鎖無き世界   作:エ・駄・死だな

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人の境目

 

 

 

 

 

 

 

「……眠らない……いや、眠れないのか?」

「は、はい………」

 

「これで、後はアズサだけだな。私は今から巡回に行く。私が帰ってくる頃に寝ないとまずいぞ」

 

 

「え…?あ、ハナコちゃんにコハルちゃんまで……!」

 

 

「明日は試験なのに、何してるのよ。休むことも大事って言ったのはそっちでしょ……!?」

 

「まぁ、そうなのですが……」

 

 

「……先生、アズサを探しに行ってきます。理由は……わかりますよね?」

 

「…うん。わかった…でも……」

「わかっています」

 

 

先生の顔からは未だ不安が残っていた。私がアズサを、もしかしたら。そう顔に出ていた。

 

「私は、先生に従います。間違っても、先生が望まない事はやりませんよ」

 

先生は黙って頷いた。

 

 

 

 

 

「……それでは」

 

 

 

ドアを開け、出入り口に向かう。

そして、スマホを開き、GPSを確認する。アズサは今……

 

「ユウキ、どうしたんだ?」

「…!あぁ…いや、今から巡回に向かうつもりだ……ヒフミ達が心配してたぞ。先生の部屋に向かうと良い」

 

 

「そうか……ユウキも頑張ってくれ」

その声は、恐怖と同時に、何かを決意した声だった。

 

 

 

 

二人がすれ違う。一人は夜の道に。もう一人は仲間のいる場所に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ところで、アズサ」

 

「……?…何だ?」

 

「………前の学校はどうだったんだ?」

 

「………っ!………楽しかったよ」

 

「……そうか…」

 

「……急にどうしたんだ?もしかして、緊張しっっ!?!?」

 

「………はぁ…ま、やらないよりかはマシだよな…?」

 

「何を「友達ごっこは楽しかったか?白洲アズサ」…………っ…」

 

「………調べはついてたさ。…で、楽しかったか?友達ごっこ」

 

「………何でわか「質問に答えろ。楽しかったか?」…………」

 

「これから全ての情報を吐かせる。その前に、質問にこたえてくれるか?」

 

「…………それ、は……」

 

「…………何にも縛られる必要はない。正直に答えろ」

 

「……………う、ぁ……」

 

「今にも泣き出しそうだな……でも、その涙は、任務失敗からくる罰への涙じゃなくて………」

 

「…………」

 

「………顔でわかる。楽しかったんだろ。友達ごっこが。だが、その体中に巻かれている、見えない鎖がお前の喉を潰し、声を止める」

 

「……ぁっ………」

 

 

「…………選ばせてやる。その鎖に結ばれたまま、人形として、アリウスとしてかつての仲間と終わらない人生を生きるか、もしくは………その鎖を断ち切り、その目の光を愚かにも残しながら、見えない人生を歩くか。回答は、先程の質問で答えてもらおう」

 

 

 

 

 

 

 

 

───────────────────

 

ここに来た初めは、考えもしなかった。私が、サオリ達を捨てて生きるなど。

確かにここはアリウスよりもずっと良い。でも、私には似つかわしくなかった。

 

 

 

 

 

「……………」

 

彼女の目には、未だに冷たさと、その中にある希望があった。

 

「…………っ……」

 

その目は、奇しくもサオリとそっくりだった。

 

「………っぁ……」

 

Vanitas vanitatum et omnia vanitas. そんなことはわかっていた。どうせこんな友達ごっこも。

 

「…………………」

 

…………でも。

 

「…………っ…!」

 

例え、全て虚しかったとしても。

 

「………かった…」

 

…それが、理由にはならないだろう。

 

「………楽し……かったぁ…!!…私は…もっと……ここに居たい………!!!」

 

「………そうか。つまり…お前は、過去を切り捨て、見えない人生を歩むと、そう言いたいのか?」

 

………ふと、みんなの顔が浮かんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………違う……!」

 

「……………は……?」

 

「トリニティのみんなと……アリウスのみんな……どちらかしか選べないなんて………そんなルールは無い……!!」

 

「……何を………言って…」

 

 

「私は…どっちも選ぶ!アリウスのみんなも、トリニティのみんなも…!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「本当に?」

 

「……え?」

 

「本当に、できるの?」

 

気付くと私は、見た事が無い………いや、私は知っている。ここは……

 

「そう。貴女が大好きなアリウス」

 

「……誰?」

 

「私は…いや、ここで名前を言うべきじゃないね。まぁ、心の中にある……ナニカだと思って良いよ」

 

「……何で…どうやって…」

 

 

 

 

「許さない!!」

後ろから罵倒が聞こえる。

「……っ!?」

振り向くと、そこにいたのは…

「貴女は……私達を裏切った!!」

アリウスの、生徒だった。

 

「貴女だけ…!!アリウスは学校ごと壊され、私達はもうすぐ牢獄の中に……なのに……なのに…!貴女だけ!」

 

 

 

 

 

 

 

「こうなる可能性もあるんだよ?」

 

「こんなの………唯の妄想…」

 

「うん。確かにこれは単なる幻。でも、こうならない可能性は?」

 

「……そうはさせない。私が、こんな結末…「できるの?」……っ」

 

「ほら………向こう側の、現実のあの子も、そう言ってるじゃ無い」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はは………そんなハッピーエンド……は……は…できるのかよ!!俺より弱いくせに!!!」

 

「でも………」

 

「あの子はね、貴女と一緒なんだ。でも、あの子が言えなかった、できなかった事を、貴女は今やろうとしてる。………あの子でもできないこと、貴女にできるの?」

 

…ユウキの顔には、怒りと憎悪で染め尽くされていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「もしかしたら、こんな世界もあったかもね?」

 

「何を言って……」

景色が変わり、映し出されたのは……

 

 

 

「!!ヒフミ!コハル…!ハナ…コ…?」

 

 

壊された合宿場所に、()()()()()()()()()()皆。私なら、いや、私だからわかる、その絶望が。

 

「あ……ぁぁぁぁ!!!」

 

その上には、見慣れたあの制服が。

 

「アズサ……言っただろう?Vanitas vanitatum et omnia vanitas. 全ては虚しいのだと」

 

「今頃トリニティもゲヘナも火の海だ。お前は何かしようとしていたが……できるわけがないだろう」

 

「……サオリィィィィ!!!」

 

銃を向け撃とうとするが、そこにはまた何もない、アリウスの風景が映っていた。

 

 

 

 

「……こんな世界になるかもしれない……それでも、貴女はその選択をするの?」

 

 

「………はっ…はっ…!」

 

 

「あの世界の貴女達を見て、貴女はどう思った?」

 

 

何も出来ない、私があまりにも惨めに見えた。

 

 

「じゃあ、今の貴女は何になりたい?」

 

 

それ……は……

 

 

「ふふふ………大丈夫だよ…」

 

 

………

 

 

「ああはなりたくないって、そう思ったよね?」

 

 

 

………うん。

 

 

「そうなるためには、何が必要だと思う?」

 

 

 

……何が…必要か……

 

 

 

「言い方を変えよっか。何をすれば良かったと思う?」

 

 

 

 

……………

 

 

 

 

 

貴女は……私達を裏切った!!

言っただろう?全ては虚しいのだと。

 

 

 

できるのかよ!!俺より弱いくせに!!!

 

ユウキの顔は、怒りと憎悪に染まっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

………いや。

彼女の顔は……確かに怒りと憎悪で埋め尽くされている……けど。

 

 

 

 

同時に……あの顔の奥に……その怒りよりも大きい、何かが……ある。

 

 

 

 

それは………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

後悔。

どうしてああできなかったんだろう。

何であんな選択をしたんだろう。

何で私は友達を見捨てたんだろう。

 

 

 

 

 

 

…何であの子みたいに…

 

…言えなかったんだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さっき……貴女は私とユウキは一緒って……言った。それなら……ユウキは、私がどっちかだけ選んだ姿って事……」

 

「私は……どっちかを選んで、あんな末路なら………どっちも選んで、希望がある、見えない先を選ぶ!!」

 

……へぇ。……うん、そっか。

 

 

……………あなたの出番みたいよ。

 

 

「あんな結末にはさせない!!だから私は…!」

 

……今、君が望むものは?

 

「……結末を変える様な、そんな力…!例え強くなくても……何も負けない意志を手に入れる!!」

 

 

 

……そうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……私は」

 

白を基調とした制服に、まるで放浪者かのような黒の布を被る。

翼が黒く、しかし白を残していくように染まり、呼応するかのように一回り大きくなる。

 

左手に本を、右手に鎌を。

ヘイローですら黒く、しかし美しさを残す色に。

 

 

 

 

 

「………は?」

 

「…私は、どっちも選ぶ。救ける」

 

 

……それが私の役目だから。

 

 

 

 

 

 

 

 

───────────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まさか……!?いや、まさか…!!

 

発現したというのか?

 

 

 

………EGOを。

 

 

 

アズサは目を閉じたまま、空中に浮かび上がり……やがて………落ちた。

 

 

その時にはもう、あの黒い布もヘイローも。一つも見当たらなかった。

 

 

 

 

後ろからドタドタと足音が聞こえる。

恐らく今の騒ぎを聞いた先生達だろう。

 

 

 

 

「んぅ………」

 

…幸い、アズサはすぐに目覚めそうだ。

 

 

アリウスの事ならその時に話せば……

 

いや、それよりも……

 

 

 

 

謝らないと。今すぐに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 







怒りは私を燃える炎の様に光り輝かせ、
欲は私を形作った。


この作品は…

  • ギャグ
  • シリアス
  • 適度にどっちでも…
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