なんかどんどん一話ごとの文字量が多くなってる気が…
「…ユウキちゃん?どうしたの、ぼーっとして?」
「……すみません。エデン条約、ですか……確かに、このゲヘナとトリニティの対立は避けた方が良いとは思いますね。仲直り、とまではいかなくとも、せめて……学校同士の抗争や、最悪…戦争はなんとしてでも阻止しなくてはいけません」
「…うん。そうだね、ユウキちゃん……」
「あ…いえ、気を落とすつもりでは…」
重い話をしたからか、明らかにテンションが下がったミカを慰める。
「…エデン条約、確かにゲヘナとの戦争は避けたいけど……本当に、できると思う?」
ミカがふと私に尋ねてくる。
「ナギサちゃん……つまりトリニティは、表面上はエデン条約に同意してる。でも、ゲヘナは同意してくれるかな?」
その声には、心配以外にまた違う何かが含まれている気がした。
「それに、トリニティも表面上は。正義実現委員会の副委員長は大のゲヘナ嫌いだし……そもそもみんなゲヘナに良い感情を抱いていないよ?」
「……だとしても、です。ですが、私は護衛。先生がエデン条約に同意してもしなくても、私のやる事は変わらないですから」
私の命令は、シャーレと協力し、対価を得ること。そのためには先生には生きてもらわないといけない。だから、戦争もやらせたくはない。
「うん……うん、そうだね。私も頑張るから、ユウキちゃんも頑張ってね」
ミカは何かに納得したような素振りで頷き、微笑んだ。
「……あ、もう入っても良さそうですね。行きましょう」
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ティーパーティーとの話を終え、先生と私は外を歩いていた。
「これから、補習授業部の皆にユウキを紹介しに行くんだけど…ユウキ、はい」
声とともに何かの……本?とペンを渡される。本の中を見ると、なんと真っ白。
「……どういう意図で?」
思わず先生に問いかける。
「いや……ユウキも勉強しないと。学校ほったらかしにしてるのもまずいし…ね?」
「…ね?じゃありませんよ………私のするべき事は護衛。このような事は………」
「まぁまぁ……そう言わず、ね?」
手をワキワキしながら近寄ってくる。
最近キモさが抑えられたと勘違いした私が愚かだったかもしれない。
ゴッ!
「ぐっ!?」
「そういうことなら、コレも私のするべき事として覚えておきますね?先生」
「う、うん………そう…だね……」
威力は前の時よりだいぶ抑えた。実際、先生は悶絶せず話せている。
「…勉強に関しては、夜の巡回中に学んでおきます。護衛中はしませんよ」
「し、してくれるだけでもありがたいよ…!」
「先生……それにしても、まだ着かないんですか?それに、学校からは少し離れて…」
「い、いや……あ、ほら見えてきた!」
先生が前を指差す。そこにあるのは…
「……廃墟かなんかですか?凄い有様ですね…」
「…確かに、そう言われればそう見えるけど……だ、大丈夫かなぁ…?」
「何で先生が知らないんですか…?……あ、誰か見えてきましたよ。こっちに向かってきました」
「うーん……あ、ヒフミ達だ。大丈夫、構える必要は無いよ」
「先生〜!!大丈夫ですか〜!?」
妙な鞄を身につけた生徒がこちらに向かって来る。後ろにはもう三人程いる。
「先生〜!!ってあれ……初めましての方ですか?」
「あ、あんた…誰?連邦生徒会の生徒?」
「明石ユウキと呼んでください。先生からの依頼で、先生の護衛を任されています」
「合宿中、ずっと私の側にいるから、次第に仲良くなれると思うよ…!」
「護衛、か……正直、先生を守るなら私達だけで充分な筈だ。襲撃対策に罠も至る所に仕掛けるつもりだし、夜は私が巡回する」
「…夜の巡回は私がやります。聞いたところ、貴女達は勉強をしないといけない様子。巡回をやっている暇はあるのですか?」
「…むっ」
紫の目を持つ生徒がそう言うので、負けじと言い返す。
「け、喧嘩はしないでね…?」
「…喧嘩をするつもりはありません。ただし、夜の巡回は私がやります。……夜は寝た方が良いですよ。明日のコンディションに壊滅的な影響を及ぼします」
「…わかった。でも、その代わり建物内に罠を仕掛けてほしい」
意外と素直に受け入れてくれた。何罠を設置する必要があるのかは聞かないでおこう。
「私達も今合宿場所に着いたんですけど……まだ中には入ってなくて。一緒に入りましょう!」
「しばらく使われていない別館の建物と聞いたので、冷たい床で裸になって寝ないといけないかと思ってましたが…」
ピンク髪…多くないか?まぁそれはそれとして、ハナコ達は合宿場所を一通り回ると、寝室に着いた。
「広いですし、きちんとしてますし、可愛いベットもあって何よりです♪」
「これなら皆で寝られそうですね、裸で♡」
「さっきから何でちょいちょい………
「……先生、少し空けますね」
「え…?あ、うん」
……一週間とはいえ、紫の目の生徒…アズサの言う通り、地形の把握はしておいた方が良いだろう。今なら先生は補習授業部の皆で守れる範囲だ。
ドアを開け廊下に出ると、奥からアズサが来ていた。
「……何をしていました?白洲アズサ」
「…アズサでいい。それと、敬語も」
「……まぁ、仲良くなるのはいざという時の連携に役立つからな、わかった。アズサ、何をしていた?」
「この建物の偵察をしていた。いくらか心配はあるが、外からの入り口も二つだけで守りやすい」
「……罠を何処に仕掛けるかぐらいは後で教えてくれよ、巡回中に音が鳴るのは不味い」
「勿論だ。ヒフミ達はどこに?」
「丁度この後ろの部屋だ。早く行った方が良いぞ」
後ろに指を差しながらそう言う。
「……ユウキは何をしに行くんだ?地形の把握なら夜にやれば…」
「それもしようかと思ったんだが……まぁ、単なる実験だ。気にする事でもない」
「…爆薬ならある程度は貸せるぞ」
「気にするなと言ったんだがな……それは罠にでも仕掛けておけ」
そう言ってアズサの横を通り過ぎる。向かった先は……大広間、先生が体育館と言っていた。
腰につけている筒を取り出し、変形させる。そして……その筒からは橙色のバリアが……
出ない。
いや、実際にはバリア…というか半透明な盾はでているのだが、いかんせん小さい。小さくなった私の体すら覆えない小ささ。それに、色も橙から水色に変わっている。
…確定、だなぁ…
都市の頃、いや図書館でのんびりしていた時より、明らかに出力も、容量も減っている。
それに、ミレニアムでのアリスとの一戦。一回ビームを放っただけで動きが自分でもわかるほどに落ちた。
…神秘を得た事により、基本的なスペックは上がったが……本来の私の強みを無くしているのではないか?
……出力上げてみるか。
「はっ……はっ………!!」
無理だ。3時間程色々試してみたが,出力はどうあがいても上がらない。無駄に体力を消耗するだけ。
神秘による弱体化だとは思うが……それが事実なら、つまるところ神秘は……
「ユウキさん?どうしたんですか?」
体育館の入り口から声が聞こえる。振り返ると、会った時とは違う服装をした皆がいた。
「そちらこそ……服まで変えてどうしましたか?」
「ユウキ、敬語」
アズサに睨まれる。
「ぁ………はい、何をしてた?」
「勉強に入る前に、大掃除をしようと思いまして。この付近を今から掃除するつもりだったんですが……」
「汗までかいて……なにしてたのよ!?」
「ふふふ♡だれもいない、一人で汗をかくことって、一体なんでしょう?」
「なっ……じょ、冗談言わないでよ!!」
また何か一人で怒ってる……
「…ちょっと実験しててな。先生の側を離れたのは悪かった。この一週間では最後にするから、見逃してほしい」
「別にそんな許す許さないの話じゃ……先生も大丈夫だって言ってましたし、それにずっと警戒するのも疲れると思います」
「楽しむのも大事だ。今のうちに楽しんでおかないと……」
アズサの顔に影が降りる。今までの言動といい、まぁなんか良くない事情があるのだろう。
「……と、ところで……あんた、運動服持ってる?」
コハルが私に尋ねる。
「ないな」
「じゃあ、替えの服は?」
「あるにはある」
「ユウキさんには悪いですが………掃除、手伝ってくれませんか?」
「一緒に何かをする事で、交友も深めるというのも良いでしょう?交友を深めて、どっちも丸裸で喋れるような……そして、最終的には本当に裸で……♡」
「何を言ってるのよ!!」
「………はぁ、掃除なら今すぐ取り掛かろう。私は何をすれば良い?」
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「…屋外プール?何故そんなものを…?」
「あんなに大きいプールがあんなままなのも、なんか寂しいですし………それに、プールの掃除って、とっても楽しそうですよ!」
「私達はもう水着に着替えちゃったし……あんた、水着は?」
「……水、着…?……あぁ、そういう意味か」
最近は意味を予測できるようにもなってきた。水着というのは恐らく濡れてもいい服の事だろう。
「持っていないな。このまま始めても問題は無い」
「え…?いや、でも…」
「嘘でしょ!?あ、あんたまさかハナコと同類…?」
「ふふふ♡それじゃあ、早速取り掛かりましょう♡」
プールの掃除と水入れが終わって。
「……結局、実際プールに入ることはできませんでしたね…」
「そういえば、水を入れるのは結構時間がかかるものでしたね………ごめんなさい、失念していました」
すっかり日は暮れて夜となり、水面はプールの中にある光で輝いている。水が光るというのもなかなか不思議なものだが。
「……私は先に巡回の準備をさせてもらう。今日が終わる頃には眠った方が良いぞ」
「はい!それでは、また明日!ユウキさん!」
次の日の早朝。巡回を終えた私は、2時間程休息を摂ろうと自分の部屋のベッドで寝転んでいた。
…体が思うように動かない。
今思えば、それは前兆だったのかもしれない。
いや、その時に、
寝ている筈なのに、滝のように冷や汗が出、金縛りにでもあったかのように動かない。
その現象の原因を、私は近い未来に味わう事になった。
望みは足を刺す一つの釘でしかなかった。
この作品は…
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ギャグ
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シリアス
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適度にどっちでも…