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( 8½ )(68 ⅚)【注釈U - h】VR奥儀皆伝 TP-VR Attract. 謎解き・テーマパークVR Web版

2025-08-31 | バーチャルリアリティ解説
Number68 ⅚ 【注釈U - h
                          【( 8½ )総目次 
   (68⅚)【注釈U-h】AS-1物語 続 注釈U-g】AS-1物語

   (68⅚)注釈U-f】鋳型化注釈U-e】白川総裁発言。注釈U-d】IVRC2015。ケルズの書 /(68⅚)【注釈U-c】日加豪同盟。先住民族の知恵。ユリシーズ入口 /【注釈U-b_Pollux】死傷者ゼロ。レオ12世。なでしこの花 /【注釈U-b】シモネッタ。日本文化の波動つづき。八雲とブレイク
   注釈U-a】安全論証。← シラバス カナダの量子コンピュータ。一条天皇の辞世 /注釈T】上宮法皇の e パレード 。『ユリシーズ』 ← シラバス /注釈S】高松塚古墳 。← シラバス / ・・・注釈L】「e五節の舞」 VRデジタル復元 / マニエリスム年表(重要!)

□  AS-1物語 続   抜粋

 ○ IAAPAの会場にて

   11月12日の昼過ぎにはライドフィルム社を辞して、その日のうちに 私たちは フロリダ州オーランド に移動した。13、14日には 幾つかの会社を訪問して、併せて オーランドのテーマパーク、ユニバーサル・スタジオ、MGMスタジオ、エプコットセンター(ディズニーワールドの一部)などを駆け足で見学することにした。ユニバーサル・スタジオの”Back to the Future the Ride”(BTTR)アトラクションの入り口には、「時計を合わせろ。(公開まで)あと何日と何時間、何分何秒」とカウントダウンしている数字の掲示板があった。この頃は、もう間もなくの公開予定だったが、施設に大規模な停電が起こり、その際 暗い中の 観客の避難誘導が全く想定されていなかったらしく、その改善などのために 公開は ずっと延期されたと後で聞いた。


 筆者撮影

   ところで、ライドフィルム社のモーション・デザイナーたちが「あのアトラクションは 酔うぞ」と教えてくれたのが、EPCOTの新作(1989年公開)の『BODY WARS』。すいていたから、3回続けて揺られてみた。VR奥儀皆伝(23)で一度考察しているが、改めて整理してみたい。
   この作品の元は 映画『ミクロの決死圏』(1966年)。『BODY WARS』の演出家たちは、観客に、ここは「小型化探査技術 株式会社」という 2063年に設立された会社で ボランティアの観客の皆さんは、軍事用車両 Bravo229と一緒にミニチュア化されます、と「プレショー」の誘導路の間に 何度も言い聞かすのだが、観客は聞いていないし、『ミクロの決死圏』を観ていない。観客席に座ると、いきなり、皆さんはミニチュア化されますよ。はい、されました、と言われるが、観客には 自覚がない。ここは、人体の血管の内部です、と言われて、エリザベス・シュー嬢演じる「レア博士が、毛細血管に吸い込まれそうになっているから、皆で助けましょう」と言われても、そもそも身体が小さくなっていないので、演出家の求める観客の視線と 現実の観客は重なることがなく、慎重さに欠けるモーションデザインが そのずれを増幅して 観客は乗り物酔いに至る。後で ライドフィルム社の人たちに、3回続けて乗った と言ったところ 驚かれた。

   それから、14日の夕方、IAAPAの開かれているワシントンに移動。

   そして、16日に ライドフィルム社のメンバーとIAAPAの会場で再会した。

   しかし 16日の会場の話をする前に、一つ面白い出会いがあった。

   実は、その前日15日の午後に、IAAPA 我が社のブースに The Works社のホープ社長が訪ねて来られた。テーマパークやイベントなどの内装デザインに長けた会社である。価格も適正で、品質は大変に良い。いろいろ伺っているうち、社長の父親(Fredric P. Hope副社長)が 元ディズニーの漫画家で、しかも、ディズニーランド入り口の商店街(ワールドバザール)のデザインを描いた方だと分かった。なんでも、彼がウォルトさんから直接指示を受けながら 原画を描いたとのことだった。これには 驚いた。


 (c) haru @spring_dis2 on X

   私は自分の知識をひけらかす人間ではないので黙っていたが、それは 遊園地とテーマパークを分ける 大変重要な施設で、来園者は 日常の俗世間から離れ、 入場口、そして ワールドバザールを歩いているうちに 自分が「お城」の見える非日常の「聖なる世界」(テーマパーク)に足を踏み入れたことに気が付くのだ。なお、入場口を超えた 聖なる世界には 天国と地獄が混在する。つまり、ワールドバザールは、羽黒山の登り口から国宝の五重塔に至る参道と同じ効果を持ち、また ダンテ『新曲』の冒頭と同じ演出効果を持つ 施設運営上の重要な場所なのだ。なぜか、ウォルトさんは 直感で、ここが、
   「テーマパーク」と 従来の遊園地を分ける(日常の垢を落とす)大切な場所だ
   と理解し、信頼できる漫画家にスケッチを描いて貰ったのだ。

   IAAPAの見学を終えてから、20日の早朝にロサンゼルスに移動し、その日の午後にロングビーチにある The Works 社の本社に、K澤部長、N宮君、S木君、私の 4名でお邪魔した。お父上の P・ホープ副社長は、想像した通りの やさしそうな方だった。「ウォルトから、こんな風にしてくれ、なんて言われて(原画を)一緒に描いたのだけれど、そのあとも、みんなが私の仕事を大事にしてくれているので嬉しい」と、おっしゃっていた。Walt Disney Worldや 東京ディズニーランドでも、ワールドバザールを歩くという大原則は 崩れるはずがない。帰りに、思い出のよすが(おみやげ)を買い込むための 大事な施設でもある。
「リピーター」というのは、「思い出のよすが の購入と保管」が作っているからだ。しかし、ウォルトさんという方は 本当に 天才だと改めて思った。

   【おまけ】〖和訳・日本語〗ピノキオ | Cliff Edwards - When You Wish Upon A Star (Lyrics)

   ※ ウォルトさんの時代も、日曜日に 殆どの家族が午前中に子供連れで 教会にミサに行き、牧師様のお話を聞いた。(米国は週給で、父親が家計を管理するから)ウォルトさんは 午後に(父のお財布で)映画館のディズニー映画か または、ディズニーランドに出掛けて 家族が愛情を高めあうことを期待していた。ちなみに、TDLには「週末の父の財布」が存在しないので、入場料(アトラクション収入)と飲食、物販の 各比率が 3分の1 になるよう努力することで「リピーターの確保」に務め、持続可能な経営を目指している。その努力の結果、TDLでは 入場者数の 9割が 関東圏のリピーターである。

   16日の ライドフィルム社のメンバーとの IAAPAの会場での会議に 話を戻す。

   実は、こちらの話は 丸ごと はしょりたい気持ちなのだが、話が続かないので そうもいかない。原因は、企画としてライドフィルム社から提示されていたのが『トップフライ』という作品だったからだ。会場に、そのポスターも展示されていた。どうやらトランブル氏が気に入っておられたらしく、ハンバーガー・ショップの簡単なセットも準備できていたようだ。AS-1は そのセットの間を「はえ」になって ブーンブーン飛び回り、調理中のコックが怒って「はえ叩き」でつぶしておしまい、という絵コンテも頂いた。
(まだ AS-1の揺動の高性能を体感していなかったため、かもしれない。)
   これには、S木本部長が怒って「日本で はえは、不衛生の代表。やめて欲しい」と抗議した。
   すると、ケリー氏は 何事でもないという調子で、
   
「じゃ、はち にするかい?」・・・。

   結局、出来上がった 見事な作品は、ライドフィルム社がある バークシャー地方特産の「ぶた」にちなんだ作品(?)で、ある銀河系(the Gothoviz Galaxy)の、ぶたの顔をした宇宙戦闘機パイロット(Porkosapien speciesの a self-appointed space cop)の「マゴー」が
(翻訳しづらいので 学生の皆さんは 辞書を引いて推測して下さい)、宇宙観光ツアーの運転手のアルバイトをして 観客を乗せ、宇宙に飛び出したところに、強敵の ネズミ星人(Rodentia's)の待ち伏せにあう、という無難(?)なストーリーに落ち着いた。

   完成した トランブル氏の自信作を 92年2月2日に ファイジ一さん、シルズさん、Michael Arias君たちが日本に持って来た。ちょうど 穴守稲荷駅の近くに 新築の立派な独身寮ができたばかりだったので、ライドフィルム社一行の宿舎として 総務部が好意で 提供して下さった。
   やはり、揺動の最終調整は(試作機ではなく)本番の AS-1 でやりたい というファイジー監督の強い希望から、監督と アリアス君の二人は AM5研の倉庫に 毎日 詰めた。私たちは AS-1 に揺動がつけられる作業を、毎日 見守った。食事は 当方持ちだったので、大鳥居一帯の食堂を かなり制覇した。

   ※ なお、『MUGGO!』は 1910年代のアメリカ映画、パール・ホワイト主演の『ポーリンの大冒険』のように(評判が良ければ)続編が製作されるシナリオの第1作で、第2作の冒頭で奇跡のようにマゴーと観客は危機を脱し、また次のエピソードが始まる筈だった。・・・ しかし、この後、ライドフィルム社の分裂という不幸な出来事があり、ライドフィルム社との共同開発は これまでに。沢木さんは、後で しみじみ、『MUGGO!』は最後まで(マゴーたちが 危機から脱出するところまで)作っておけば良かったですなあ、と仰った。



   ともあれ、今回は抜粋なので省略したが、オリジナルの「AS-1物語」は、次のように始まる。

   AS-1は 1992年2月の AOUショーで公式発表され、開場する前に関係者だけで 2時間待ちの行列ができた セガ・エンタープライゼスの 8人乗りシミュレーションライドです。ダグラス・トランブル氏の自信作『MUGGO!』が その こけら落としの作品。『ハングオン』に始まる「体感ゲーム」の最終形だ という嬉しい評価を頂いたこともありましたが、じつは「〇〇〇遊園地」などの乗り物と同様に 座席数が 4人×n という構成になっていて、具体的には 郊外型アミューズメント センター  に休日に来られるファミリー層 を想定して開発された、我が社 初めての体感劇場マシンでした。

   〇 11月の米国出張のまとめ

   あちらへこちらへと、あわただしい移動がとても多く、改めて整理する。

11日の夜、マサチューセッツ州フーサトニックに到着。翌12日、ライドフィルム社を表敬訪問して、
12日の夜、オーランドに移動。ユニバーサル・スタジオ、MGMスタジオ、EPCOTセンターを観て、
14日の夜に、ワシントンに向けて移動。
16日にIAAPA会場でライドフィルム社と改めてのAS-1作品の打ち合せ。
17 日の早朝に、サンフランシスコに移動。これはまた別に述べるが、VRで有名なVPLリサーチ社などを訪問して、
20日の朝に、ロサンゼルスに移動。午後にThe Works社を訪問して、
22日に帰国という、なんとも強行軍のスケジュールだった。

   この出張はテーマパークを「作る側から理解する」良い機会だった。テーマパークに行くと楽しいのは、作っている人たちが 世界水準で 真剣に工夫をこらしているからだ。トランブル氏と一緒にお仕事する機会を得たことは、世界の水準を知り、それを ある部分では 超える作品を AM5研が 生み出す機会になるだろう と感じられた。実際、この数年後に 中山社長が、我が社の売上 6000億円と、世界100か所の
(ジョイポリス級の)都市型テーマパークの開設を「経営塾」で口にされたときも、AMの全R&Dが協力すれば できる、と 素直に思えたので それほど驚くことはなかった。

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   ここには、「AS-1物語」の このあとの展開について、「予告」を 追記します。

   ユニバーサル スタジオ一帯の停電で、『BTTR』の追加工事が増えたために、どうやらトランブル氏は急に忙しくなり AS-1は 後回しにされたようです。ライドフィルム社は 時間稼ぎのため、45頁もの英文、開発契約書を当方に送り付け、私は 英文契約書に強い法務部の O田さんと一緒に ほぼ 各行ごとに「これはダメ」の判断を出して、せっせと FAXをバークシャーに送りました。そうこうしているうちに、中山隼雄社長が バークシャーからの作品が いっこうに上がってこないため、契約の打ち切りを示唆されたようです。AS-1が どれくらい稼げる機械なのかも、未知数のまま。

   それで、〇〇〇遊園地で AS-1の ロケテストをしてみようということになり、デモソフトが必要になりました。AM5研の「新人」植村比呂志さんは キディライド「わくわくアンパンマン」で頭角を現したばかり。後に「セガラリー」を開発する 佐々木建仁さんは、我が社の強いファンでしたが まだ入社前。それで、この二人なら 我が社らしいデモを作ってくれるんじゃないか、と直感で、幕張まで出かけてもらいました。幕張メッセを設計された UG都市設計のマネージャーさんに話を通して頂いて、当時話題の 幕張の建物の模型を 確か 市役所のロビーで 覆いを外して 寸法を測って帰りました。

   このデモソフトが、〇〇〇遊園地での ロケテストに使われた作品。

   これが良かった。社長も、機嫌を直して下さり、やがて トランブル氏の作品も届きました。

   トランブル氏の会社の分裂がありましたが、トランブル氏は、次の大きな仕事、ラスベガスのホテル「ルクソール」の 新しい体感劇場開発に着手します。もし『MUGGO!』の開発が続いていなければ、スタッフは解散していたかもしれません。(実際、契約書ネゴの途中、ケリー氏から契約破棄の通告が一度あり、トランブル氏のとりなしで復旧しました。)〇〇〇遊園地の AS-1のロケロケテストが、トランブル氏の活躍を応援したのです。
   我が社には「おまけ」の余禄も。トランブル氏の口利きで、我が社のゲーム機が ホテル「ルクソール」のフロアには ずらりと。搬入口がないので、T村課長が ホテルの外壁に大きな穴をあけて貰った のが このときのことで、トランブル氏の AS-1は、ホテルのフロアで 宿泊客を揺さぶりました。

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以下、公示資料として  IVR 93 「産業用バーチャルリアリティ展 93」の
企業セミナーでの 私の講演の 1頁を、そのまま転載します。
(冊子の p.68。)
『スクランブル・トレーニング』が、植村さん 佐々木さんの 公式第一作。
(体感劇場ではなく VRです。)

4. セガ『バーチャルライド AS-1』について (その2)

「センソラマ」→「3D映画」→「ディズニーランド」→「ショースキャン」→「スターツアーズ」→「バックトウザフューチャー・ザ・ライド」→「AS-1」

〇「バーチャルライドAS-1』公開作品

1.「マゴー!・ザ・ライド』(MUGGO!)
バークシャーモーションビクチャー製作 1992年作品
アーリッシュ・ファイジー監督 クリストファ・ブルーベック音楽
ジェフ・ケント主演 ニック・ケリー、ユージニ・シルズ制作
ダグラス・トランプル 脚本・総指揮
上映時間 プレ・ショー2分、本編7分

2.「スクランプル・トレーニング」
セガ・エンタープライゼス製作 1993年作品
上映時間 プレ・ショー 1.5分、本編4分

3. 「メガロポリス」(製作中)
セガ・エンタープライゼス製作

   《 本頁は鋳型化されました。
   Fellow 武田 ( VR奥儀皆伝(8½)(68 ⅚)【注釈U-h】 )
   Blog TP-VR Attract.のトリビア 2025.08.31 鋳型化》

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