”Benim Sarkilarim”by Humeyra
イスラム圏のアラブ・ポップス数あれど、テンションの高さで一番なのはトルコ歌謡ではないかと考えている。より鋭い歌い方や尖った音は他にもあるかもしれないが、音の内に流れる感情の溢れかえり様は並ぶものなき、みたいな激烈なものがあると感ずる。一度歌いだしたら行くところまで言ってしまわねばおさまらないみたいな。
そんなトルコ歌謡なので、この盤のような抑えた感情表現が売りみたいな世界に出会うと、何だか凄く新鮮な気がして、つい贔屓したくなってしまうのだった。
この名はヒュメイラと読めばいいのだろうか、はじめて聴く人だが、キャリアはそれなりにありそうだ。トルコ歌謡というよりはシャンソンみたいな押さえた、そして歌謡曲的な嘆きの内に秘せられて行く感情表現の歌唱が心に残る。
まず嘆きのバイオリンに導かれ、アコーディオンの隠し味など従えつつ、いつも雨の降っているような湿度の高い、しっとりしたサウンドと歌が始まる。そのメロディラインもイスラム色はそれほど強くなく、むしろ他の文化社会の庶民にも容易に共感を得そうな”いわゆる歌謡曲”っぽいメロディラインが歌われて行く。
グッと感情がこみ上げ、みたいな箇所があっても、そこは極まることなく、フッと力を抜いた溜息路線の憂いの表現に歌は溶けて行く。歴史ある大都会イスタンブールに生きる大人の女の、ちょっと粋な後ろ姿を見たみたいな感じ。日本の昭和30年代に流行った都会派歌謡などを、ふと連想したりする。あるいはもっと遡って竹久夢二調か。
髪型が最近の大貫妙子っぽいのも偶然の符合だろうが、ちょっと面白く思った。
残念だが、このアルバムからはYou-Tubeには音が上がっていない。仕方がないので彼女の他のアルバムからの歌唱で一番このアルバムに近い印象のものを下に貼っておく。雨のイスタンブールの憂愁など、お楽しみいただきたい。