ラフミとクロちゃん
「となると樹は無事と……」
無事ではないですぞ? ですがなぜ奴らは隠したのでしょうな?
「うー……」
クロタロウことブラックサンダーは協力していましたが?
クロちゃんは違うのですかな?
「なおー、愛の狩人<タイムドライブ>、愛玩の犬になった闇の剣士を元に戻せないー?」
うぐ……クロちゃんのお願い光線ですぞ。
ですがここで錬を元に戻したらドラゴン狩りに行って無駄な罪悪感や禍根、ライバルを作りかねませんぞ。なのでどうにか会話に入らないようにしないといけませんな。
俺は誠実な男なのですぞ。
「まだ何とも……調べないとわからないよ。何か手掛かりになるようなことはない?」
「手掛かりというと俺の入っていた木箱に包丁が入っていたくらいか」
と、錬は俺が一緒に入れておいたお義父さん達が使っていた包丁を取り出しましたぞ。
「包丁?」
「ああ、一体何なんだと思って武器にコピーをしようとしたら必要Lvが高すぎてまともにコピーすら出来ん。しかも天才料理人たちの包丁という名前だけで判断できん」
錬からお義父さんは包丁を受け取り確認しますぞ。
「うーん……一見すると量産品の包丁にしか見えないんだけどなぁ。うちにも何本かある奴にそっくりだよ」
そりゃあお義父さん達が使っていた包丁で古い奴を持って行っただけですからな。
お義父さん達の料理をこれでもかと経験した年期が多少入った包丁ですぞ?
まあ、まだ一月かそこらなので熟成はしていないと思いますがな。
「匂いとかは? 犬っぽいし分かりそうだけど」
「食材の匂いはしても他の匂いが混ざっていてわからん。というか俺を犬扱いするな!」
そりゃあ無理な話ですな。
今の錬はイヌルトですぞ。
しかし何ですな。お義父さん達の包丁をせっかく用意したのに扱えるLvに無いとは嘆かわしいですぞ。
闇の料理界に参加すら出来ないとは哀れな強さなのですな。
等と錬とお義父さんがやり取りをしている中、クロちゃんが不満そうにしていましたぞ。
「ブー……闇の剣士ークロが愛玩の犬の呪いを解くために漆黒の呪詛を探求し黄昏の君主との決戦に挑むー」
「誰がこんな真似したのかわからないくせに適当に妄想を膨らませるな! 黄昏の君主ってどこにいるんだ?」
「昼と夜の合間、太陽を背に光の地平線を超えた先に息づく闇とも異なる存在ー」
「クロちゃん、ちょっと待っててね。まずは錬の状況を整理しないといけないんだし」
そんな所で……奴が近寄ってきましたぞ。
「なんだ? 一体どうした? 何やら奴とアゾットの雰囲気を感じたんだが?」
そこに現れたのはラフミですぞ。
フィーロたんの近くにおらずノコノコと近寄ってくるとはどういう了見……ハッ!?
「クロちゃん! 急いで逃げるのですぞ!」
「元康くんどうしたの?」
「ラフミにクロちゃんは会わせてはいけないのですぞ!」
俺はしっかりと覚えてますぞ。
ラフミが誕生した目的はクロちゃん元よりクロタロウ、ブラックサンダーの遊びに巻き込まれた錬が過去を変えることでボッチになるのを阻止するのですぞ。
その為にブラックサンダーにとんでもない恐怖を叩き込み、元気のないクロタロウになってしまったのですぞ。
あの後もクロタロウは卑屈な様子だったのですぞ。
何事も斜めに構えて嘲笑気味にことに構えるようになり、調子に乗るたびにラフミに制裁をされていたのですな。
どうにか俺がフォローをしましたが生き生きとしたブラックサンダーに戻ることは無かったのですぞ。
「奴はボッチになった錬が作ったクロちゃんの天敵、恐怖で震えてしまうのですぞ!」
「え? そうなの?」
「俺が……なんだって? 誰がボッチだ!」
「今の私の目的はブラックサンダーの調教ではないが、恐怖に怯える奴を見るのもやぶさかではない。放っておくと碌な事をしないし他のフィロリアルにも感染するのは元より女癖も悪い奴だからな……さーて、この世界のブラックサンダーもからかってやろ……う?」
ラフミが天使姿のクロちゃんを凝視しますぞ。
「こいつは……それにアゾット、その姿は……」
「んー?」
クロちゃんがなぜか硬直しているラフミへと顔を向けてから小首を傾げましたぞ。
「だれー? クロに何か御用? 遊んでくれるのー?」
「これは……」
そこでラフミが目に見えた形で黄昏ているような哀愁の漂う背中になぜかなっております。
なぜか木枯らしが吹いているようにも見えますな。
「はぁ……なんとまあ……これがループによる差異という代物か」
ヤレヤレといった様子でラフミが深くため息を吐いたのですぞ。
「槍の勇者よ。私は存外、クロタロウの事を気に入っていたようだ。まさかこれが奴の可能性とは……実に無害にして無個性! 産まれた時から槍の勇者と共にいるとこんな哀れな姿になるとはな」
「わー……ひどいなぁ……」
「ぶー!」
それはどういう意味ですかな!?
「これもある意味発見か。別の可能性で耳にはしていたが実物を見るまで半信半疑であった」
ラフミの生まれたループではクロちゃんはブラックサンダーでしたぞ。
そしてアーク由来でチョコレートモンスターの精霊部分に多く影響を受けたのが今のラフミらしいのですな。
最初の世界のチョコレートモンスターと交信したのでしたかな?
つまりラフミはクロちゃんに関してはブラックサンダーしか知らないという事なのですぞ。
「なんだこいつは?」
「えっと……元康くんが未来から来たって話は前にしたよね?」
「ああ、その話か……」
錬はイヌルト姿でも偉そうですな。
「このラフミって子も元康くんと同じで未来からやってきたそうなんだ」
「そうだぞアゾット。私は未来から来たラフミ、恋人も出来ず孤独な夜に嘆いた貴様によって創造された魔導ゴーレムが大本だ」
「なぜその名前を!? い、いや、違う! 俺はそんな名前じゃない!」
ラフミの返答に錬が焦って返しましたぞ。
「将来錬ってボッチになるの?」
「ああ、ブラックサンダーの厨二によって覚醒し、奴が記念日に恋人と遊んでいる間だけ我に返り孤独に震え、シングルベルの常習犯となる」
「何の話をしている!? 俺を哀れな奴を見る目で見るな!」
ラフミの視線を不快に感じた錬が騒いでますぞ。
「えっと、大丈夫ですよレン様、俺たちがいるからそんな寂しい真似はさせませんから」
仲間たちが錬を励ましてますぞ。
「お前らか……確かガエリオンから聞いた話では大抵の世界で死んでいるな。生きていてもアゾットはきっとボッチだ」
「言い切ったなぁ……」
くっ……ラフミめ!
ライバルから仕入れた知識を使うとはどういう事ですかな!
「……」
「なんていうか……」
「俺を馬鹿にしてるのか! そんな話をするために俺はここに来た訳じゃない!」
「そうか……まあいい。私もまずはブラックサンダーに関して処理しなくてはいけないからな」
「させませんぞ!」
今度こそブラックサンダーではなくクロちゃんを守ってみせますぞ。
じゃないと今のクロちゃんからすると第二のコウになってしまいます。
何が何でも阻止せねばいけませんぞ。
「ぶー……」
バカにされて元気なく不満を述べるクロちゃんですぞ。
いざって時に頼れるのがクロちゃんですな。
お姉さんの友人に迅速な応急手当をしたのが印象的なのですぞ。
「槍の勇者よ、安心しろ。こんな無害で無個性な奴に追い打ち掛けるほど私は邪悪ではない。ふむ……アゾットの姿に不満を抱いているようだな」
「未来から来たと言うが何か知っているか? 知ってるなら言え!」
藁にも縋ると言った様子で高圧的に錬がラフミに聞きますぞ。
「まずはブラックサンダーの相手をしたいがしょうがない」
「ラフミちゃんは心当たりがあるの?」
「犯人を知っているのか!? 教えろ!」
お義父さんと錬がラフミに問い詰めますぞ。
「アゾット、お前をイヌルトの姿にした奴は……」
く……ラフミめ! 俺だと速攻で暴露する気ですな!
ですがここでラフミを仕留めてもすぐに補充されますぞ。
口封じが出来ないのは非常に厄介ですな。
ならば指摘されてからしっかりと答えてやりますぞ。
「錬をイヌルトに変えた相手は?」
「アゾットをイヌルトにした奴の秘密は…………………………教えてやらないよ、チャン!」