どこもかしこも、エーテリアスばかりだ……(涙目) 作:bbbーb・bーbb
今回パロディ多め。
明るい太陽が地を照らしていたある日の正午、狩人は舌打ちを決めていた。
場所は讃頌会のアジト、その一つである。いつもの様にホロウ内を探索していたところ偶然見つけたので、宝探しついでに目についた者を片っ端から殺して回っていたのだ。
「うぅむ……うぅむ……」
あの狙撃手、どうするべきか。目の前で突如足を撃ち抜かれ悶え苦しむ教徒達を見ながら、物陰に隠れた狩人がどこぞの玉葱騎士たちよろしく思案していた。
良し。狩人が考えを固める。奥にまた壁がある。とりあえずはそこまで走り抜けてしまおう。一、二発撃たれても足なら輸血液でゴリ押せる。
物陰から飛び出し、思い切り地を蹴る狩人。走りながら、なぜまだ狙撃手が撃ってこないのか不思議に思った。先程狙撃が開始して以来、まだ一度も撃たれていない。
「おい! 見つけたぞ!」
壁に隠れるなり更に奥から飛び出してきた、見覚えのある女。その尻尾から生えた機械「鬼火」の声が響く。仲間から狩人がここに居ることを教えてもらったのだという。
「正直に話してもらうぞ、狩人。なぜお前のような者がこんなところに──」
「そんな話は後だ。まずはあの狙撃手を何とかせねば」
その狙撃手こそが彼の位置を教えた者だと言われ、狩人は大いに驚いた。ならば納得がいく。そもそも敵でないのだ、撃ってこないのも当然であろう。
彼らは讃頌会殲滅の為にここへやってきたそうだ。敵対する理由もなければ協力できない事情もないので着いていくことにした。
道を進むにつれ現れる狩人の犠牲者の数々を見て、鬼火は戦慄した。この男、たったの一人でこれだけの数を。これだけの強敵を。
その上、彼の身体には傷一つない。全て返り血なのだ。最新の注意を払う鬼火。まさか死んでは蘇るゾンビアタックでゴリ押ししていただけだとは想像もしていない。狩人は今日だけでもう五十三回死んでいる。
アキラを見て、狩人は目を丸くした。なぜここに居るのだ。なんやかんやあって一時的に軍と協力することになったらしい。市長からの要請だそうだ。
無線にて新しい協力者「狩人」の発生を別チームに伝える鬼火。あの狙撃手こと「トリガー」と青髪の小女「シード」にである。すぐに合流することができた。
「ようこそ、ビジター!」
出会うなり、シードの歓迎が飛んできた。トリガーとも挨拶を交わす。11号も居た。やはりどう考えてもアンビーに似すぎている気がするが、だからなんだと思考を止めた。
軍人というだけあって、やはり彼らは強かった。なにより連携が取れている。突如オブスキュラより飛び出した大量の小型サクリファイスとの戦いによって、狩人はそれを実感した。
オルペウスがナイフで斬りかかると、その勢いで身体を回転させ鬼火の口から熱線を浴びせる。その間もトリガーの弾丸が敵を貫き、シードの操る半透明の二枚の板らしき何かから飛び出す光線が全てを切断した。
一方狩人は火炎瓶を投げていた。あんな群れ相手していられるものか。ガトリングで掃射すると気分が清々した。時折近づいてくる者が居ればステップで距離を取った。
がしん、と音がした方を見ると、シードはどこからともなく現れた巨大な人型の機械に乗り込んでいた。クイックブーストで円を描くような軌道で移動し、小型ミサイルを浴びせかける。
一際大きなサクリファイスが現れた。蛙のような見た目であり、エーテリアスの蛙と良く似ていた。狩人が高速のステップで駆け寄る。右前、左前と常に移動し続ける。
「スロー、スロー、クイッククイックスロー……素敵なステップだね、ご友人♡」
「様子のおかしな人です」
呟くFairy。シードのやけに湿り気を帯びた声に警戒を覚えてのことであった。ほぼ初対面でご友人とは。トリガーも困惑していた。
狩人が蛙の飛び掛かりをすれ違う様にしてかわし、背後から手慣れた手つきで力を溜める。蛙が体勢を崩したその時。
超高速のブーストで近づいたシードの機械──ビッグ・シードというらしい──が蛙の眼前で右拳を握りしめること数秒。限界まで溜め込んだエネルギーを一気に解放する殴打により、蛙は哀れにも木っ端微塵に爆発した。
「まずいっ」
狩人の息が縮こまる。見れば、アキラに向かって一体の小型サクリファイスが近寄っているではないか。咄嗟に刀を抜きチャキチャキし始めるアキラ。初見の相手だとそうなるらしい。
瞬間、ビッグ・シードの圧倒的な質量がサクリファイスを捻り潰すと、それは光学迷彩なるもので完全に見えなくなってしまった。啓蒙を上げてどうにかなるものではない。それは神秘ではなく技術なのだ。
「オボルス小隊、作戦完了であります!」
笑ってみせるオルペウス。トリガーやシードもアキラを見やり、安全を確認した。
……私の出番は? ぽつんと一人立つ11号の背中は、あまりにも切ないものであった。
捕虜への尋問も終え、一旦帰還することになった一行。オルペウスが狩人と話をしていた。柚葉救出作戦の際に彼女が出くわした怪物について。捲れた背中の皮膚を外套の様に被った獣について。
「ああ、ちいかわか」
「ち──へ?」
狩人の返答に困惑を隠せない様子のオルペウス。鬼火もぽかんと口を開けている。あれがちいさくてかわいいならこの世の全てはかわいいだろ。
「少し前までは『かわけも』と呼ばれていたそうだ」
なぜあれを形容する言葉に「かわいい」が出てくるんだ。直後狩人から「血に渇いた獣」の略称なのだと聞いて理解はしたが。ヤーナムの住人は皮肉に長けているようである。
あんなヤーナムの獣の中でもトップクラスにおっかないのが現れた理由は一つ。ミアズマである。
ミアズマには侵食した相手の記憶からエーテリアスを作り出す力がある。狩人が植物型になったミアズマをとりあえずで食べてみたところ一瞬で侵食され即死したのだ。柚葉と出会う前のことである。
そして、狩人が初めて殺された強敵であるちいかわのことは、深く記憶に残っていた。それまでにも弱者の群れには何度も殺されていたが。
生命力にものを言わせ、聖職者の獣とガスコイン神父は一度も死なずに狩れた。かなりの辛勝、こちらも瀕死そのものであったが。灰や褪せ人、選ばれた不死としての存在しない朧げな記憶、本能に導かれたのもある。
だがちいかわは別であった。倒したは良いものの、勝利に浮かれていたおかげで身体に回る遅効毒に気が付かず死亡。戻る際にもう一度死に、せっかくの血の遺志を全て失ったのだ。それは狩人にとってかなりのトラウマであった。
つまりあれはエーテリアス、自身の記憶から生まれた紛い物だと説明する狩人。柚葉を助ける際エリ都ニアンちいかわとは狩人も出くわしたのだが、狩っている暇が無いのでスルーしていたのだ。
そのせいで、オルペウスはトラウマを植え付けられていた。仮にも軍人、死体や内臓などもう見慣れているが、あんな悍ましい怪物は見たこともなかったのだ。
それを熱線で炙った時の悲痛な叫びは、今だ彼女の細長い耳に焼き付いていた。
トリガーは英語を解すようで、中々会話が弾んだ。やはり母語で話すのは心地が良い。
「
彼女はアキラやリンのことを日頃から個人的に影から護衛しているそうだ。友人を守ってくれるとは有り難いことである。今度好物でも奢ろう。まさかただのストーカーだとは考えもしていない狩人。
好物を聞くと、そうだとトリガーがオルペウスの方を向く。「え?」と不安げな顔をしている。英語教育の成果を確認しようと言われ、哀れなオルペウスの顔は絶望を帯びた。
「しぃ、しぃず、ふぇいばりっとふぅど……いず……」
がんばれ! アキラの応援が飛ぶ。なんとか言葉を捻り出したその時、オルペウスの頭に電流走る。
……あんぱんって英語でなんて言うんだろう。Anpanと言ったところでそれは何かを聞かれるのがオチであろう。
どうする、どうする。必死に意訳を考えていたオルペウスの脳内に、ふと天才的な言葉が思い浮かぶ。急に自信満々になったオルペウスに嫌な予感を覚える鬼火。思わず堂々と胸を張り、オルペウスが言ってのける。
「『だぁくくりぃむぱい』なのであります!」
「
戦慄する狩人の真横で噴き出すトリガー。一千ヤードの凝視を決め込む狩人にあんぱんを説明する。心のそこから安心した様子を見せる狩人。後に意味を伝えられたオルペウスは顔を赤くしてうずくまってしまった。鬼火にも同情された。
ビッグ・シードに興味津々な狩人を見て、シードは笑顔を浮かべていた。狩人はからくりでがしゃがしゃ動いたり変形するものは大体大好きなのだ。
「不思議な匂い……月の香りかな?」
狩人は一瞬身構えた。「月の匂いなんて嗅いだことないんだけどね〜」などと気の抜けた笑みを浮かべている。彼女の実名が自身の上位者としてのそれと一致することを彼はまだ知らない。
「この前ね〜、どこからともなく飛んできた空飛ぶデスパラソルとぶつかっちゃって、暫く修理で忙しかったんだ〜」
咄嗟に目を逸らす狩人。めちゃめちゃ心当たりがあった。ある時またホロウ内で迷子になったカリンと空を飛んでいた際、空中で何かにぶつかった拍子に偶然裂け目に入り抜け出せたのだ。
彼女のその全裸より露出度の高い格好に狩人が驚くことは無かった。下着姿で殴りかかってくる女侵入者はたまに見る。麻袋被って出刃包丁振り回してくるやつも居たな。
遂に仮拠点へとたどり着いた。狩人を見て一瞬身構えたのはイゾルデであった。なんで非関係者がここに居るんだ。
「えっと……イゾルデさん、これにはわけがあるんだ」
必死で弁明するアキラ。イゾルデはずっと苦い顔をして、しきりに咳をしていた。結核か何かだろうか。母国では都市部で流行っていたらしいがと狩人が考えを巡らせる。
「帰る必要はない。というより、帰すわけにはいかん」
そう言いながら奥の方から現れたのは、いかにも感じの悪い軍服の男。ロレンツ少将というらしい。この機密作戦にこれだけ関わりを持った以上、アキラと狩人は作戦終了まで軟禁状態になるとのことだ。
……軟禁だと。ここから出られぬというのか。咄嗟にアキラを見やる狩人。どうするこの男。ヤーナムするか? 目配せで伝える。
アキラがぎょっとした表情でぶんぶんと首を横に振ったので、狩人は仕方なく懐で握り締めていたノコギリ鉈を放した。早く作戦を終わらせて帰ってしまおう。
丁度、シードがボンプを持ってきた。死屍累々の兵士達の山の中見つけたのだという。何があったのかは、そのボンプの記憶モジュールに隠されていた。
「なんだ、これはっ……!」
鬼火が絶句する。そこに映るのは、十一年前の旧都陥落時に死んだ兵士達の制服を着た「何か」により蹂躙される防衛軍兵らの姿であった。慌てて皆がイゾルデに伝えに行く。
「こちらの動きが、読まれていた……!?」
口元に拳を当て、難しそうな顔を浮かべるイゾルデ。眉間に皺を寄せている。
すぐに作戦開始となった。奇襲にはスピード感が必要不可欠なのだ。
「ようし、では私も──」
「ああ、君にはここで残ってもらうぞ」
振り向く狩人。視線の先にはイゾルデ。当然だろうと続けている。こんなポッと出の男をいきなり機密軍事作戦に突っ込めるものか。
一人だけ基地に残されしょんぼりと元気を失う狩人だったが、イゾルデから良いものを見せてもらえると聞かされすぐさま復活した。何を見せてもらえるんだろう。
「これは」
「VR機器さ。感覚共有型のね」
このゴーグルを被りパッドを全身に取り付ければ、脳内にリアルな戦場を作り出し、安全に経験を積めるのだという。痛覚まで再現するので使いたがるものは少ないがとイゾルデが笑う。
素晴らしい! 狩人は大いに歓喜した。つまりは血の遺志を失うリスク無しに武器の試し斬りや戦闘が行えるということなのだ。
こんなもの、狩人なら誰でも喉から先触れが出る程──あっちょっと出ちゃう♡──欲しい代物であろう。唐突に上位者の神秘を目の当たりにさせられイゾルデは凄まじい顔をしていた。
「それにしても、武器の趣味が良いな」
「えっあっ、あぁ、そう言ってくれると嬉しいよ」
我に返るイゾルデ。実際、右手の軍刀と左手の短銃というヤーナミックな装備を狩人は大変気に入っていた。エヴェリンを見せると綺麗な銃だと褒めてくれた。千景も装飾が気に入ったそうだ。今度譲ってやるのも良いかもしれない。
「しかしこんな良いものを見せられては、私も恩返しというものが必要であろう」
「いや良い。本当に大丈夫だ」
またあんな悍ましい触手だのなんだの見せられてはたまったものではない。結構本気で嫌がるイゾルデだったが、銃の活用法についての知見を共有したいだけだと伝えられると少し安心した様子で聞き始めた。
「相手を撃つ以外に使い道が?」
「無い。撃ったあとに出来ることだ。その武器で戦っているなら、もう知っていることかも知れんが」
撃ったあとに出来ること。イゾルデが本格的に興味を持ち始める。なるほど、まずは相手が腕を振り下ろし始めた瞬間に弾丸を浴びせるのか……少しリスキー過ぎでは?
「……それで、体勢を崩した後はどうするんだい?」
単純なことだ。狩人が胸を張る。貴公の技量ならきっと一撃で致命傷を与えられるだろうという前置きに、再びイゾルデの心が僅かに湧き上がる。
「右腕を直接相手の
「出来るか!!!」
メモ帳を投げつけるイゾルデであった。
この前友人にAC6を遊ばせてもらいました。めちゃめちゃ面白かったです。私も買おうかな。
オルペが英語話せない設定は私が勝手に生やしました。だってオルペちゃんがたどたどしい英語話してたらとてもかわいいと思いませんか?私は思います。あと元から学業苦手らしいですし。
血い渇のビジュアルほんとにおぞましすぎて大好き。何気にBGMもかなり好き。