ようやくって言うか遅くねって言うか……まぁそんなんです。
「いやぁ、わざわざ皆をよけてくれるなんてね………うん。やっぱり私は一人の方がやりやすいかも」
「……お気に召した様で。ミカ様」
場所はロビー。ここならある程度広いし動きやすい。だがそれは相手も同じなはず。
「別に、敬語じゃなくても良いんだよ?ユウキちゃん。私は別に気にしないし、どっちかと言うと邪魔だから」
「そういう訳にはいきませんね。ミカ様がティーパーティーのトップから落ちるその時まで、敬語は使わせてもらいます」
「…ふふ。じゃあ、その余裕が無くなるまで追い詰めてあげる」
ミカの手にする銃から弾が放たれる。
「………くっ…」
明らかに、先程のアリウスの生徒達やナギサの護衛より、一発一発が重い。
「ここで時間を食う余裕はないです……………ので。最初から本気でいかせてもらいますよ!!」
二つの銃にバッテリーを押し込み、セレクターを回す。瞬間、二つの銃が青白く輝き始める。
「本気、かぁ…。じゃあ私もちょっと本気、だしちゃおうかな?」
ミカはそう言うと、手を合わせ祈るポーズを取った。
「させませんよ!!」
「ううん……もう、止めなくても良いよ」
「何を言って……!?」
いつの間にか、私の周りには何か……光る球体が幾つも回っていた。これが安全ならどれほど良かったか。しかし、私の本能は警告を鳴らしている。
それは段々と私に回りながら近づいてきて…
「…だって、もう終わってるから」
「やば
「うーん……やっぱり、ユウキちゃんのためだけにこんなリスクを払うのは、良くなかったかな…?……ま、いっか!とりあえず加勢しに…
ドォン!!
………っ!あーもうほんと、何でこんなに…」
大砲でも発射されたかの様な音が煙から放たれる。それ共に現れたのは、青白く光った弾丸。
「……流石に効きましたよ。ミカ様?」
無言で彼女は銃を構える。その先には、服がボロボロになり傷だらけの、先程ミカが全力を向けた彼女だった。
「休んだ方が、良いんじゃないの?その怪我、ほっといたら悪化するじゃんね?」
「張本人が今更何を……ミカ様。そんな理由で休める程、この仕事は甘くは無いので」
「…甘くない、かぁ………ユウキちゃん、アリウスの子達にとっても似てる。言動も、姿も」
「あの馬鹿共と一緒にしないでください………ミカ様に敵意を向けられる筋合いはありますが、馬鹿と言われる筋合いはありません」
「あはは……ユウキちゃん、意外と毒舌なんだね。でも、馬鹿呼ばわりは私も嫌かなぁ」
「私から言わせてもらいますと、アリウスは、馬鹿が知恵を絞った様にしか見えませんね。あぁ勿論、ミカ様もそこに入っています」
「…ふーん。そっか」
ミカは指をトリガーにかける。
「そうですね。お喋りはここまでにしておきましょうか」
それは彼女も同様だった。
お互いの銃先を相手の額に向ける。先に動いたのは…………
「……えっ!?」
「焦りましたね?ミカ様!!」
ミカの放った弾をしゃがんで避け、銃口をミカの鳩尾に向ける。
「さっきのお返しです…!」
そのままゼロ距離でフルオートをぶつける。いくらミカが頑丈であろうとも、この物量を全て急所に当てればただでは済まない。
「うぐっ!?…こ、この…!……ってうわ!?」
ミカが距離を離そうと蹴りを放つ。しかし彼女は、ミカの足に手をかけると逆に勢いを利用し転ばせ、押し倒す形にする。
「隙だらけですよ!!」
今度は額に銃弾を放つ。これがいつもの彼女なら、少し罪悪感で手を止めようか迷うだろう。しかし極限の状態でアドレナリンが出まくった結果、彼女は今一種のハイ状態になっていた。
「つっっっっぅぅぅ!!」
対してミカの方は、額に普段どころか一生あり得ない量の銃弾をくらった挙句、声にならない悲鳴をあげていた。
バババババババ…カチッ!カチッ!
「チッ…弾切れか…!なら…………っんなっ!?」
リロードを済ませようとした彼女はありえない力で押し倒され、目の前に拳が見える。
そしてその拳が自らの額に向かっていることを彼女は悟る。
「……さらにお返しっ!!!」
その言葉を最後に、半泣きのミカの拳は彼女の額へと振るわれた。
ドゴォォォォォォォン!!!
「えっ!?……今あっちから凄い音が…」
「コハル!しゃがんで、危ない!」
「えっあっうん!」
「ど、どうなったんですかね…?ユウキちゃん、無事だと良いのですが…」
「ヒフミ!そっちからまた来てる!」
「……!…はい!」
「はあっ、はあっ……!」
割れた地面に、煙が立ち込める。
ドォン!!
再び大砲の音が鳴り、ミカの頬を掠める。
「っ!ああもうほんとに、本当にめんどくさいよ!!ユウキちゃん!!!」
ミカはすぐさま距離を取り、そして銃を構えた……筈だった。
「……!銃が…!」
「ミカ…様…も、随分と迂闊……ですね…!」
彼女の右腕には、しっかりとミカの銃が握られていた。
「それにしても…どんな馬鹿力ですよミカ様…!!危うく三途の川が見えました…!」
「…それは、ユウキちゃんが悪いんじゃん……顔が傷付いたらどうするの?」
「はは……先生にでもそのご尊顔見せるんですか?ミカ様の顔だったら先生だって……あぁ、ただその馬鹿力を出したら先生死んじゃいますね…………ふ、ふふ…そう考えたら、まるでゴリ
「折るね♪」
言って気づいた時にはもう遅い。その拳はまたもや目と鼻の先に……
「えっあちょっと待
半泣きのミカと、白目のユウキ。
側から見ればただのギャグシーンで、この戦いは終わった。
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「みんな、大丈夫…?」
「はい…!しかし、まだ来るんですか…!」
「どうしてこんなに…幾ら重要な作戦でも、アリウスの半数をリスクを冒してまで…?」
もう既にかなりの人数を倒した筈だが、未だに減っている様には見えない。
「ユウキちゃんの方は…大丈夫でしょうか…?」
そして、銃撃戦が再び始まろうとした時。
「あ〜終わった…!ホントにユウキちゃんめんどくさいんだから…」
「……っミカ…!」
体育館の入り口から、ミカが出てきた。
「あれ…もうてっきり終わってるかと思ってたけど……まぁいいや、早く終わらせちゃって?私、もう疲れちゃった」
ミカの服は所々破けており、傷も至る所に付いている。激戦であったことは間違いないようだった。
「どうして…」
「…どうして、こんな事を…?」
「どうして、かぁ………別に、そこまで複雑な事じゃないよ?私はエデン条約を阻止する。それだけ」
「だから、何で…!」
「簡単、私はゲヘナが嫌いだから。あんな角がついてる奴らと平和条約なんて、冗談みたい。絶対裏切られるじゃんね?」
「そのためにアリウスと手を組んで……あ、アリウスと仲良くしたいってのは、別に根っからの嘘じゃなかったよ?和解はしたいと思ってたし」
「まあ、そのためだけにセイアちゃんも……そしてこんな大量の部隊を率いてナギちゃんを襲撃したの。ユウキちゃんは私の事疑ってたから、絶対邪魔してくると思ってちょっと多めに連れてきちゃったけど」
「アリウスは…最初からクーデターの為の道具だったってこと…?」
「んー…うん。確かにこれはクーデターかもね。でも、道具ってのは酷いなぁ……和解はちゃんとするつもりだったよ?アリウスと私……win-winってやつじゃんね?」
「あなたのことはわかるよ、白洲アズサ?私はあなたにとっても感謝してる。何だって…………あなたは今からナギちゃんを襲撃した犯人になってもらうからね」
「……!!そ、そんなこと、ハスミ先輩達が調べればすぐに…!」
「でも、ナギちゃんがいなくなったら、消去法で私がホストになる。そもそも、調べさせることもさせないじゃんね?」
「だとしても、絶対に不信感を持つ人は出る…その時には「確かにね?でも、トリニティの皆はゲヘナが大嫌いだよ?いざゲヘナを消せるってなったら、そんなことなんてどうでも良くなるんじゃない?」
「うーん……これ以上話してもダメそうだね?時間はかかるかもだけど………みんな仲良く監獄行きだよ。助けも来ないし……ね?」
「いいえ。助けは来ます」
「何を言って…「ほ、報告です!トリニティの生徒が一部、こちらに向かっています!」……?」
「いますよ。ティーパーティーにでも命令できない、独立的な集団が」
「独立的な集団…?………………あぁ、そっか……確かにいたね………」
「…シスターフッド」
「けほっ……き、今日も平和と安寧が、みなさんと共にありますように……けほっ」
「マリーちゃん!?あ、あれ…何で二人だけ…?」
「私以外の皆さんは体育館の入り口で戦っていまして………私だけ到着報告のために来ました!それと、あと…」
マリーは背負っていた傷だらけの人を下ろす。
「ユウキちゃん!?大丈夫!?」
「…立ては、するな」
「い、いや無理はしなくても…!」
「大丈夫だ。応急処置はセルフでしてある。まだ数十分は動ける」
「で、でも………!」
「護衛なんでな。まだくたばっちゃダメなんだ。だから……今は何も言わないでくれ」
「…ふーん。ハナコがどうやってシスターフッドを動かしたのか、色々気になるけど……そう考えてる暇は無さそうだね?」
「これであなた達は一気に劣勢に……さぁ、大人しく投降してください!」
「…投降、かぁ……ふふっ。確かに私達は劣勢だね。でも、ここで大人しく投降するのもなぁ……まぁ、意地ってやつかな?」
ミカとハナコが話していると、後ろから一人のアリウスの生徒が近づいてきた。
「ミカ。最終手段だ、アレを使う」
「最終手段?アレって……もしかしてアレ?…私、見ただけで触ったこともないんだけど……」
「大丈夫だ。使用感は普通の銃をそう変わりない。心を強く保てば問題なく使える」
そう言うと、アリウスの生徒…おそらく指揮官らしき生徒はミカに
「…………………は?」
その歯車は自らの役目が終わるまで、止まることなく回り続くだろう。その道に、その果てに何があろうとも気にすることはない。気にする術はないのだ。
そして、その歯車が止まる頃には、私には憎悪しか残らないであろう。
この作品は…
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ギャグ
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シリアス
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適度にどっちでも…