高濃度猿侵蝕体“マネキン・モブ”   作:アースゴース

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夢縋りの方が健全ってそんなんアリ?
エーテル物質としての自覚が足りんのとちゃう?


お前誰のおかげでいつまでも夢を覚えてると思ってんだあん? 2

 「こちらです」

 『おっ』『ジャマだクソゴミ』

 

 マネモブは、モスに案内されて町の中心部にある講堂へとやってきた。

 恐らく、『お邪魔します』と言いたかったが適切な語録が思い浮かばなかったのだろう。マネモブは暴言を吐きながら講堂へと入る。モスは苦笑していた。

 しかし、そこでマネモブは驚きの光景を目にした。

 

 『なにっ』『な…なんだあっ』

 「彼女が気になりますか?」

 『不思議ですね』

 

 講堂では、タコの触手が生えた女性が、ミアズマに縛り付けられていた。

 

 「彼女は……この町の守り神です。彼女なくしてこの町は存在できない。我々も彼女をこうやって閉じ込めるのは心苦しいが、彼女もここを出ることができない」

 『ふうん』『そういうことか』

 

 ミアズマでの触手緊縛プレイなんて侵蝕のリスクありまくりな超高レベルの性癖だなと思いつつ、マネモブは彼女と町の関係を考察していた。

 しかし、彼女が夢縋りを発生させているのではないか程度しか分からなかったようだ。

 

 『不思議ですね』

 「でしょう? ですが、あなたに見てもらいたいのはむしろここからなんですよ」

 『なにっ』

 

 モスに案内されたのは、講堂内にある隠し扉である。

 その先にあったのは、まるでミアズマでできた繭のようなもの。その中には――人が眠っていた。

 

 『ウ…ウソやろ』『こ…こんなことが』『こ…こんなことが許されていいのか』

 

 それは夢縋りと瓜二つ……いや、オリジナルと言うべきだろう。

 彼らはこの不浄のゆりかごの中で、文字通り夢に縋り生きながらえているのだ。

 中には当然、今会話しているモスの本体も……

 

 「間違っても中の人を出したらいけません。彼らは誰もが酷い侵蝕症状を受け、危篤と言っていい状態です。もし彼らを出せば、たちまちエーテリアスになってしまうでしょう」

 『()()()()()ハッピーハッピーやんケ』

 「……まあ、あなたにとってはそうかもしれませんが……怒らないで聞いてくださいね、大体の人はエーテリアスになったら自我はなくなるんですよ」

 『欺瞞だ』『すべてが欺瞞に満ちている』

 

 今のはマネモブなりのジョークだった。

 

 「とにかく、この町は彼女が作り、彼女の慈悲で存在しているようなものなんです」

 『ミノタウロス…』

 「そして、先ほどあなたが撃退したエーテリアス……ワンダリングハンターとランタンベアラーの問題もある。俺はこの町を何とか存続させたい。だけど、いずれは瓦解してしまうだろう」

 『ミノタウロス…』

 「どうか、この町に力を貸していただけませんか?」

 『ミノタウロス…』

 

 モスの真摯な願いと共に差し出された手。

 それに対し、マネモブの答えは――

 

 『あざーす』

 

 ガ シ ッ

 

 「なにっ」

 『しゃあっ』『灘神影流“天勘刺突”』

 「あ―――っ」

 

 モスの頭を両手で掴み、ツボを押すことだった。

 

 『優希はどこにいるッ』

 「お、俺は……」

 

 天勘刺突の効果により、モスの本音を喋らせる。

 彼の嘘偽りのない本音を知らなければならない。もし彼が邪崇を企てているようならば、この場で即討伐しなければならない。

 だからこそマネモブは知りたかった、彼の本当の“夢”を。

 

 「お、俺は死にたくない。び、病気なんだ……医者にも治らないって言われた……だけど、ここなら……この町なら生きていられるんだ! さ、讃頌会に入って色んな人に迷惑かけたどうしようもない俺だけど……そ、それでも死にたくない! 生きていたいんだ!」

 

 それはモスの、ヴィーゴ・モスという人間が縋った夢だった。

 

 『死人のように生きてるクズども』

 

 マネモブはそう冷酷に評した。

 だが、死人のようであろうが、生きている。そう、モスはまだ生きているのだ。

 死んでいなければ何とでもなる。

 

 『必死で生きようとする姿は尊い!』

 

 だからこそマネモブはモスへ、町へと手を貸すことにした。

 それが人々だけでなく、エーテリアスすら救うマネモブの在り方なのだから。

 

 「い、今のは……」

 『灘神影流マジックよ』

 「なるほど、そうでしたか……ええ、今のは俺の本心です。俺がこの町に執着する理由でもあります」

 『ふうん』『そういうことか』

 「今ので納得いただけましたか?」

 『わかりました』『後継者を選ぶ方法は我々で決めます』

 

 もうマネモブに迷いはない。

 そんなマネモブが取った方法とは……

 

 『も…もしもし』『け…警察ですか…』

 「えっ」

 

 マネモブが取った方法は、電話……!

 

 

 

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 リンは怪啖屋の真斗、そして異常(支援)エーテリアス愛者リュシアであると共にラマニアンホロウへ訪れていた。

 リンと真斗は輝磁の鉱区の発見、リュシアはマインドリーダーなるエーテリアスの捜索という思惑はあれど、探索は順調に進んでいた。

 

 「マインドリーダーは知らないけど……知り合いに武術マスターのエーテリアスはいるんだよね」

 「武術マスター……それ知ってる! あの高濃度猿侵蝕体マネキン・モブでしょ!? どうして言葉を喋れるのかも、人を襲わないのかも全く不明の謎に満ちたエーテリアス! 一説では元が厳しい修行を積んだ武術家だったから自我を保ってるとも、人の真似をしてる内に正義に目覚めたとも言われてるけどその真の正体は、雲嶽山と双璧を成す武術界の裏のフィクサーにして、新エリー都で一番虚狩りに近いエーテリアスなんだよね!?」

 「うーん、どれも正しいと言えるしそうでないとも言えるなぁ」

 「どう見るかだな」

 

 マネモブの話題に興味を示したのはリュシアだ。

 その噂は、リンがよく耳にする事実に近いものもあれば、全く知らないものもある。

 

 「ねえリンちゃん、マネモブにはエーテリアス仲間がいるって本当なの?」

 「うん、たくさんいるよ。と言っても、自我がある人に限るけどね」

 

 ポンペイ、光と闇の司祭、ミアズマ・フィーンド、イゾルデ。

 ほぼミアズマという記憶を操る特殊なエーテルの影響を受けた者達ばかりだ。イゾルデも身体はほとんどミアズマに置き換えられていることが判明している。

 半エーテリアスのポンペイはともかく、ミアズマではない通常のエーテリアスであるマネモブが如何に異常かを物語っていた。

 

 「そ、そんなにいっぱいいるの? いつか話してみたいなぁ」

 「マネモブならしばらくラマニアンホロウをうろついてるって言ってたから、いつか会えるかもしれないね」

 「すぐに会える気もするけどな」

 

 雑談しながら進んでいると、一行の目の前に人影が見えた。

 

 「あれは……パウルじゃねぇか!?」

 「あ、真斗のアニキ!」

 

 それはポーセルメックスのウェストとの言い争いの後、行方をくらませたパウルだった。

 作業員にすぎなかった彼はなぜか適当観の道着を着ていて、しかもボロボロだ。

 

 「お、おいパウル、どうしたんだ。ボロボロだぞ、誰にやられた!?」

 

 喧嘩慣れした真斗は、その様子が何者かとの争いの後であることを見抜いた。

 しかし、パウルは嬉しそうな様子で言った。

 

 「これですかい? 修行でついた傷ですよ」

 「修行だとぉ? ボロ雑巾みたいになるまで殴られんのが修行だってのかよえーっ」

 「ええ。先生によると、まずは耐久力と体力作りが重要だって言われたんです。正直、鬼みたいにキツいシゴキですけど、ちゃんとした武術の型も教えてくれるんですよ」

 

 その場で武術の型を披露するパウルは、とても様になっていた。

 本来、パウルはこのような武術は学んでいない。いや、独学で学んでいたようではあったが、ここまで綺麗な型ではなかったはずだ。

 

 「最初は適当観の武術師範としてここに道場を立てるつもりだったんですけど、先生から『思いあがるなよチンカス』と言われてしまって……そこから自分がいかに修行不足だったかということを思い知らされたんです。でも、先生は道場を持てるくらいに鍛えてくれるって約束してくれたんです」

 「んだぁ、その口の悪さ……いやちょっと待てよ。リンちゃん、これって……」

 「うん……」

 

 非情に口が悪く、人に教えられるほど武術の知識があり、育成能力が高く、ホロウで活動している。

 思い当たる人物は一人だったが、まだ確証はない。ないが、もう確定したも同然だった。

 

 しかし、パウルの様子がここまでおかしいとなると、酷い侵蝕症状にさらされているのかもしれない。一刻も早くホロウから連れ出さなければ、パウルもその先生の仲間入りだろう。

 

 「ったく、ロクに準備もせずホロウに入りやがったな? 侵蝕でありもしねぇモンを見て、挙句の果てにその場にいた武術家を先生と仰いでやがるじゃねぇか。さっさと出るぞ……」

 「いえ、準備はしてきました! 仲間がいるんです。今は近くにいるはずですが……お、噂をすれば

!」

 「あーん?」

 

 背後から人がやってくる。

 

 「ここらの調査はこれで終わりか。彼のデータには助けられているな……ん? 真斗くん? 真斗くんじゃないか!?」

 「も、モス!?」

 

 現れたのは、調査員ヴィーゴ・モス。

 しかも、真斗と知り合いだったようである。

 二人は二年ぶりに再会したのだが、そのせいかどうにも話がかみ合わない部分がある。

 

 「俺達はこの先の町を拠点にしているんだ。どうだろう、そこで話をしないか?」

 「町……?」

 

 こんなホロウの中に町があると聞かされても、一行は半信半疑であったが、とりあえずモスについていくことにした。

 そこで一行が目にした驚愕の光景とは……

 

 

 

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 「ほ、ホントに町がある!」

 「しかも意外と賑やか……!」

 

 モスに案内された町は、とても賑やかだった。

 まるで澄輝坪のようにのどかで、趣のある建築様式は見る者の心を癒すことだろう。

 だがしかし……圧倒的な異物が無ければの話だが。

 

 「ねぇ、あれって……」

 

 遠くに見える建物。しかし、一行が立っている場所からでも分かるほどの存在感。

 講堂の屋根には、まるでマネモブの証明写真をそのままプリントしたかのような旗が、風に揺れていた。

 

 「クソみてェな旗立てやがって……」

 

 生気も何もないマネキン・フェイスが風にはためく光景は悪夢という他なかった。

 真斗の、クソみてェな旗という評価は的を得ているだろう。とにかく、この町にマネモブが関わっていることは間違いない。

 

 「確かに町だが……ところどころにミアズマのコブが見え隠れしてるじゃねぇか」

 「そう言うな真斗くん。あのミアズマにはちゃんとした意味があるんだ。それにここは安全だ。何て言ったって彼がいるからな――」

 「戻ったんですかパウル。そうです、調査の首尾は」

 

 そこへ新たにやってきたのは、教師風の男。

 リンと真斗は、彼に見覚えがあった。彼は澄輝坪でパウロと言い争っていた、ポーセルメックスの横柄な社員だったのだから。

 

 「おお、ウェスト先生、おかげ様で順調だ! おまけに……誰に会ったと思う?」

 

 ジャーンとリンや真斗に手を向けるパウロ。

 ウェストと呼ばれた男は、以前とは打って変わって穏やかな様子で話した。

 

 「覚えていますとも。澄輝坪でお会いしましたね。私はウェストです、お見知りおきを」

 「ああ、オレらも忘れてねぇよ。ポーセルメックスの代紋ちらつかせて好き勝手言ってやがった奴だろ……それが今や先公か? 一体どうしちまったんだよ、おい」

 

 ウェストが横柄な態度を取っていたことは記憶に新しい。

 しかし、今の彼は人の好さそうな教師でしかない。知り合い達がこうも立て続けにおかしくなっているのを目にして、真斗は困惑していた。

 

 「まあまあ真斗のアニキ。全部誤解だったんですよ。ウェスト先生は尊敬に値するお方だったんだ。何せ、あそこにある青葉高校の不良や危険な部活動に対応してるんですから」

 「澄輝坪での態度は教師にあるまじきものだったと自省しています。生徒達の暴走はそんな私の怠慢が招いた結果とも言えます。ならば、これを解決するのが教師としての務めであり償いでしょう」

 「高校まであんのかよ……」

 

 パウルの指す方向には、立派な校舎が建てられていた。

 どうにもハリボテなどではなく、本物の学校であるようだ。

 

 「どうなってやがんだ。おい、戻らなくていいのか?」

 「戻る、とは?」

 「澄輝坪だよ澄輝坪。家に帰らなくていいのかって言ってんだよ」

 

 ホロウを出ろという真斗の言葉に、パウルやウェストは心底不思議そうな顔をしていた。

 

 「何を言っているんですか。私達の家はここですよ」

 「なにっ」

 

 それが当然とばかりに、ウェストは言った。

 彼らは少しの間会話を交わし、講堂へと去って行った。

 残されたのは、困惑しているリンと真斗、あとはモス。リュシアはどこかに行ったようだ。

 

 「ここが家か……いや、確かに住めそうだが……というか一瞬澄輝坪に戻ってきたのかと錯覚したくらいだが……これもミアズマの侵蝕か? それともマネモブのモンキー・インプリンティングって奴か?」

 「正直どっちもあり得るね。お兄ちゃん、ここのミアズマ濃度って分かる?」

 

 リンがアキラと通信しようとするが、うんともすんとも言わない。

 なんと、突然通信が途絶えてしまったようだ。イアスも自律モードになっている。

 

 「うーん、どういうことだろう」

 「こいつは不味いかもしれねぇな。いざとなったら……手荒にするしか」

 

 真斗がチラ、とモスを見る。

 モスは苦笑していた。

 

 「手荒な真似かぁ……それをするのは至難の技だ」

 「どうして?」

 「ここには手荒な真似に慣れてる人もいるってだけだ。もちろん、犯罪をしているってわけじゃないが」

 「そうかよ……」

 

 確かに、筋肉が凄い者やロボットなども見かける。

 なるほど、一人で相手をするには中々骨が折れそうな相手だ。真斗はそう思った。

 

 「それより、ちょっと町の観光でもしてきたらどうだ? 面白い場所はたくさんあるんだ。お連れの子も、早速どこかへ行ってしまったみたいだ」

 「なにっ、おいリュシア……ったく、どこ行きやがった。わぁったよ、モス。勝手に調べさせてもらうさ」

 

 こうして、一行は町を調べることにしたのだ。

 

 

 

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 二人が通りを歩く。賑やかな店や、住宅街が並んでいる。

 しかし、住宅街の奥に鎮座する異様な家があった。

 

 「んだぁ? 落書きだらけじゃねぇか」

 「やいばきば死ね……? 他にも物騒なこと書いてあるよ」

 

 道路にまで物騒な落書きが書かれた一軒家だった。

 正直言って近づきたくなかったので、二人は見るだけにしてその場を去った。

 

 次にやってきたのは学校だ。どうにも放課後のようだ。しかも、警備員が二人が入ることを許可してくれたので、少し見て回った。

 その時に目に留まったのが、校舎とは別に存在する部室だった。なんと、ここにも物騒な落書きがあった。

 

 「人斬りじ、ジアイテラ? なんて読むんだ……こいつは何やらかしたんだ?」

 「トクビケン? ってなんだろう」

 「いや、飛首剣(トクビケン)ってことかもしれないっス。きっと恐ろしい剣術に違いねぇ」

 

 そんな人が近所に引っ越して着たら嫌だなぁ、という思いを胸に、二人はその場を後にした。

 

 二人が次にやってきたのは、古風な屋敷だ。

 とても大きく、建築家の執念が垣間見える建築様式とは裏腹におどろおどろしい雰囲気が漂っている。

 

 「うわあ、凄い屋敷だね」

 「亭亡双? 屋敷の名前か?」

 

 近寄りがたいというか、入ってはいけなさそうなので二人は見るだけでスルーした。

 町を粗方見て回った二人だが、特に収穫はなかった。いや、そもそもこの町がおかしいということを再認識させられたというべきか。

 

 「あ、あそこが講堂かな?」

 「リュシアもいるな……行ってみよう」

 

 二人は、講堂の手前にある広場までやってきた。

 そこは憩いの場のような雰囲気で、噴水まで動いている。ベンチでは数人の人々が、座っていた李、本を読んでいたりしている。

 講堂の前では、リュシアが誰かと話していた。

 

 「おーい、リュシア。誰と話してるの?」

 「あ、リンちゃん! 見てみて、マネキン・モブだよ」

 『ヴヘヘヘへ』『どうもお久しぶりです』『ゴアです』

 

 現れたのは、マネモブ……!

 

 

 




リュシアをリシュアだと思ってたのは……俺なんだ!
ポーメルセックス並の間違い……同じエーテリアス愛好家として恥ずかしい。ワシを殺してくれ……
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