一人一個
「とりあえずわかったのは元康くんがフィーロちゃんに問題ある行動をしたら阻止するのが仕事って事だよね?」
「その認識で正しい。それ以外での有益な行動をするかは気分次第と答えよう」
「ものすごく大雑把だなー」
「常に先を知る者がいる環境が良いというのか? 槍の勇者の助言があるからと考えを放棄するのがお望みなら相手をしてやっても良いぞ?」
「哲学的だなー……まあ致命的な問題は阻止してくれそうだし、分かったよ」
「並行世界と未来の様々な道具を私も所有している。日々の娯楽なども適度に提供してやろう」
「あ、この辺りは元康くんの槍とは違う感じなんだね」
なんですと? ラフミは並行世界の道具をそのまま所持しているのですかな?
「そうだ。例えば……」
と、ラフミは兄の所持していたポケットに手を伸ばしてエプロンを出しましたぞ。
「未来にある茶番道具の一つ、ラブラブワイフエプロン……改良型盾の勇者再現装置等も所持している。これを装備するだけで料理の腕前がそこそこ上がるぞ?」
「ちょっとそのネーミングはどうなの? なんで盾の勇者限定?」
「ん? わからないか?」
ラフミの台詞にウサギ男をはじめとした周囲の者たち、魔物商やその配下すらも顔をそらしました。
「……ラフミちゃんは未来の道具すら持ってると……まるであのアニメみたいだけど、妹の方が先に来ちゃった感じ?」
「そうだな。ポンコツの兄が波が終わった後に来るぞ。私は別の任務で来たに過ぎない」
「なるほどねー……それにしても随分とモデルと性格が違うような」
「製造目的が異なる。私に愛嬌を求められても困るものだ」
厄介極まりない奴が来てしまったのですぞ。
「それで、フィーロの作成を終えた訳だが槍の勇者、これから何をする方針だ?」
「このまま女王が帰還するまで国内でサーカスでは無いのですかな? お姉さんの友人の捜索ですぞ」
「そうか。そのような方針なのだな。サーカス……盾の勇者と話をして聞いているが各地を巡るのだったか。ずいぶんと大人数で巡るとの話だったな」
「お前に何が出来ますかな?」
「私を侮って貰っては困るぞ? 幻覚の力を思い知るが良い」
「まあ……あの変装術は一種の驚きかもしれない」
「幼女が顔を捲る姿は確かに驚きでしたね」
「何にしても承知した。とは言いつつ私も並行世界への情報がまだ揃いきっていない。観察を継続するとしよう」
という訳でラフミが住み着くことになりましたぞ。
厄介極まりないですな。
ポンコツムーブを永遠と続けろですぞ。
「じゃあ、合流は出来たし……明日からサーカス行脚を再開だ」
「やっとですね」
「ここ最近は色々とあったから忘れがちになっていた」
「ヴォルフはどこかな? こういう時に駆けつけそうだと思ったんだけど」
「あっちの檻に入って貰ってますよ。岩谷様が近くにいると察して急いで駆け寄ろうとしてたんで」
確かにそうでしたな。
昼間にフィーロたんが檻に入れられた時にはお義父さんが居るのを察して夜泣きとばかりにくーんくーんと鳴いてました。
「そっかー結構寂しがってそうだな。後で撫でてあげないとね」
そんな訳でお義父さんは帰ってきた報告とばかりにヴォルフに声を掛けて撫でていたのですぞ。
こうしてフィーロたんも出来上がりサーカスに加入して下さったのですぞ。
「フィーロたーん!」
「やー! ――残念、私だ!」
バリィ! 俺が飛び掛かると必ずラフミなのですぞ。
くっそですぞ。
「ごしゅじんさまのごはーん」
「ごはーん」
「はいはい。みんな仲良くねー」
と、いつの間にかフィーロたんは料理を待つフィロリアル様の中に混じっております。
くう……俺はフィーロたんに抱きつく事が出来ずにいるのですぞ。
フィーロたんは既にフィロリアル様達と打ち解けていらっしゃいましたぞ。
「ごしゅじんさまーおでかけしないのー?」
「みんなでお出かけしてるよね」
「んー……」
フィーロたんはサクラちゃんと同じくお義父さんに一際絡んで居るのですな。
ちなみに護衛のようにラフミが必ず近くにいるのが腹立たしいのですぞ。
「お義父さん。フィーロたん専用の馬車はどうですかな?」
サーカスの馬車をみんなで引いているのでフィーロたんの欲求を解消はしていらっしゃるでしょうがここで気に入って貰えるように提案ですぞ。
「いいのー?」
俺の提案にフィーロたんのお目目がキラキラしますぞ。
「うーん……」
ですがお義父さんの反応はよくありませんぞ。
何故かフィロリアル様達に目を向けますな。
「みんなが居るからなー」
「そこはお義父さんのフィロリアル様はフィーロたんですから別枠という事で良いのではないですかな?」
「そうだけどさ……まあ、フィーロちゃんが良い子にしてたらね」
お義父さんが苦笑気味に先延ばしの台詞を仰いますぞ。
「わかったーフィーロいい子になるように頑張る!」
おお! フィーロたんのやる気に火が点いたようですぞ。
ですがここで俺がアピールしますかな?
「お義父さん! 俺がフィーロたんに馬車をプレゼントして良いですかな?」
「それをするにはまず、槍の勇者。貴様はユキを含めた他のフィロリアル達に馬車を支給してからが良いと思うぞ?」
ゾクっとするような声でラフミは俺の背後から耳元で語り掛けてきました。
ふと振り返るとフィロリアル様の目線が集まっておりました。
しかもユキちゃんからは……ヒィ……ですぞ。
「ラ、ラフミ……妙な気配を俺に掛けるなですぞ」
ユキちゃんはこの程度でそんなオーラを発揮しませんぞ。
「元康様、どうしたのですわ?」
「ユキちゃんは馬車が欲しいですかな?」
「そうですわね。専用の馬車はいずれ欲しいのですわ」
「そ、そうですな。いずれ作るのが良いでしょうな」
く……何故かフィーロたんにだけ馬車を俺が与えるのは非常に危険だと本能が囁くのですぞ。
「馬車を引くの楽しみー」
「専用の馬車欲しいー」
「馬車―」
フィロリアルの皆様は個人の馬車を持つのが夢ですからな。
サーカスのお仕事で共有の馬車を引いていらっしゃいますがな。
最終的にみんな1個は馬車を手に入れるのですぞ。
「さてと、ここでのみんなの食事はしたし、今日は演目開始まで何をするかな」
お義父さんがエプロンを外して今日の予定を確認していますぞ。
シルトヴェルトの使者がこの辺りのスケジュール管理をウサギ男と一緒にしていたはずですぞ。
「えー……本日はエルメロ様を含めた者たちの提案でシルトヴェルトの方でラーサズサという方が帰ってないかの確認及び勧誘がとの予定となってますね」
「あ、確かに覚えてる。もうその時期か、じゃあ元康くんにエルメロさん、それとラーサズサさんのお義父さんとお祖父さんで行こうか」
「承知しました。声を掛けておきます」
「そんな訳だから元康くん。来てくれる?」
「フィーロたんに絡みたいですぞ」
俺の返答にお義父さんが苦笑してますぞ。
「まだフィーロちゃんが慣れてないからね」
「ごしゅじんさまどこか行くのー? フィーロもいきたーい」
「うーん……まあ、問題は無いか」
「わーい!」
おお、フィーロたんも一緒に行くのですぞ!
俄然やる気がでますな。
「じゃあ出発しようか」
という訳で俺たちはシルトヴェルトに行くことになったのですぞ。