高濃度猿侵蝕体“マネキン・モブ”   作:アースゴース

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お前誰のおかげでいつまでも夢を覚えてると思ってんだあん? 3

 『クククク待ってろよ』『すぐに殺してやるから』

 「何でオレらはマネモブに追われてるんスかね?」

 「さぁ……?」

 「何故……?」

 

 住宅街を縦横無尽に跳躍するマネモブから逃げるのは、リン、真斗、リュシアの一行。

 どうしてこうなったのか……それは数分前まで遡る。

 

 

 

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 「マネモブはおかしくなってないよね?」

 『えっ』『何を言うとるんじゃあっ』

 

 自分は正気だというエビデンスはないが、いつでも正気な気分のマネモブは、出会い頭にリンから浴びせられた質問に面食らった。

 まあ、この町の住民たちは様子がおかしいので、町にいるマネモブもおかしくなっているのではないかと心配する気持ちは分かるのだが。

 

 「初めまして! リュシア・エロウェンです! リシュアじゃないよリュシアだよ」

 『はじめまして拳獣リカルドです』

 「か、感激~! ホントに喋れるし受け答えできるし人を襲わないんだ!」

 『宮沢熹一の殺し方を教えてくれよ』

 「出た出たマネモブ流のジョーク。宮沢熹一への殺意がハンパない」

 

 恐らくマネモブは正気だと思われるが、まだ確証が持てない。

 そこでリンはある妙案を思いついた。

 

 「うーん、正気か分からないなぁ……あ、そうだ。マネモブ、勝利の呪文をお願い!」

 『しょうがねェなァ』

 

 マネモブはリンの耳に口……と思われる部分を近づけた。

 

 『お前のお袋は淫売のクソ女!!』

 「本物確定ェ!」

 「あの……罵倒されてるんスけど、いいんスかこれ」

 「ちょっと洒落にならない暴言だった気がするんだけど……噂や論文では知ってたけどマネモブってこんな口悪いの?」

 

 異常(彼女は支援である)エーテリアス愛者リュシアもドン引きの口の悪さで、正気であることが確定したマネモブ。

 それが分かると、一行はマネモブにこんな話を持ちかけた。

 

 「ねぇマネモブ、この町のおかしくなっちゃった人を外へ連れ出すのを手伝ってくれない?」

 『…』

 

 確かにこの町の夢縋り達は死人のように生きているクズ共だ。

 だが、マネモブはモスの慟哭を聞いたのだ。彼のためにも、そして善意で町を維持しているイドリーというタコのシリオンに報いるためにも、この町を維持しなければならない。

 

 『(それ)はダメだろ』

 「えっ、ダメなの?」

 『(それ)はダメだろ』

 

 夢縋り達は実体が無いっぽいのでホロウの外に連れ出すことはできないし、かといって夢縋りの真実を教えるのも無しだ。

 どの道、今のままでは瀕死の本体達を外へ運ぶ手段などないのだから。

 

 マネモブは説明が苦手だ。

 特に相手に納得してもらうための説得など、親しい相手であっても難しい。

 だからこそ、マネモブは自分の得意な……暴力的手段を行使することにした。

 

 『カンカン』『カンカン』『カンカン』『カンカン』『カンカン』『カンカン』『カンカン』『カンカン』

 「えっ」

 「なにっ」

 「な……なんだあっ」

 

 マネモブが両手を大きく広げ、まるで踏切のように上下させる。

 

 『そうか! 君は頭が悪くて他にとりえがないから闘うことでしか自尊心を満たすことができないんだね』『かわいそ…』『ククク…ひどい言われようだな』『まぁ事実だからしょうがないけど』

 「な、何自問自答してんだ?」

 『“四人霞(しにんがすみ)”』

 「えっ」

 

 一行の目の前でマネモブが増える。

 

 「い、嫌な予感がする」

 

 ゴクリと固唾を飲んだリン。

 そして、マネモブが言葉を発する。

 

 『クククク待ってろよ』『すぐに殺してやるから』

 『死ぬアルヨ!!』

 『焦るなよ』『今殺してやっから』

 『殺す…』

 「あうっ、や、やっぱりこうなるのかあっ」

 「逃げるぞ! リュシアも走れ!」

 「あぁ~分身できる原理もっと知りたいのにぃ~」

 

 一行は逃げ出した。

 そして、冒頭に至るというわけである。

 

 

 

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 『逃げるんかいっこの人殺し!』

 「いや何もやってねぇけど!?」

 

 一行は町の出口へと走っている。

 三人は通路を使うしかないが、四人のマネモブはその驚異的な軽業によって屋根の上を跳んでやってくる。

 マネモブに何の思惑があるにせよ、仮死状態にされたり幻魔を植え付けられるのは真っ平ゴメンだった。

 

 「しかし、このまま逃げんのも難しそうっスね」

 「そうだね」

 「オレが囮になるんで、二人はそのまま逃げるってのはどうスか?」

 「流石にそれはできないよ! でも、マネモブはこっちをやっつけようって気じゃないみたい。むしろ、出口に誘導されてるような……」

 

 マネモブの動きは、まるで得物を追い込むような動きだった。

 しかし、一行が向かっているのは出口。このままでは逃げられてしまうだろう。

 それに、マネモブには攻撃を仕掛けてくるような様子が無かった。マネモブは武術の達人なので殺気を消すことなど造作もないが、今回に関しては本当に一定の速度と距離を保って追いかけているだけに過ぎなかった。

 

 「まあ逃がしてくれるってならいいんじゃないスか?」

 「でも何か引っかかるなぁ……マネモブがこの町で何してるかも分からないし」

 

 マネモブの目的は依然として不明だが、今は帰るしかない。

 そう思っていた矢先だった。赤い、ミアズマの霧が現れたのは。

 

 「えっ」

 「なにっ」

 「な……なんだあっ」

 

 霧は瞬く間に町へと広がる。

 住民達はそそくさと屋内へと退避していった。

 

 「おいっ、あんたらも逃げろっ」

 「“W”だ、“W”が姿を現すぞ」

 「霧から“W”?」

 

 そうして、霧からヌッと現れたのは大柄なエーテリアス。

 右腕がまるで銃のようになっており、凶悪な戦闘能力がうかがえる。

 

 「チィッ、何だって町中にエーテリアスなんざ出てくんだよ」

 『おおおおこのバケモノッ』『絞め殺してやるわっ!』

 

 マネモブが矛先を変え、一斉にエーテリアスへと攻撃を仕掛ける。

 

 『“塊貫拳”』

 『“塊貫拳”』

 『“塊貫拳”』

 『“塊貫拳”』

 

 ミアズマ製のエーテリアスは、やたらと固いことが多い。

 その結論に達したマネモブは、効率よく相手を内部から破壊する塊貫拳を選んだ。

 だがその時……エーテリアス、ワンダリングハンターは、何の気なしにバックステップを行った。

 

 『なにっ』

 「えっ」

 

 いきなり目標を失った拳同士が、クロスカウンターじみた一撃となってマネモブ同士に激突した。

 

 『“波濤返し”』

 『う あ あ あ あ』

 『い や あ あ あ あ』

 『あ あ あ あ』

 「な、何て狡いマネを……」

 

 本体を残して三人の分身は消え、残る本体は波濤返しにより全てのダメージを分身に押し付けて回避。

 

 「ウォォォォ!!」

 「オレが相手んなってやるよっ」

 

 雄叫びを上げて迫りくるワンダリングハンターを、真斗が迎撃しようとしたその時だった。

 何者かが、ワンダリングハンターの凶器の右腕を弾いた。マネモブではない。まるでホログラムのような状態から、徐々に色づく。その正体とは――

 

 「テメェは一体……!?」

 「あぁ? 見りゃ分かるだろ。オレは狛野真斗だよ」

 

 白い特攻服を着た真斗だった。

 

 「何だとぉ……お、オレも侵蝕にやられちまったってのかぁ?」

 「な、何かガラ悪いし……うかうかしてたら私達もああなっちゃうのかあっ」

 

 白真斗の口調は、真斗よりも荒々しかった。

 

 「おいこらテメェ、何が狙いだあーん? 喧嘩売りに来たってのかよ、あーっ」

 「安心しやがれ真斗。喧嘩はするが今日じゃねぇ……だがえらく察しが悪いなぁ? どうしてオレがこんなところにいるのか、理解(わか)んねぇのか、あー?」

 「……」

 

 真斗は心当たりのある様子だった。

 それなりに気まずい雰囲気。それを打ち破ったのはマネモブだった。

 

 『お――っ』『それは()()()()やのォ』

 「なにっ」

 

 いつの間にか近くに寄ってきたマネモブが、白真斗を観察している。

 

 『お――っ』『それは()()()()やのォ』

 「お、おいよせ」

 『お――っ』『それは()()()()やのォ』

 「触んじゃねぇよ……」

 『お――っ』『それは()()()()やのォ』

 「き、聞いてんのかコラ」

 『お――っ』『それは()()()()やのォ』

 「お、おい押すな!」

 『お――っ』『それは()()()()やのォ』

 

 白真斗は、あれよあれよという間にマネモブによって連れていかれてしまった。

 

 「……帰ろうか」

 「ウッス」

 

 こうして一行は澄輝坪へ帰還した。

 

 

 

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 「で、帰ってきたのが私達! マジで何も分からなかったよ」

 「ううん、どういうことなの」

 

 町での出来事を柚葉に伝えると、彼女も困惑していた。

 流石に怪談のネタにするにしても猿展開すぎて視聴者が「えっ」「なにっ」「な…なんだあっ」と混乱するのは目に見えている。

 

 「明日もう一回行くか」

 

 そういうことになり、一行は再びホロウへと踏み入れることとなる。

 新たなメンバーとして手を使わずに金玉を動かせる機械人を連れ、照から貸してもらった匣平気を手にして。

 

 次回、町の行く末は……!?

 

 

 




盤岳さんと照ちゃんは絶対引きたい……それが僕です
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