米国の大卒就職、26年はコロナ禍以降で最悪の見通し AI導入が背景
【ニューヨーク=谷本克之】全米大学・雇用者協会が発表した2026年の米大卒就活市場の見通しは21年以来の低水準となった。就職市場の見通しを「良い」と回答した雇用主の割合は37%と前年より10ポイント低く、「悪い」と回答した割合は3ポイント高い6%だった。
同協会が8〜9月に183の雇用主に聞いた。26年大卒の就職市場の見通しについて「普通」との回答は45%を占めた。「悪い」と「普通」の合計が5割を超えるのは新型コロナウイルスの流行により経済が低迷し新卒採用が落ち込んだ21年以来となる。
米大手企業は相次ぎ人員削減に乗り出している。10月には米アマゾン・ドット・コムが世界の管理部門を中心に1万4000人の従業員を削減すると発表した。物流大手のUPSも、米国で4万8000人の人員を削減したと明らかにした。
米調査会社チャレンジャー・グレイ・アンド・クリスマスによると、米企業・組織の人員削減は1〜9月に前年同期比で55%増えた。トランプ関税や持続的なインフレで経済の不確実性が増しており、全米大学・雇用者協会の担当者は「多くの企業は採用に慎重になっている」と指摘する。
人工知能(AI)の普及も大卒生の就職に影響を及ぼす。若手がこなす業務をAIが代替し、各企業は経験者の採用にシフトする。
ニューヨーク連銀の分析によると、6月の大学卒業生の失業率は4.8%で、全体の失業率を上回った。再就職先を探す人材と雇用の枠を奪い合う構図が生まれる。
同協会によると26年の採用計画数は前年比1.6%の微増となった。ただ秋に集計した採用計画は翌年春の調査時点では下方修正されることが多い。26年の採用が増えるかどうかはなお見通せない部分がある。
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米国では5〜6月に大学の卒業シーズンを迎える。在学中に2〜3カ月間の長期インターンを経て大学4年生の秋ごろに採用が本格化する。
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(更新)- 植木安弘上智大学名誉教授ひとこと解説
米国では、2030年までに雇用の3割がAIに取って代わられ、6割が何らかの変更を余儀なくされるとの分析もある。大卒者が影響を大きく受けているのはこれまで急速に伸びてきたIT部門と思われるが、それ以外の分野でもAIが代用できる職種は多いため、大卒に限らず広い層で雇用が奪われつつある。日本の大卒者の就職率は98パーセントと高いが、少子化の中で人手不足がその背景にある。しかし、AIの導入は次第に加速しており、職種によってはその影響を受けることが予想される。これからはAIを使える人材の育成が必要になる。
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