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盾の勇者の成り上がり  作者: アネコユサギ
外伝 真・槍の勇者のやり直し
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正義の絆


 おや? 正義の絆はどうしたのですかな?

 俺の予想では精々樹の仲間は樹の姿を隠して活動すると思っていたのですがな。

 錬の仲間はどうにも真面目でラフミのサポートを受けて活動はしてますが、それでも錬には一定の対応をしてますぞ。

 多少対応の質は落ちるけど似たような体制で活動すると読んでいたのですがな。


「その件を説明するのにはまず、どうしてこんな姿になってしまったのかを説明しなくてはいけません。錬さん、あなたも誰がこんな真似をしたか知っているでしょう? 尚文さんには事情を説明しているのですから」

「いや知らん。次の波に備えて活動となって狩りに出かけたらいきなり意識を失って気づいたらゼルトブルに到着した積み荷の中でこんな姿になっていたんだ」


 錬の説明に樹は深々とため息を吐きました。


「はぁ……つまり不意打ちを受けてしまったと、なんとも間抜けな話ですね」

「なんだと? 樹、その言い方では俺たちをこんな姿にした奴を知っているという事か!」

「ええ知ってますよ。しかも堂々と姿を見せて名前まで名乗ってましたからね」

「そうなのか! 言え! 誰だ。俺たちをこんな姿にした奴は!」


 錬の詰問に樹は拳を握りしめてました。


「ええ、忘れもしませんよ。奴はあの日、僕の泊まった部屋に突然現れました。そしてウサウニーと名乗り僕を痺れさせ『国に良いように踊らされて調子に乗っている君にこの国の真実を教えてあげようと思ったんデスピョ~~~ン』と言ってこんな姿に変えたんです」


 驚くべき敵の姿を知ったとばかりに錬は樹のセリフに息を飲んで聞いているようですぞ。

 ちなみに話を聞いていたお義父さんや周囲の者たちはなぜか俺に視線を向けてますな。

 なんとも言えない、悲しそうな顔ですぞ。


「そのウサウニーと名乗る相手は名前の通りウサギのような姿をしており、頭には僕と同じサンタ帽子を被った奴でした」

「国に良いように踊らされて調子に乗っている。事実ですな」


 俺の言葉にお義父さんや周囲の者たちが何やら眉を寄せて何度も瞬きしていますが事実ですぞ。


「ええ……そうですね。その点で言うのならば間違いないでしょうね。この姿になる事で僕は文字通り真実を目の当たりにすることになったのですから」


 お? どうやらしっかりと学習できたようですぞ。

 よくできましたな。


「えっと……樹、そうして……その姿はなんて呼ぶべきなのかな?」

「リスーカという生き物らしいですね。錬さんも種類は違うようですが似た種族になってしまったんですよね」

「ああ」

「なんだなんだー? 兄ちゃんたち帰ってきたのかー?」


 と、ここでキールが顔を出してきた所で樹は錬とキールを交互に見て眉を寄せつつ瞬きをしましたな。


「わー可愛いのが増えたー」


 ルナちゃんはニコニコですぞ。


「似た種族はいるという事ですか。となると一概に犯人と決めつけるのは難しくなりますか」

「おい。何を見てそう判断した!」

「どうしたんだー?」


 キールと錬はよく似てますからな。若干柄が違うだけで同種族と言われても不思議はないですぞ。

 ちなみにルナちゃんはキールにサンタ帽子を被せていることがありますな。


「話が逸れているぞ。それからどうしたんだ?」

「ええ、そうですね、何があったかというと――」


 そう言いながら樹は俺がリスーカに変えてやった後の事を話し始めました。





 高笑いと共に去って行ったウサウニーと名乗る相手を動けずに見届けるしかできなかった樹は、麻痺が解除されるまでそのまま倒れていたそうですぞ。


「く……はぁ……はぁ。やっと痺れが抜けましたか」


 動けるようになってすぐに麻痺解除の薬を弓から出して服用し治療した樹は徐に立ち上がって部屋から出て仲間の元へと向かったのですな。


「マルド、ロジール! 皆さん! 緊急事態です!」


 急ぎ宴会をしている燻製共の所へ樹は行きましたぞ。


「わははは! ああぁ? なんだこの汚れた獣人は」

「一体俺たちに何の用だぁ?」

「ったく、ここは偉大なる人間様が楽しむ神聖な酒場よぉおお?」

「こんな所に来るとは身分不相応だと思わないのかこの下等生物があ!」


 と、酒盛りで飲んだくれている仲間たちの手荒な歓迎が待っていたようですな。


「あなた達は……その態度に関して後で注意しなくてはいけませんが話を聞きなさい。今、僕はこんな姿になってしまいましたが弓の勇者である川澄樹です。先ほどウサウニーと名乗る獣人に謎の魔法を掛けられてこんな姿になってしまったんです」


 かなりイラっとした樹ですが今は事態が事態なので仲間たちに頼ろうと事情を説明したのですぞ。

 すると酔っぱらっていた燻製たちがキョトンとした表情で見合わせてから樹の方へ顔を向けたそうですぞ。

 そして樹の仲間に居る魔法使いの男、ウェレストという奴が近づいて樹の頭にポンポンと乱雑に手を置いたそうですな。


「確かに魔法の中には姿を変える類の魔法はあるけど激しい動きをすればわかるくらいには簡単に解けるものだぜ」


 と、バンバンとかなり強く樹の頭を叩く動きに変わったそうですぞ。


「いたた! ウェレスト! そのような魔法があるのはわかりましたがそれとこれとは別です! 良いから皆さん、緊急事態だと言っているじゃないですか! 僕も解除方法も治療法もわからない状態なんです」

「ああ!? 事もあろうにあの生意気な小僧を名乗るとは何事か!」


 燻製がいつまでも騒ぐ樹に向かって胸倉をつかんで持ち上げながら怒鳴り散らしたそうですぞ。


「生意気な小僧? マルド……あなたという人は僕をそんな風に思っていたんですか」


 仲間たちの言葉遣いや態度に苛立ちを覚えた樹は怒りを押し殺しながら応答をしていたそうですぞ。


「やー本当、だるいよなー正義正義とさ。挙句、あの王女が盾の悪魔が獣人共を奴隷として使役してるとか囁くもんだから面倒くさい事になったもんだ」

「ボッコボコにされて格好悪いったらありゃしない挙句、魔法の盾にまでされて滑稽ったらありゃしなかったわよ。笑いをこらえるのに苦労したわ」

「言ってやるなよ。はは、お坊ちゃまって感じだけど盾の悪魔を裁こうとしてたんだし、しっかりとあいつを殺してくれるかと思ったら出来ないとかね」

「あなた達は……」


 ここで既に樹の怒りが随分と溜まっては来ていたようですぞ。

 まあ、姿を変えただけで馬脚をすぐに現すとは愚かにも程がありますな。


「僕が弓の勇者だというのが信じられないというのならこれでどうですか? そもそもパーティー項目を確認してください!」


 勇者の証明として持っていた弓の形状をコロコロと変えて見せたそうですな。

 まあ、一部の武器には勇者の武器を真似た変化ギミックがある代物がそこそここの世界にはあるのですがな。

 そして証明とばかりに燻製が被っていた兜を弾き飛ばしたそうですな。


「な、こいつ――」


 思わぬ反撃に燻製が樹を掴む手を放したのでそのまま着地したそうですぞ。


「わかりましたか? どんな姿になろうとも僕は僕ですよ」


 これで話を聞くだろう。まずは元の姿に戻る方法を調べる、その後、こっぴどく叱りつけよう。

 そう算段を付けていたようですな。

 まあ、錬の仲間ならばここまでやれば錬だと判断出来たでしょうな。

 お義父さんであろうと奴隷やお姉さん、フィーロたんは判断して下さるでしょうな。

 ……お姉さんのお姉さんやパンダが持ち帰ったように別の状況になりますかな?

 いえ、確かお義父さんであるのはわかっていたみたいですぞ。

 わかっていなかったのは虎男くらい距離のある関係でしたな。


「はいはい。君はイツキ様だって言うんでしょ。その腕前わかりましたよ」


 と、樹の仲間である女が信じて樹に微笑んだそうですな。


「やっとわかりましたか」

「はいはい。わかってますよーあなたはイツキ様なのですねー」


 若干棒読みな所が非常に気になったけれど一々指摘しては切りが無いとばかりに樹は話を進めようとしていたのですぞ。


「ともかく、件のウサウニーという奴がまだこの辺りに居ると思うので皆さん、早く探し出して僕を元に戻させなければいけません」

「それでそのウサウニーってのは一体どんな姿なんですかー?」

「身長は今の僕と殆ど同じで頭にはふざけたサンタ帽子を――」


 という所で樹は背後に影が掛かるのを感じて振り返ろうとしたのですが直後、ガツンと頭に衝撃が走ったそうですぞ。


「う――!?」


 背後に居たのは燻製と戦士だったそうですな。

 振り返った樹曰く、何か斧か鈍器で殴ってきたとの事ですぞ。


「マルド、ロジール……な、何を……」

「ヨッシャー! いっちょ上がりー!」

「フハハハ……今日の酒代に良さそうだ」

「臨時ボーナスだ! イツキ様には絶対に言うなよ」

「当然よ」


 という所で樹は完全に意識を失ってしまったそうですぞ。


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― 新着の感想 ―
[一言] 今回の話で思ったこと。 ・三勇教のところにいって真偽を確かめて貰えればいいのに...って三勇教も同じ事しでかしそう... ・正義に酔いしれていた樹のお勉強タイムの始まりはじまり...
[一言] エピソード1200、おめでとうございます! 獣人相手だと全く話を聞かない…流石というかなんというか…。 次回が楽しみです。
[一言]  ずっと気になっていたリスーカ樹の苦労話が始まった!  それにしても、樹の初期の仲間達って本当に悪質だなぁ。
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