君が隣に居るのなら

…大丈夫？
具合悪いの？

　　（彼の声が聞こえて驚く彼女）

なんとなく目が覚めて隣見たら居ないからさ…。
心配した…。

痛いの…？生理。

　　（「心配かけてごめんね…痛いわけじゃなくてね…」）

痛いわけじゃないなら…なんで、こんなところに1人で居るの？
吐き気、とか。

　　（「そういうのでもなくて…。その…出血するときの刺激でね…」）

出血するときの刺激？

　　（「どっと来るからその度にびっくりしちゃって、熟睡出来なくって……」）

出血する度にびっくりしちゃって寝ていられない…？

　　（「うん…」）

だからって、こんな夜中にリビングに居るなんて…。
冷えるし身体だって休まらないでしょ…？

　　（「でも…眠れないとほら、寝返りとか色々？それで起こしちゃいそうだったから…」）

…あのねえ。
寝返りなんてそんなに気にならないよ。
それで起きた事もなかったと思うし、仮に起きたってすぐ寝ちゃうよ。

それよりも…。
ふと浅く起きた時に君の気配が消えてる事の方が、余程僕の安眠の妨げかな。

心配するってば…夜中だと特にね…。
そんなに広い家じゃないけどさ…。
真っ暗な家のどこかで具合悪くなって倒れてたらどうしよう…って、それなりに焦ったよ？

すぐにリビングで起きてたって確認出来てホッとしたけどさ…。
そこそこ心臓に悪いよ（笑）

それにしても、眠れないくらい酷いものなんだね。
…その、出血の時の刺激って。

　　（「うん…」）

毎回そんな感じなの？

それじゃ寝不足でしょ。
いつ身体休めてるの？

　　（「隙間時間にうとうと…とか？」）

体調良くない時に何日も熟睡出来ないなんて、考えただけで最悪だな…。
しかもそれが毎月？
たまんないね…。
僕なら倒れるかもしれないよ…。

なるほどねー…。
漠然と『生理の時の女の子ってお腹や頭が痛くなるんだろう』くらいにしか思ってなかったんだけど…。
そっか…眠りたくても眠れない辛さっていうのもあるんだね…。

　　（「うん…。だから気にしないで寝ちゃって？」）

「だから気にしないで寝ちゃって」って…。
そんなの無理だよ（笑）
ここに居るのも、起きてる事情も知っちゃったもん。
放っておけない。
2人でベッド、戻ろう？

　　（「でも…」）

大丈夫。

さっきも言ったけど、君が隣にいない方が心配で熟睡出来ないよ。

それに君だってさ。
リビングのソファでぐったりしてるより、身体横にしてあったかい布団の中に居た方が楽じゃない？

大丈夫。
僕は睡魔に弱いから、君が隣に居るならちゃんと寝れるから。

行こう？

僕も布団から出ちゃったから、早く戻らないと中が冷たくなっちゃうよ（笑）

立てる？

はい、手。

あーあ、冷たくなってるね。
結構前から起きてた？
…わかんないか（笑）

　　《寝室ドア開閉音→衣擦れ音》

布団の中入れた？

よし、じゃあ、寝よう。

　　《衣擦れ音》
　　（彼の方から彼女をハグする）

あーあ…身体も冷えてるね…。

　　（「ぃ…いいよ、ハグしなくても…」）

いいの。
ハグは僕がしたくてしてるんだ。

あっためてあげたいんだよ…。

身体もだけどさ…。
なんとなく安心するじゃない…好きな人の体温って…。
温度的にも気持ちいいし…。

ただ布団に包まってるだけよりもいいはずだよ…？

出血の度に驚いて目が覚めちゃうなんて、それだけ緊張しながら寝てるって事でしょ？

難しいかもしれないけどさ…。

数秒でいいよ…。
君が「これ、好き」っていつも言ってくれてる僕のぎゅーで、リラックスして？
そしたら眠れるかもしれないし…眠れたら明日、いつもより楽かもしれないし。

生理で辛いのは代わってあげられないからさ…。
このくらいはさせてよ。

ね？

ほら、目、閉じて？

「でも」も「だけど」もおしまい。
お互い明日も早いんだから、もう寝るよ？（笑）

大丈夫…きっと眠れる…。
だからおやすみ…（笑）

　　（髪にキス）

ぎゅー…。

【fin】