 

 

 

 

 

 

「ではその、私は他の任務がありますので……」

 

頭に?マークを浮かべているうちに話がついた様で、ツルギはそそくさとどこかに行ってしまった。

 

「助けてくれてありがとう。ヒナタ、だよね?」

 

「……あ、はい!あの時以来ですね、先生」

 

「あの時、シスターフッドが来てくれて助かった」

 

 

 

先生はツルギを見送ると、止めに来てくれた生徒と話していた。どうやら面識があるみたいだが…誰だ?

 

 

「あ、ユウキは多分…初対面かな?ヒナタの方は見たことあるだろうけど」

 

「ユウキさんはあの時気絶してましたからね……顔は見ましたが、実際に話し合うのは初めてです」

 

「ああ、あの時ですか………面目ありません。ミカに敗れ、さらには勝手に突っ込んでお荷物になる始末……」

 

「い、いや!そんなことありません!私の方こそ、あの時はあまり役には立てず…」

 

 

「ま、まあ二人とも……私には傷一つも付いてなかったし、結局はこうやって無事に調印式を迎えられたんだから…ね?」

 

 

「そ、そうですね!」

 

「…………はい」

 

 

場が少ししんみりした感じがした。

 

「そういえば、ヒナタは何でここに?」

 

先生が気をきかせて話題転換してくれた。個人的に私も気になっていたから助かる。

 

「あ、サクラコ様の指示なんです。前回の事件から、また方針が変わりまして。これからは積極的に内政に関わっていくつもりです」

 

 

「…失礼かもしれませんが、良く通りましたね…?」

 

今まで無関心を通していた一大勢力が急に出張ってくるのは、都市であろうが基本的に不味い事態になる。それこそ猛反発をくらいそうだが…

 

「…事件の後、シスターフッド内でも、これまでの無干渉がこの事態を招いたという感じになっておりまして。外からの反発は……反発勢力の大部分のティーパーティーが反発する暇もなさそうな程忙しそうだったので…少し卑怯かもしれませんが、あまり面倒は無く通りました」

 

 

「そっか…じゃあ、サクラコも調印式に参加するの?」

 

「はい。そろそろ到着する筈です」

「そういえば、何故先生はここに?」

 

「調印式が始まるまでちょっと暇でね……ユウキと一緒に散歩をしていたんだ」

 

「そうですか…!よろしければ、古聖堂を案内しても良いですか?」

 

「良かったら、お願いしても良い?」

「勿論です!それでは、こちらに……」

 

 

 

先生が扉の前に立つ。私も追いかけるように向かう。

 

何故か、胸がざわめいた。

 

 

 

頭に、妙な頭痛が生まれる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───────────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そのルール、「制約」の役割を持つ人々のことを、戒律の守護者と呼んだんです。約束を破る者たちに─────

 

 

頭がクラクラする。割れる様な感覚だが、不思議と痛みは無い。

 

 

 

「…ユウキ?大丈夫?」

「えっ…いや…はい。問題ありません」

 

「どうか…しましたか?」

「最近、急にユウキがボーっとしたり、体調が悪くなる時があるんだけど……」

 

「それは……ユウキさん。じっとしててください。ささやかではありますが……」

 

ヒナタが手を合わせると、目を閉じて何か祈り始めた。

 

 

 

 

 

 

 

「……はい。これで少しは良くなると良いのですが……」

 

 

「ユウキ……ヒナタ、案内してくれた途中で申し訳ないけど、私達は一旦休みに行ってくるね?」

 

「い、いえ……ご迷惑をかけるわけには…」

 

「ただのしがないシスターの私からも、今のユウキさんは休んだ方が良いと思います……あ、保健所まで案内しますか?」

 

 

「うん。ぜひお願い」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「熱はない様ですが………原因不明の頭痛に襲われています」

 

「そっか……」

 

 

保健所にて私は診察を受けたが、これといった原因は無し。強いて言えば、少し混乱状態にあるらしい。そんなつもりは無いが…

 

 

「大丈夫です、先生……この通り、元気に動けますよ…」

 

 

「……大丈夫。私一人でも何とかなるよ」

 

「しかし…!」

 

「…私には、コレが─────っえ?」

 

 

先生は少し私の上を見ると、困惑の顔を浮かべた。

 

「…何ですか?もしかして、何か罠でも…」

「いや……ユウキ。ユウキの輪っかって…そんな、ボロボロだったっけ…?」

 

「……え…?な、それってどういう

 

 

 

 

ヒュオオオオオオオォォォン!

 

 

 

 

 

「……!?」

どこからか、空気を切り裂く様な音が響く。

 

 

この音は…いや、考えてる暇は無い!今は…

 

 

「先生!」

 

 

先生を押し倒し、私が上になる体制を取れば、いくらか被害は抑えられる。さらに盾も構えれれば…!

 

 

 

すぐさま先生に飛びつき、盾を取り出す……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

筈だった。

 

 

「………は?」

 

 

目と鼻の先、丁度先生と私を分ける様に、ナニカが出現する。青と水色と紫が混じった……楕円形のナニカを。まるで……切り裂いたかの様に現れたこのナニカを。

 

 

 

私は……コレを知っている。そして……コレを生み出せる者も。

それが何を意味するのかも。

 

 

その中から、一つの手が伸びてくる。その雪の様な白い手には、いくつもの波紋が付いている。

 

 

「ちょっと借りてくよ、先生?」

 

手を掴まれ、その狭間に引き寄せられる。

 

 

 

「貴様────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…っ何故貴様が………んなっ!?」

 

目を開けると、澄んだ水色が見える。振り向くと、あの厳かな古聖堂の姿が。 

 

つまり私は今……上空に放り出されている。

 

 

「チッ……!」

 

幸いどうにかるほどの高さなため、着地はどうとでもなるだろう。だが問題は……!

 

 

 

 

 

 

 

 

キィーンと、耳が痛くなる音が鳴り響く。

 

 

 

 

 

 

 

 

一つの影が、私の目を通って行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 






鎖で形作られた哀れな咎人よ。
唯何も感じぬままに。
全てを隠し、否定せよ。

それこそが、楽園であるが為に。




この作品は…

  • ギャグ
  • シリアス
  • 適度にどっちでも…
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